ラブコメ好きのための「地獄先生ぬ~べ~」・その2

 ネタバレ上等で、にわかファンがラブコメ的観点から「地獄先生ぬ~べ~」について語ります。

 公式カップルの主人公ぬ~べ~とゆきめ。人間と妖怪の隔たり、学校のマドンナ・リツコ先生を交えた三角関係を乗り越えた末に結ばれた二人ですが、このラブコメを盛り上げた要素、エピソードを拾っていきましょう。

0.本題に入る前に、ゆきめってかわいいよね

 そもそもなんですけど、ゆきめのビジュアルですよ。
 かわいいでしょ。実は私、アニメをリアルタイムで見ていた時代は、ゆきめの初登場回を知りません。つまり先月Amazonプライムで見るまで知らなかった。たぶん、ぬ~べ~をちゃんと見るようになった時、すでにアニメのエンディングは「SPIRIT」に変わっていたと思います。
 私にとっての「地獄先生ぬ~べ~」という作品は、思い出のアニメで、しかもそのエンディングの印象がとても強いのです。
 そのエンディングでは、ゆきめにスポットライトが当たっていて、絵がキレイ。特にサビに入るところのゆきめ、めちゃくちゃかわいいです。

1.雪女は冷たい心の妖怪(文庫版3巻#30)

 ラブコメにおいて、当事者二人の属性と関係性の初期設定はとっても大事。ハッピーエンドがお約束なのにおかしな感じがするかもしれませんが、一見してわかる「相性の悪さ」みたいなものがいると思うんです。恋愛ドラマには、偶然二人に襲い掛かる事故みたいな障害だけではなくて、二人の根幹と切り離せない障害が必要だと。それはその人たちの性格であったり、過去であったり、置かれている環境だったり。それらを無視して信頼関係を結ぶことはできない要素に、何かしらの不純物があること。


 そういう視点で見ると、ぬ~べ~とゆきめにはばっちりラブコメの装置が備わっている。ゆきめが妖怪・雪女であること、これに尽きます。


 雪女は、雪山の厳しい自然を恐れる人の心が生み出した妖怪とされています。愛した男を氷漬けにしてさらっていく。人の常識も心もない、むしろそれを脅かすのが妖怪たる雪女の本質と言っていいでしょう。
 その雪女が、暑苦しいくらい人間くさい男に惚れるのです。難しいことなんて考えないで。命を救ってくれたことへの感謝はもちろんあるでしょう。でもゆきめにとっては、ただただ、その時の先生が格好よかったんじゃないでしょうか。それだけで、彼女は五年間、彼を一途に思い続けた。嫉妬も不安もない、憧れベースの単純でロマンチックな、少女の恋のはじまりです。

 ですが、恋をして初めて、彼女は自分が「雪女」であることに直面します。ただ内心で好きだなと思っているだけなら無害ですが、十六歳になって成人した雪女にとって、「恋の成就(永遠の愛)=男の氷漬け(死)」です。到底、人間相手に受け入れられるものではない。通常ならば、妖怪と人間の力の差がものを言い、雪女が一方的に奪って成就させるはずの恋ですが、相手がぬ~べ~だからそうはいきません。

 ゆきめはぬ~べ~を氷漬けにして自分の山へ連れ去るために、ぬ~べ~の前に現れます。これが初登場回。氷漬けが永遠の愛だと、雪女の常識で本当に思ってる。
 でも、ゆきめがぬ~べ~を連れ去ろうとするのを邪魔する生徒たち、そしてその生徒を守ろうとするぬ~べ~を見て、引き下がることに。ぬ~べ~の気が変わるのを待ってる、と。

 ぬ~べ~側からこのエピソードを見てみると、「妖怪と人間が結ばれるはずがない」というマインドセットが固く、それゆえにゆきめをやんわり隔てて、山に帰るように仕向けています。
 ゆきめのことが嫌いなのではないと言いつつ、結ばれるわけがないからと決めつけているので歩み寄りは一切ありません。「ゆきめが人間だったら」なんて都合のいい妄想をしながら、「ゆきめのため」だと言い訳して後ろめたそうに冷たくしています。
 このあたりに、善良で奥手な男の子にありがちな「ずるさ」が見えるような気がします。

 みんなに優しいぬ~べ~が、ゆきめにだけ冷たくしている時だけ、私には、彼が恋愛に不慣れな、傷つきたくない普通の男の子に見えるのです。

 次回、さらに雪女ゆきめの心の変化を読み解いていきたいと思います。


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