【感想】貴女を嫌いになるとは思わなかった。(舞台「白い雪と赤い華」)
クロジ第19回公演「白い雪と赤い華」千秋楽のアーカイブ配信を拝見しました。
Theatre劇団子さんが好きな私は、斉藤範子さん、杏泉しのぶさん、大髙雄一郎さんがどんな役なのか楽しみに観始めたのですが、公開しない記事ばかりが眠り続けるnoteに感想を書き残したくなる程、ものすんごく楽しませていただきました。
感想で埋もれそうだから先にとりあえずこれだけ書いておくね。
気になっているのでしたら観て!!
アーカイブは2021年10月31日まで観れるそうです!!
確かに劇場で観たらそれはそれでとても素敵だったと思うのですが、私は配信で観ても良かったと心底感じています。
個人的に配信で観劇する際
・ここぞという時に役者さんをカメラが抜いてくれる
・プロジェクションマッピングなどの映像、舞台全体がいい感じに使われている演出がある
これがあるだけでかなり満足感が違うなと感じます。
劇場で生で観るとどうしても自分の感情で気になるキャラクターを観てしまうので、カメラワークがあるとこのお話で作り手さんが観せたいところがよりハッキリして好きです。
今回の作品はどちらも含まれていたので、私は配信で観て良かったし楽しめました。
そして配信を観た上で劇場で生で観られたら一番幸せ…。
カーテンコール。モニターの前、1人で泣きながら自然と拍手したくなりました。しっかり拍手しました。
という訳で、観た直後の勢いで感想を書き残します。
内容に触れる話、ネタバレを含む部分からは【以下ネタバレ含む】を表記します。まだネタバレはない。多分。
さて、舞台に立たせていただく事もある身としては、そもそも舞台を、映像や配信でお客様に楽しんでいただくのって難しいと思っているので、正直今回も劇場に観に行くか、配信で観るかギリギリまで悩んでいました。
コロナ禍と言われる状況になってから、本当に劇場という場所に近付かなくなってしまった。それは自分の中での色んな想いや決め事があるからなのですが、自身が少し離れたからといって辞めたいとか嫌だとかそういう話ではないのです。
この話は長くなりそうだから、またいつか気が向いたらしましょう。
そんな中でスケジュール都合的なものも含めて、
「今回は配信で観劇させていただこう。」
という結論に至った次第です。
あとTwitter等の口コミの力に後押しされたのも理由の一つ。『やっぱり劇場で生で観たかったけど、配信でも本当に楽しめた』という声が多くてどんどん「観たいなぁ」という気持ちを強くしてくれました。
素敵な公演を上演してくださった関係者の皆様、そして「面白かった」と感想を書いて、「白い雪と赤い華」を観るように私を動かしてくれた皆様、本当にありがとうございました。
そんな訳で
【以下、ネタバレを盛大に含みます】
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SNSなどではとにかく斉藤範子さん演じる朱音(あかね)の評判が良いという印象でした。
範子さんは私もとっても大好きな女優さんなので、SNSで『朱音よかった!』『美しかった』と見るたびに「でしょうね?!」と、観劇への期待が高まるばかりでした。
朱音は子爵家の娘ですが、花房のお屋敷に奉公人として売られてくる。そこから全ての物語は始まっていきます。
この回では阿部敦さんが演じていた、大切な弟・蓬生(よもぎ)を守る為にも!と慣れないながらも一生懸命な朱音。そんな彼女を様々な事件が襲います。
範子さん、本当に流石でございました。私は花房家に来たばかりの朱音が可愛くて大好きで、序盤で物語にのめり込む準備はばっちりだった。だから辛い。朱音を好きになればなるほど、朱音の身に起こる事件が私の心もえぐってくる。
朱音にがっつり心を掴まれていたのと、役者さん達のおかげで無事に東さんも上人さんも褥さんも新平太さんもみんな嫌いになりました。みんな酷いよ。なんでそんな事するんだ、ばかやろうー。
それが故に特に花房上人役の三原一太さんと、褥役の杏泉しのぶさんの千秋楽役者紹介のご挨拶では笑ってしまいました。今更だけど出演者の皆様は本当に素敵でした。役者さんとして素敵だから、「うわこいつ嫌い」ってちゃんと思わせてくれる。明確な殺意を持っててごめんよ上人さん。最高です。
しのぶさんが演じる褥さんは嫌いですが、褥さんを演じるしのぶさんは可愛くてかっこよかった。良く響くハキハキとしたお声が本当に素敵です。
朱音お仕置き事件があるんですが、去り際の褥さん本当にむかつくの。(褒めています)
ぶん殴ってやりたくなったよね。(褒めています)
自分勝手な大人達に様々な苦難を強いられる朱音ですが、そんな中でも自分を家族のように大事にしてくれる友達に出逢い、1人の男に恋をします。
