じゅん

コロナ禍のステイホームをきっかけに、小説や日々感じたことなど、文字を綴り始めました。書…

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コロナ禍のステイホームをきっかけに、小説や日々感じたことなど、文字を綴り始めました。書き溜めていたものを少しずつアップできればと思います。

最近の記事

日本最大級のモスク、東京ジャーミィで異文化体験してきました

 せっかくの休日なので、どこかに行きたい。でも暑い! ということで、室内で楽しめて、かつ、前々から見学したいと思っていた東京ジャーミィに行ってきました。                          2024年9月 ◆東京ジャーミィって?  イスラム教の礼拝所をモスクといいますが、東京ジャーミィは東京都渋谷区にある日本最大のモスクです。トルコ文化センターも併設していて、宗教だけでなく文化的な交流の場としても機能していることから、実は誰でも訪れることができます。美しいモ

    • 【創作大賞2024応募作】神々の憂い #16(最終話)

      «前話  最初から読む エピローグ    「ノエ様、やはり蔓には荷が重すぎます。ア、アマテラスオオミカミ様の振りをするだなんて、畏れ多くて……、神罰が下りまする」  シュリに借りた衣装を身に纏い、化粧を施した蔓は手足をモジモジとさせて訴えてくる。 「だまれ」と威圧するも「ですがノエ様……」と言って、なおも食い下がってくる。 「しつこいぞ蔓。いいか、よく聞け。そもそもは、ヤクがあのムスメに『なんでも願いが叶う御朱印帳』だと嘘をついたのが発端だ。あのムスメはどんなことをして

      • 【創作大賞2024応募作】神々の憂い #15

        «前話  最初から読む  次話» 十一章    十一月ともなれば、木々が生い茂る山中では、日中でさえもさほど気温は上がらない。まして日没ともなれば、冷え込みは厳しく、吐く息は白くなる。真冬用の厚手のアウターを羽織ってきて大正解だ。重い足を引き摺るように登り進める山道は蛇行して、その先は暗闇につつまれている。聞こえるのは、ふたり分の足音と木々が微かに揺れる音だけだ。登り坂の傾斜がキツくないことがせめてもの救いだった。 「ねー、坂下君、ほんとにこの道で合ってる?」  目の前

        • 【創作大賞2024応募作】神々の憂い #14

          «前話   最初から読む  次話≫   蔓の豹変に、店長と坂下はただただ目を丸くして驚いており、ノエに至っては、この状況を収める気など、さらさらなさそうだ。  暴走を止める役割りはどこへ行った? 「わたくしは、そんな情けない神に仕えてきたつもりはありませぬぅぅぅぅぅっ!!」  一段と激しい絶叫のあと「なんの騒ぎ?」と、エキがバタバタと足音を鳴らして大広間に入ってきた。  助かった――。 「月光院に戻ってきた途端、ガチギレの声がさ――。何があった?」  一瞬だけ静

        日本最大級のモスク、東京ジャーミィで異文化体験してきました

          【創作大賞2024応募作】神々の憂い #13

          «前話   最初から読む   次話≫ 十章    月光院はしんと静まり返り、なにひとつ物音がしなかった。  都会に住んでいると何かしらの音が鼓膜を刺激する。田舎においても無音ということは珍しい。  木々が擦れる音、鳥の囀り、やはり何かしらの音が響いている。  灯は無音の世界を堪能するように目を閉じて耳を澄ました。  すると遠くの方からギチっギチっと廊下の軋む音が近づいてくることに気づいた。  今日はいつもより音が早い。  顔を見なくても足音で誰だかわかる。  三、二、一

          【創作大賞2024応募作】神々の憂い #13

          【創作大賞2024応募作】神々の憂い #12

          «前話   最初から読む  次話≫ 九章 ②  次の日の朝も、用心するに越したことはないと、中込がマンションの下まで迎えにきてくれることになっていた。 「休みにしてあげたいのですが――」と店長は言ってくれたが、朝の時間帯の急なシフト変更は難しかったようで、予定通り灯がバイトに入ることになったのだ。  中込は、どうせ朝ごはんを食べに行くついでだからと言って快く引き受けてくれたという。本当に頭が上がらない。  灯は中込を待たせないように、早めにエントランスに待機していた。

          【創作大賞2024応募作】神々の憂い #12

          【創作大賞2024応募作】神々の憂い #11

          «前話   最初から読む  次話≫ 九章 ①    十一月に入ったというのに温かい日が続き、道路脇の銀杏の木は、色づくことなく緑のままだ。今日は、近隣のビルでセミナーが開催されたようで、ランチタイムになると昼食を求めて、一斉に客がなだれ込んできた。坂下がシフトに入っていないときに、この客入りはつらい。加えて、昨夜は蔓とのガールズトークが盛り上がり、寝不足気味なので、かなりのてんやわんや状態だ。  十三時を過ぎて、ようやく客足が落ち着き始めたころ、五、六人のサラリーマンが押

          【創作大賞2024応募作】神々の憂い #11

          【創作大賞2024応募作】神々の憂い #10

          «前話   最初から読む   次話≫ 八章    灯はひたすらバイトに励んでいた。 「灯さん、店長が新作の和風シュークリームを試食してくれって言ってますよ。あさって届くらしいので、持って帰れって。黒蜜、きなこ、しらたま団子入りらしいっす」 「クリーム入ってないの?」 「もちろん入ってるっす」 「すごいね、なんかモリモリ」 「来週から店頭に並ぶみたいっすよ」 「ふーん。私、二個もらって帰ろうかなぁ」 「もしかして、彼氏できたんすっか?」  好奇心全開の目で坂下が言う。 「

