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メキシコシティの治安について

 メキシコに来る前は、「メキシコは危ない」というイメージが一番にあって、恐怖心がとても強かったし、来てから2週間くらいまでは外でずっとびくびくしていました。しかし、1か月経った今、少しリラックスしてきました。というのも、どこが危険で、何に気を付けなければならないのか、だんだんわかってきたからです。これから書くことはすべて私の感覚なので、実際の犯罪の発生状況などとは異なることもあるかもしれませんが、感じたそのままを書きます。

 家の近所や語学学校へ行くまでの道程は、それほど治安が悪くないことがわかりました。家の近所は特に安全です。昔からずっと住んでいる人が多いし、近くに教会があるし、子供も多く人通りもまあまああるので、日本にいるときより少し気を付けていれば、盗難や犯罪被害にあったりすることはめったにないと思います。学校行きのバスは、たまに怖そうな人が乗ってくることもあるけれど、同じ時間帯に乗る人が決まっていて、顔なじみ同士の会話があったりするので、けっこう安心します。基本的にリュックを前に抱えているのですが、今のところ何も盗まれてはいません。

 怖いな、気を付けなければなと思うのは、北の方の都会へ行く時です。感覚的には埼玉から東京に行くような気分で、ちょうどかかる時間も1時間くらいですし、だんだんとお店の数が増えていき、人の数も増えていき、ちょっと下町っぽいところ(赤羽、十条あたりのようなところ)も過ぎて、高層ビルが増えていくからです。(もちろん、実際はもっと治安の悪そうなところはちょこちょこ見かけます)。体感的に「怖い」と感じる場所は、日本でいう渋谷、池袋、新宿の歌舞伎町、秋葉原のような感じで、いろんな人が集まりやすく、雑多な感じがするところです。都会だからこそ貧しい人もいるし、廃墟、人気のない建物、開発中の場所も多く、間違ってそういう場所に行ってしまうと危なそうだなと思います。そのため、北の方へ行くときは、五感をフルに使って、常に物を近くに持っておくこと、極力携帯電話を出さないこと、人気のない場所、人が多すぎる場所に近づかないことを心がけようと思っています。

 絶対に近づかないようにと言われている地区もいくつかあります。薬物関係者が集まるところ、犯罪組織が集まるところです。犯罪の多くはそういった限られた地区で発生しているようです。メキシコ人の方でも、近づかないと聞きます。そういったところに近づかなければ、犯罪事件はめったに起こらないと思われます。ただ、毎日メキシコシティで数人の女性が殺害されているようですし、ごくたまに大使館からのメールで、日中、銀行やレストランなど公共の場で銃撃戦が発生し、関係者が殺害されたというのも流れてきたりするので、油断は全くしていません。いつどこで何が起こるかはわからないと頭には入れています。

 メトロ(地下鉄)もやはりちょっと怖いです。でもそれにはやむを得ない事情があることがわかりました。女性専用者が設けられているのですが、赤ちゃんを連れた女性、若い女性、視覚障害の男性、小さな少年、少女、中年の男性など様々な人が物を売り歩いていたり、何か社会活動のための演説をしたりしているのです。そのため、男性が入っても、断れない状況があるのです。物売りの人は、だいたい100円以下のお菓子やおもちゃなどを売っていて、1両でだいたい2,3人が、たまに買っているのを見かけます。私はまだ一度も買ったことがないし、誰かにチップを渡したこともありません。インドに行った時も、何度も同じような状況に遭遇して、何もできませんでした。毎回悲しくて切なくなり、どうするべきか悩みます。自分の中での解決策はまだ出ていません。中には歌って稼いでいる人、ミュージックプレーヤーをお腹に抱えて音楽を流して稼ぐ人、親子二人組で、病気のお父さんの医療費をくださいと訴える娘さんなど、いろんな人を見かけます。そうするしか生きる方法がない人たちがいるということを「治安が悪い」の一言では片づけられないなと思います。私も同じ立場だったら、その状況に嫌気がさして、いつ怒り爆発してもおかしくないと思います。現在の政治経済システムにも、歴史にもいろんな問題があってそういう状況がある。もしかしたら自分自身もそういう状況に加担しているのかもしれない。日本では全く考えることがないけれど、常に貧困問題が身近にあるから、生きるということがいかにシビアかを思い知らされます。自分も頑張って生きようと思わされます。

 このように、治安の悪さというのは、貧困の問題と一体となっている側面もあり、なんとも判断しづらいです。みんなどんな状況にあってもがんばって生きているのに、見た目などでみんなを悪人と判断してなんでも怖がるのも違うなと思いました。みんな頑張ってる、自分も精一杯生きる、それしかないなと思います。それくらい開き直ってしまえば、「治安の悪さ」というイメージも変わってきました。誰にとっても明日なにが起こるかわからない、だからこそ今日を精いっぱい生きようみたいな気持ちになれて、精いっぱい今を楽しめて、活気がわくんじゃないかと思ってきました。メキシコはそういう国なのかもしれません。

 頻繁に爆発音が聴こえることにも慣れてきました。その多くはパーティーや記念日かなにかの爆竹や花火のようなのですが、日本でいえば「運動会を開催するよ」という予告の花火をさらに大きくした感じです。それが毎日、時間を問わずいろんなところで聞こえるから、最初は怖くてしょうがなかったですし、毎日こんな感じだったら、銃撃戦とかテロが起こっても、パーティーと勘違いしてしまうんじゃないかと思いました。実際、ききわけがつかないと思います...。それも、メキシコなんだなと思っています。でも、私はこのカオスな雰囲気が今のところけっこう好きです。夜遅くまで大音量で音楽を流しても、花火をしても、誰かの祝福のためだったら、誰も怒らない、気にしない、そのお祭り気質の雰囲気が好きです。危険と引き換えに、その分の自由がある、とでもいうのでしょうか。

 あと、もう一つ書きたいことがありました。タトゥーを入れていること、ピアスを開けることが当たり前のようで、タトゥー屋さん、ピアス屋さんがたくさんあり、全身にタトゥーが入っている人も珍しくありません。(私も今日、800円くらいで右耳に2つ穴を開けました)。そのため、タトゥーが入っている人=怖いという日本人的な感覚も少しずつ薄れてきました。見た目による判断ができないので、難しいですね。

十分気を付けながらも、リラックスして日々楽しみたいです。

 

 

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