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はじめてのおつかい

テレビ番組「はじめてのおつかい」が昔から大好きだ。
小学校低学年の頃から、40歳となった現在まで、ほぼ欠かさずに観ていると思う。
改めて、とても長く続く素晴らしい番組なんだなと心から思う。

子供の頃から小さい子が好きで、小学生の頃、将来の夢は幼稚園の先生だった。
団地住まいだったこともあり、近所の赤ちゃんや小さい子が可愛くて仕方がなく、お世話させてもらうことがとにかく嬉しかったし楽しかった。
面倒を見てくれてありがとう、一緒に遊んでくれてありがとうと、ご近所のおじちゃんおばちゃんは皆言ってくれたが、こちらこそありがとうと子どもながらに思っていた。

どの子も皆ただただ可愛くて、本当に見ていて飽きないし、楽しくてしかたがなかった。
もちろん、怪我をさせてはならないし、間違って拾ったものを口に入れたりしたら大変なので、かなり神経を使いながら遊んでいたのを覚えている。
ある時、近所の一つ年上の女の子も一緒に遊んでいて、その子が赤ちゃんを抱き上げ、思い切り高い高いをして天井に頭をゴツンとぶつけたことがあった。
その子は「あ〜ごめんごめ〜ん!」と笑っていて、そばにいた赤ちゃんのお母さんは「大丈夫、大丈夫、ちょっと痛かっただけよね〜」と笑って子供をあやしていた。
私はというと、近くで目撃しただけだったのだが、とにかくヒヤッとした。頭をぶつけてしまった、しかもよその赤ちゃんの…とんでもないことを…それなのに、軽くごめんごめんと笑っていられるなんて…と、何だか色んなことにショックを受けてしまった。何十年経った今でも、その時の感覚を覚えている。

すでにその頃から、小心者で慎重派の良くも悪くも真面目な性格が出来上がっていたのだと思う。
どうにも、周りで起こる様々なことに対し、まるで自分に起きたかのように、なんなら当事者以上にショックを受けたり感情を揺さぶられたりしてしまいがちだ。
時には、ふと我に返り、お前じゃないだろ、と自分で言いたくなるほどに。

大人になり社会に出て色んな人と関わる中で、そんな性格故の生きづらさを日々ひしひしと感じながら、あの時、あ〜ごめんごめん!と笑って終わらせることができた彼女のようなタイプだったら、もっと軽やかに生きられるんだろうな…とふと思ったりもする。

そんな私が「はじめてのおつかい」を観るとどうなるか…。
小さい子の一生懸命な姿にただただ感動し、毎回必ず号泣してしまう。これは今に始まったことではなく、番組を見始めた小学生の頃から変わらない。
弟に「お前、何泣いてんの?」と冷めた目で見られながら、構わずハンカチを握りしめていた。

よく、大人になって自分に子供ができてから、親になり「はじめてのおつかい」を見て泣いてしまったという話を聞くが、私の場合は子供の頃から号泣必至の番組だった。
なんなら今も独身で子供のいない私だが、子を持つ親御さん方に負けない号泣ぶりだ。

図々しくも親目線で泣いてしまうのはもちろんだが、小さい子がおつかいをやりとげ達成感でいっぱいの表情、覚悟を決めた姿、大好きな家族のことを思い葛藤する姿、一生懸命考えピンチを乗り越えようとする姿を見て、子どもの方にも感情移入してしまう。頭をフル回転させて懸命に考えているんだよね…わかるよ…わかる…といった具合に。

幼い頃の自分と似たようなタイプの、引っ込み思案だったり、真面目で慎重派の怖がりな子がいれば、より一層感情移入し、反対に、明るくあっけらかんとした堂々たる子がいれば、ただただ可愛く頼もしく、なんて素直な良い子なんだ…素敵なご家族の元で育っているのだろうな…とそれはそれでまた感動してしまう。

歳を重ね、この番組を観て号泣するポイントが格段に増えている。おつかいを託された子供、見守る家族、助けてくれる周りの人々、出てくるあらゆる人のちょっとした表情一つから、その感情に思いを巡らせすぐに泣いてしまう。開始からほぼずっと泣いている状態だ。
翌日には恐ろしいほどに顔が浮腫むため、録画しておき、休みの日の前に観るようにしている。

見ず知らずの小さな子のおつかい姿にそれだけ大号泣し、これが自分の子供だったら私はどうなってしまうのだろう…確実に身が持たないのでは…想像すると恐ろしい。
そして、実際に子育てをする方々を尊敬せずにはいられないのだ。
バスや電車で、小さな子を連れたパパママと遭遇すると、つい反射的にニコニコと子供に笑顔を振りまいてしまう。それと同時に、パパもママも大変ですね、立派ですね、と勝手に心の中で尊敬の念を抱くのだが、時代も変わったし、怪しげな振る舞いをして変なおばさんと化してはならない…と葛藤しニコニコ顔を徐々に戻すことが多々ある。

結局、子供の頃からいい大人となった今も変わらず、厄介な性分故の生きづらさを感じていることに気付かされるが、仕方がない、そんな性格だしな…あと左利きだし…と卑屈ながらも自覚し受け入れているだけでも、少しは成長したと思いたい。

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