          【創作大賞2024応募作】神々の憂い #10

          【創作大賞2024応募作】神々の憂い #9

          «前話   最初から読む  次話» 七章    結局、あの日ヤク爺は出てきてはくれずじまいで、宴はお開きとなった。  申し訳なさでいっぱいになっている灯に、蔓は満面の笑みで「灯様。わたくし、久しぶりに楽しゅうございました。屋敷の者も息抜きができたようで、ようございました」と、嬉しそうに言ってくれたことが救いだった。  そして帰り際にこうも言われたのだ。 「よろしければ、時おりでかまいませんので、朱里七福神社にも、いらしてくださいませね。シュリ神様も灯様に会えていないようで

          【創作大賞2024応募作】神々の憂い #9

          【創作大賞2024応募作】神々の憂い #8

          «前話   最初から読む  次話≫ 六章 ② 「ノ、ノエ様、いらっしゃっていたのですね」  この人がノエ様――?  てっきり女の人かと思っていたので、目の覚めるような美形男子が現れ、戸惑いを覚えた。 「蔓、ヤクを呼びに行かなくていいのか?」 「あっ、さようでございますね」  蔓は男に向かって「お前は下がってよい」と言い捨てると、以前御簾が下りていた、畳が一段高くなっている場所まで歩み寄り「ヤク神様、灯様がおいでになりました」と、よく通る鈴やかな声で呼び込み始めた。

          【創作大賞2024応募作】神々の憂い #8

          【創作大賞2024応募作】神々の憂い #7

          【神々の憂い】を始めから読む場合はこちら 六章 ①    蔓との約束を果たすべく愛宕山神社へとやってきたこの日は、恨めしいほどの快晴で、早朝にも関わらず、まだまだ夏は終わりませんけど? と宣戦布告をされているような厳しい残暑だった。  バイトのシフトも、突然休みを告げられ、ありがたいような、そうでないような複雑な心持ちだ。  最寄駅を出て、スマートフォンのナビゲーションアプリに誘導されるがまま歩いていると、紅葉のような真っ赤な大鳥居が出迎えてくれた。そして、その奥にそびえ

          【創作大賞2024応募作】神々の憂い #7

          【創作大賞2024応募作】神々の憂い #6

          【神々の憂い】を始めから読む場合はこちら 五章 ② 蔓が言うには、朱里七福神社でお祓いを受けた際に頂いたお札を介してここにやってきたのだという。あのお札にはシュリ神様の御力が注ぎ込まれ、朱里七福神社とお札の間には神道がつながっているらしい。   言われてみれば蔓のホノグラムが見えるのはお札を飾っているあたりだ。  厄祓いの授与品から厄病神の使者が出てくるなんて、ホラーではないか。  苦々しくお札を見つめていると 「ご心配には及びませぬ。神道がつながっているのは一年ほどに

          【創作大賞2024応募作】神々の憂い #6

          【創作大賞2024応募作】神々の憂い #5

          【神々の憂い】を始めから読む場合はこちら 五章 ①   「いらっしゃいませー」  いつもと変わりなく、七福マートに坂下の呼び声が響く。  朝の七時だというのに、なんて元気なんだろう。それに引き換え灯は睡眠不足でボーッとする頭をなんとか奮い立たせて、品出しをするありさまだ。情けない。  連日の睡眠不足の原因はわかってる。  明治森神社での出来事が、あまりにも衝撃的過ぎたせいだ。    こわい。  いやだ、こわい。  いやだ、こわい、いやだ。    もはや、この言葉以外知らな

          【創作大賞2024応募作】神々の憂い #5

          【創作大賞2024応募作】神々の憂い #4

          【神々の憂い】を始めから読む場合はこちら 四章    七月二十日、御朱印帳に指定された日。  運良くバイトのシフトが入っていなかった灯は、明治森神社を訪れていた。  ジリジリと肌を焦がすように、強い日差しが容赦なく照りつける中、厳かな鳥居をくぐると、参道脇に生い茂る木々が日差しを遮り、足を踏み入れるごとに、ひんやりとした涼しさに包まれる。  鳥居の外の灼熱地獄が嘘のように心地よく、あたりをそよぐ柔らかな風が灯の不快指数を和らげてくれた。神聖なるマイナスイオンを全身に浴

          【創作大賞2024応募作】神々の憂い #4

          【創作大賞2024応募作】神々の憂い #3

          【神々の憂い】を始めから読む場合は、こちら  三章    午前七時。  コンビニ店員の朝は早い。  会社勤めをしているころなら、まだアパートにいる時間だ。なのにもう働いている。  ここ七福マートで、灯が働き始めてから二週間が過ぎた。  ヤク爺の言う、萬屋とは、いわゆるコンビニエンス・ストアで、あの日、ヤク爺から七福マートを勧められたのも何かの縁だと思い、灯はその足で面接に向かっていたのだ。  けれど勢いで赴いたはいいものの、履歴書は持参していないし、転職先が見つかり次第

          【創作大賞2024応募作】神々の憂い #3

          【創作大賞2024応募作】神々の憂い #2

          二章     ふぅー。  長い一日だった。  風呂から上がると、どっと疲れが押し寄せて、崩れるようにベッドに倒れ込む。  住むところまで失っているのではないかという一抹の不安に駆られながら家路につくと、火事でアパートが焼け落ちていることもなければ、上階の水漏れで部屋が水浸しになっていることもない。もちろん空き巣に侵入された形跡もない。朝、家を出たときと同じ様で出迎えてくれた。  ヤク爺との出会いが、厄落としにつながったのだろうか。  朱里七福神社の神様だったりして……。

          【創作大賞2024応募作】神々の憂い #2