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ラモーンズと私

本日は私とパンクロックとの関わりについてお話します。
私、小学校でベストヒットUSAの洋楽にはまり、中学1年で思春期の鬱屈したモヤモヤ感を吹き飛ばすような感覚からヘビーメタルに目覚めたのですが、情緒的でマイナーな曲調、無駄に長いギターソロ、襟足が長い長髪&超スリムジーンズなど独特のヘビメタファッションが、だんだんカッコ悪く感じるようになっていきました。
そんな時に出会ったのが進歩的だったニューウェーブや、暴力的な衝動をそのまま音にしたようなパンクでした。ピストルズやクラッシュだけでなく、ニューヨークのサウンドも刺激的で、パティスミスやテレビジョン、トーキングヘッズなんかも当然おさえますよね。中でもラモーンズはパンクの元祖と言われていました。初期のビートルズやビーチボーイズのような明るい3コードのシンプルなロックンロールを爆音でかき鳴らすという一貫したスタイルと、Tシャツに破れたジーンズにライダースの革ジャンというビジュアル、血縁関係はないのに、全員が「ラモーン」を名乗るというユニークな名前など、デビューから全くブレない、生きた伝説であったのです。

傑作ファーストアルバム「ラモーンズの激情(RAMONES)」

ラモーンズ来日

そんなラモーンズが私が大学生の頃に来日するというではないですか。チケットを買ってもよかったんですが、当時コンサート警備員のバイトが大学生によく回ってきてて、たまたまラモーンズのライブの警備員バイトの話が回ってきたのです。好きなバンドのライブをお金貰って観れるなんて、ラッキーすぎる!と喜び勇んで警備バイトする運びとなりました。
1988年大阪御堂会館(1980年の初来日から2度目の来日)、元祖パンク、伝説のパンクロッカーの来日ということで、モヒカンや顔に安全ピンさしてタトゥー入れまくった関西中の荒くれた色とりどりのパンクス達が結集。他人の容姿に今ほど寛容ではなかった当時は、こういった人達はまさにアウトローでした。

楽屋番を任される

ライブ当日にバイトの配置が発表されたのですが、そこで私に与えられた任務は「楽屋番」。「楽屋番?何するん?ライブ観れへんの?」、どうやら楽屋に外部の人間が入ってこないように楽屋通じる通路の扉の前に張り付いて警備するパートでした。当然ライブは観れません。。。しかも楽屋扉ではなく、通路の扉、がっくり肩を落として扉の前のパイプ椅子に座っておりました。
もうすぐライブ始まる頃やな、観たかったなぁっと思ったその時、「ガチャリ」突然、扉が開いてて細長い大きな黒い影が現れたのです。

伝説は生きていた

「便所どこや?」
なんとボーカルのジョーイ・ラモーンやないですか!英語でなんと聞かれたかよく覚えてないですが、トイレの場所を聞いてることはわかりました。
「Here!(ここや!)」迷わず通路前のトイレの扉を指差して、ジョーイをトイレにいざないました。
ライブ直前で漏れそうだったのか、慌ててトイレに駆け込み、ジョ〜ロジョ〜ロと用を足したジョーイは、その後ぶっきらぼうに「ちーん」と鼻をトイレットペーパーで噛むと、それをゴミ箱にポイっと捨てて、トイレを後にしました。
呆然としていた私に、おもむろにポケットに手を入れたジョーイは、「Thank you!!」と言って「RAMONES」とロゴの入ったギターのピックを手渡してくれたのでした!
用を足してスッキリしたのか、落ち着いた様子でライブに向かうジョーイ。
その後、ライブが始まり激しい演奏と歓声の音だけが聴こえてきました。
「1、2、3、4!!(掛け声)」「ジャジャジャ〜ジャ〜ン!(2分ぐらいで終了)」、「1、2、3、4!!(掛け声)」「ジャジャジャ〜ジャ〜ン!(2分ぐらいで終了)」「1、2、3、4!!(掛け声)」「ジャジャジャ〜ジャ〜ン!(2分ぐらいで終了)」という感じで、あまりにシンプルで激しくカッコいいロックンロールが30曲ほど続いて、あっという間にライブは終了したのでした。

DNA

後から聞いたところによりますと、ライブが始まった瞬間に最前列の警備員は、凶暴なパンクスに蹴りをくらい、ゲロを吐き、席を乗り越えて観客が押し寄せ、ライブハウス並みに盛り上がっていたようです(笑)。「大阪ラモーンズ」というトリビュートアルバムも出している、世界でも人気のバンド「少年ナイフ」のなおこさんも、この時の来日公演を観ていて、あまりの爆音に3日間耳鳴りがしていたと述べられてました。

暴れ狂うパンクス相手の会場の警備でなくてほんとよかったっと胸を撫で下ろし、トイレに向かうと生きた伝説のDNAがついているジョーイが鼻を噛み捨てたトイレットペーパーを冥土の土産に持ち帰り家路に着いたのでした(あくまでもネタでしたが、仲間内で喜ばれました)。

残念ながらジョーイは2001年には49歳という若さで亡くなってしまいましたが、彼らが残した作品は今も聴き続けられています。
何か元気が足りない時、スカっとしたい時、走っている時、ラモーンズを聴くと不思議と力がわいてきます。

お母さん、あのラモーンズのピックとトイレットペーパーいったいどこ行ったんでしょう。。。

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