松崎亜希子さん演じる藤枝千寿さんは優しいお花みたいな人だったな。
とっても暖かくて可愛かったし、きっと花房家にとっては一筋の光だったと思うんだ。
もうだからその辺が大きなきっかけだった。
そう考えるとあの男が全ての元凶といえばそうな気もするので、もしかしたら一番嫌いかもしれない。そんな男に騙されないで朱音…。最初はもうちょっとマシな人だと思ってたのに騙された。私もしっかり騙されていた。彼には彼なりの目的があったのかもしれないけれど…悔しいわ。
でも彼だけじゃなくて、確実にもう一人きっかけになったのは、カラフルなあのお兄さんだからなぁ…。でも憎めないし、なんだったらちょっと心を掴まれてしまったのでずるいな。
愛していたよじゃないんだよ。あんたのせいでもあるんだぞこの事態は。でも好き。魅力的なんだよ。…悔しいわ。
1人の男を慕う朱音。好きになった事が間違いだとは言わないけれど、その気持ち故に朱音は取り返しのつかない事をしてしまいます。
そこからどんどん朱音は変わっていくのでした。
過ちを重ねて、自分のした事に蓋をしてはまた繰り返す…。
お話が進むにつれて、私の好きな朱音がどんどん変わっていってしまいました。
まさか、朱音の事を「嫌い」になるとは思わなかった。
朱音が可愛くて好きだなと思っていた気持ちは、福圓美里さん演じる白雪にそのまま持っていかれました。
あれ、でもこの白雪可愛いって思う気持ちって、もしかして朱音の白雪に対する愛情や執着とちょっとだけ近しいものがあるのだろうか?怖い。
順調に朱音の事が嫌いになる中でも、書生さんが朗読している朱音と白雪の最初のシーンはとても好きでした。対照的で、そして恐ろしくてすごく綺麗だった。
そして、同じ事を繰り返してしまうかもしれない、同じように悲劇の中に沈んでいってしまうのかもしれない…そう思うシーンが続き、とてもドキドキしながら観ていました。
このまま、続くのか。
誰かが止めてくれるのか。
お願いだから白雪は連れていかないで。
私は、彼を疑いながらも島﨑信長さん演じる一条由良さんに希望を託していました。
この役はゲストの方がされていたので、色んな由良さんがいたのだろうけれど、島﨑さんの由良さん好きだったなー。
朱音の作った理想のお城をぶち壊すきっかけは由良さんだったんですかね、やっぱり。
だからこそ、絶望する白雪に自分の身の上話をしてカーテンがしまった瞬間…やめてくれと心底思いました。結果やめてくれて良かった。本当に良かった。ありがとう由良さん。
そしてお話はクライマックスに向かって走っていきます。
この物語を観ていてここまで、笑ったし、涙は流したけれど、思わず声が出ることはなかった。
だけど思わず声が漏れてしまったのは、大髙雄一郎さん演じる犬伏兼近のラストシーンでした。
あの叫びは劇場で聞いたらマスクびっしゃびしゃだっただろうなぁ…。
子供の名前のセンスが無いにも程がある兼近さんに泣かされるとは思わなかったです。
そうだよね、兼近さんだってそう言いたかったよね。
涙で画面見えないって思っていたらあれだもの。そりゃ「あぁぁ…。」って声出るよ。今これを書いていても泣けてくる。
もうこの辺りのシーンでは確かに哀れむ部分はあったけど、それぞれのラストシーンが積み重なって朱音の事が許せなかった。
そんな辛くて悲しい気持ちでいっぱいになっていたところを、掬い上げてくれたのは由良さんと蓬生でした。
そして、最後はやっぱり朱音さん。
なにやってんだよばかって思ったけれど、それでも時が過ぎて全部受け止めた朱音さんは最終的にはやっぱり愛せました。そして辛かった。
あんなに嫌いにならせたくせに、最終的にはやっぱり心を持っていかれるところが本当に凄かったです。
ちゃんと自分が生きてきた道を振り返って、受け止めていた姿は蓬生の大好きで大事な姉様だったのではないでしょうか。
誰かが誰かに影響して、積み重なって積み重なって最後のシーンに繋がっていく。
この物語自体が好きでしたが、それより何よりも「舞台」の素敵で好きだと思うポイントがしっかり詰め込まれていたように思えました。
後半部分のストーリーはやっぱり実際に観て欲しいので、感情が暴走気味な感想ですね。
でもそれくらい本当に心を掴まれた舞台でした。
クロジさん、DVD化はされないのでしょうか?
これは来年になっても、再来年になっても定期的に観たいです、私。
最後に改めて、大変な中、素敵な作品を届けてくださって本当にありがとうございました。
アーカイブ配信でしたが、観劇して本当に良かった。
あ~!キャストさんが違う他の回も観たくなっちゃうな~!!
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