【諦められない者たちへ】

 
 『ルックバック』という映画を観た。
 今、この酔った勢いで、私に文章を書かせてくれないか。酒の勢いと言えば勢いだが、それでもこの書いた文に創作という名前をつけたい。これから書くであろう文章は、酒の勢いで書いたものであって、正気になったとき目も当てられないものであろうが、それでも私をクリエイターという名前で何か作ったという形にさせてほしい。
 
 誰かを魅了するような強烈な才が欲しいと思った。
 
 それは良いとか悪いとかそういった善悪に基づくものでなく、ただそこにあるだけで世にある倫理を吹き飛ばしてしまうような、強烈な魅力を持った才。
私もそんな風に人を魅了したいと思ってしまった。ただ、もちろん何の努力もなしにそういった才は簡単に手に入るものではなく、稀に天才という名前の美しき人々が、我々から見たら自由気ままにその輝きを放っているように見える。当然、私にそんなものはないわけだが、それでもその才に魅了された者として、私もその輝きが欲しいと願わずにはいられない。
ものを作るということに対して絶対に、諦めるという一時の工程を無視はできない。挫折を繰り返し、それでも諦められなかった者だけが、それを諦められなかった者だけが、醜く汗をかき、しがみつきながらも、藻掻いた者だけが手に入れているのだろう、
その輝きを。私は、その泥臭いような努力を、エンジンをかけ直す努力を、胸を張って積んできたと言えるだろうか。芸術の悪魔に魂を売り飛ばした者が羨ましい。私には芸術の奴隷だと言えるような度胸は到底なく、他者を羨むばかりで、その才が欲しいと醜く藻掻いたことはあっただろうか。ただそれでも、自分の人生から創作という醜くも美しい存在をまだ手放さなくてもいいんだと思える安堵もある。
 
 これしかないと足掻ける者の美しさよ、恨めしさよ。
 
 その輝きに目を奪われるばかりで、羨ましさを募らせてばかりで、私はどんなに下手で成長しなくても、これを離さないぞという覚悟を持てたことはあるだろうか。それでもまだ、しがみつきたく、形ばかりを整え、背伸びしたような私は、分かっているというような顔をしてばかりでいる。そんな滑稽な姿を晒してまでも、まだ私という存在から切り離せない何かがあると思いたいのだ。
 
 明日、何者になるんだろうか。
 何になりたいと願うだろうか。
 
 願うだけで何かになれるのであれば、この世はもっと単純だろう、幸福だろう。
全てをわかったようなふりをして、顔をして、それでも一歩ずつ何かを積み上げるしかないのだ。涼しい顔をしたような他者を横目で見て、羨みながらも、この青臭さに任せて、果ての見えない道を歩いていくしかない。
 
 この文を観測した者よ。
 
 どうかあなたの手で、私の嘆きを、甘ったれた覚悟を、何か作っているような気がしている私を、認めてくれないか。だがまあ、人生とはそんな簡単に行くものではないね。こんな風に悟った顔をしているようなうちが、私の人生の華であるのかもしれない。
 
 人を魅了する強烈な才が欲しい。
 
 堅実に諦めずに、積み上げられるような努力をしたい。欲しい欲しいと羨む私を笑いながらみているかもしれないあなたへ。どうか、どうかあなたの中へと伝わる何かがあればいいと思う。
 全て酒の勢いでしかないが、それでもこの文章に創作という名前をつけさせてくれないか。

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