ラブコメ好きのための「地獄先生ぬ~べ~」・その3

 ラブコメは予定調和、オチを知ってても楽しめる!を信条とするるーみっくファンが、ラブコメ的観点から「地獄先生ぬ~べ~」を再読します。

 前回に引き続き、主人公ぬ~べ~と雪女ゆきめの恋の進展を追いかけます。


(前回まで)
0.本題に入る前に、ゆきめってかわいいよね
1.雪女は冷たい心の妖怪(文庫版3巻、#30)

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2.本当の恋のはじまり(4巻#49)

 ゆきめ登場回全部振り返ってしまいそうな勢いなんですが…でもやっぱり登場2回目のこのエピソードも避けては通れぬ。

 雪女には耐えがたい真夏。ぬ~べ~を愛するあまり、ゆきめは山に連れ去ることを諦め、「この町で先生と暮らします!」と言い出します。(おしかけ女房系美少女的なジャンルあるらしいね。その先駆けかな…いや、それはラムちゃんか。)

 ある意味ラブコメ王道展開が始まるわけですが、ぬ~べ~はあたるくんとは恋愛偏差値が全然違う。デレデレするくせに、雪女が真夏の人間の町で暮らすことがどんなにおおごとか、そしてそんなおおごとをやっちゃうゆきめがどんな気持ちか、まるでわかっていません。

(これ、もしあたるくんだったら、「アホ、とっとと帰れー!!」って全力で冷たくしたまま遊びに出かけて帰らず、でもラムちゃんのこと気にして、ラムちゃんが体調崩そうものならラムちゃん寝てる間に黙ってついててあげる、みたいな感じだと思うわけ。)

 でもまあ、ぬ~べ~の魅力って、すれ違いラブコメを起こすような繊細なツンデレではないわけですよ。奥手で不器用だけど、いざという時に助けてくれればそれでいいの、そういうヒーローだもの。

 このエピソードでも、ゆきめのピンチに体張って助けに入るのがぬ~べ~です。アニメだと、ぬ~べ~がゆきめ守った時に怪我した描写が入っていたりして、救出シーンがよりドラマチックになってます。

 ラブコメ的に見てこの回の意義が大きいのは、ゆきめの「恋」の性質が変わっているのが明らかにわかるからです。

 ぬ~べ~に助けられたゆきめは、「やっぱりこの人しかいない!」と惚れ直します。
 もはや幼い少女の片思いでもなければ、愛しい男を奪う雪女流の愛でもない。ゆきめはもうぬ~べ~じゃないとダメで、ぬ~べ~に受け入れられなければこの恋は成就しないのです。彼を氷漬けにしても解決しない、彼が求める形でしか実らない恋。ゆきめは完全に、彼のルールに身をゆだねることを決めたのです。人間の町で暮らすこと自体がその決意の表れでしたが、改めてその決心を固くします。

 一方で、このエピソードの最後、熱に耐えかねたゆきめが死んでしまったかと思われるシーンがあり、ぬ~べ~は初めてゆきめのために涙を流します。自分が無神経であったことを認め、こんなことなら一緒に山に行ってやればよかったと。
 正直、ぬ~べ~側にこのエピソードでどれだけ深い意味があるかはなんとも言えないと思っています。ぬ~べ~はお人よしで涙もろいから。命を失った者を目の前にしたら、その人に冷たくした自分に責任を感じるタイプでしょう。
 ぬ~べ~はゆきめを失ったことが悲しくて泣いているのではなく、自分が彼女を守れなかったことに責任を感じて泣いているのではないかと思うのです。

 ぬ~べ~がゆきめを「雪女」としてではなく「ゆきめ」として見て、自分の恋心を自覚するのはまだまだ先になりそうですね。

 次回はリツコ先生を交えた三角関係の妙をクローズアップしていきたいと思います。

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