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古武順子さんのリサイタルが決まる!

私がニューヨークから帰国した2015年、日本での本格的な指導を始めたばかりの私に歌を習いに来てくれた最初の生徒さんが、古武順子さんでした。

この8年間、私がブルガリアへ移住し、頻繁にレッスンを受けられない時期や、オンラインレッスンのみになった時期も2〜3年ありました。そんな状況でも私の下で歌を学び続けてきた順子さんが、この度ソロリサイタルを開催する運びとなりました。

「今年中に、君は殻を破らなくてはいけない。今年は君にとってのチャンスの年だよ!」

これは、今年2月に日本へ帰国するなり、イリヤンが順子さんに言ったことです。イリヤンなりに「今だ!このタイミングを逃してはいけない。」と思ったのだと思います。

長く私の下で学んできた中で、発声はずいぶんと磨かれ、技術は日々向上していました。けれどもやはりプロの音楽家として自立していくためには、あともう一歩大きなブレイクスルーが必要、という状況でした。

それなりには上手に歌えるようになっていましたが、まだどこか優等生としての枠を超えられない、制限された枠の中にいるようでした。

そこを突破するためには、きっかけとなるようなチャレンジが必要だ、というのが私とイリヤンの見立てでした。

そこでイリヤンからの提案が、「リサイタルをしよう!」でした。

私とイリヤンが協力するから。自分ひとりでやるわけじゃないんだよ。一緒につくっていくんだよ。

順子さんにとって、私とイリヤンというサポーターと共に本番へ向けての準備をする、というのは初めての経験です。

今までは本番というと、自分ひとりでなんとかしなくてはいけない、という焦りや迷い、不安を抱えながら臨むものだったのだと思います。

今回のリサイタルの準備を始めたばかりの頃の順子さんには、そのころの名残りが垣間見えました。あれこれと余計なことを考えたり、心配しているのがわかりました。リサイタルのことをちょっと考えただけで緊張してしまう、といった様子でした。

その余計な思考癖を取り除くためにも、まずは一歩一歩やることを進めていこう、ということで、まず私たちが提案したことは、場所を決めること、でした。

リサイタルをするというと、曲目を決める、ということが先決のように思うかもしれませんが、それ以前に大事なことは場所決めです。

会場の雰囲気によって、レパートリーも合う合わないがあるからです。

順子さんが本番で演奏することから長く離れていたということもあり、コンサートホールはまず却下されました。もう少しカジュアルで、でもちゃんと歌手に注目してもらえるような。気張らず、安心して自分を開放できるような場所で。人の行き来があって、フラッと訪れてみたくなるような場所で。屋外ではなく、屋内で。

いろいろな条件がある中で、最初のリサイタルの場として選んだのが、新渓園です。お庭が見渡せる、素敵な大広間で、開放感のある場所です。

リサイタルの日時は、5月25日(木)、26日(金)、6月2日(金)に決まりました。開場は17時。開演は17時半からです。

3回立て続けにリサイタルをする、というのもイリヤンと私からの提案でした。1回の本番では、あれよあれよという間に気づいたら終わってしまう、というのがよくあるパターンです。

声の技術のこと、精神状態のこと、当日本番までの時間の過ごし方など、ある程度の回数を経験してみなければわからないことがたくさんあります。1回目、2回目、3回目と回数を重ねることで、見えてくること、気づいていけることがあると思ったからです。

場所と日時が決定し、ようやく話はプログラムへと移っていきます。

『なにか違ったもの』というのは私たちがいつも掲げているテーマです。

よくある曲目ではなく、どこかで聞いたことのある演奏ではなく。「何か違ったもの」。しかもプロとしてのレベルでなければやる意味がない、というのが私たちがいつも目指していることです。

そこで選んだのが、スペイン民謡、スペイン歌曲に始まり、ドビュッシーの歌曲、ロッシーニ、モーツァルトのオペラアリアに至るまでの曲目たち。バラエティに富んだプログラムが完成しました。

順子さんが自分の枠を超えて、より自由に音楽を感じることができるようなレパートリーも織り込みました。なかでもスペイン民謡は、ジプシーな雰囲気があり、元々はレストランなどの大衆酒場で演奏される曲目だけあって、いわゆるクラシック音楽とは一線を画する表現が求められます。

場所が決まり、曲目も決まり、ピアニストも決まり、衣装も決まり・・・

そこから、本格的な演奏の準備へと移っていくことになります。

その準備の様子は、また次回に渡って書いていきます。



VOCAL RECITAL
JUNKO KOTAKE,SOPRNO
MASUMI NAGAYA,PIANO

日時:5月25(木)、26(金)、6月2日(金)各日17時半開演
場所:
新渓園 倉敷美観地区、大原美術館の奥です。
無料ですので、是非応援にいらして下さいね!

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