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犬と山を登る喜び

私の人生の楽しみに、いつも愛犬ミクがいた。
ミクと北海道中を駆け巡り、登山、カヌー、キャンプを楽しんだ。
中でも、ミクと行く登山は格別に楽しい思い出だ。

ミクとよく登ったのは、藻琴山、摩周岳、仁頃山、幌岩山だ。

これらは北海道の道東にある山々だ。
この山々の麓には湖があるため、山頂からの眺めは歓喜の声が出るほどの絶景なのだ。
そして、これらの山々からは、雌阿寒岳、雄阿寒岳、斜里岳、知床連山、羅臼岳など、道東を代表する雄大な山々を見ることができる。

ミクは、山が好きだったと思う。
春は花の香りを嗅ぎ、目を細めていた。
興味津々に、でもビクビクしながら虫に鼻を近づけていた。
夏は魔法瓶に入れた氷水を美味しそうに飲んだ。
秋は枯葉の絨毯のカサカサする音が大好きで、喜んで駆け回り、転がった。
冬は雪の中をラッセルしながら走った。
北海道の真冬の寒さは厳しいので、ダウンやゴアテックスの防寒着を重ね着させた。

山に行くと、ミクの瞳はキラキラと輝き、全身で楽しいと伝えてくれた。
ミクが疲れてきたら、夫婦で交代で抱っこしながら山頂を目指した。
腕の中で眠るミクがとても愛おしいと思いながら。
ミクは山頂で食べるご飯やおやつをとても喜んでくれた。
そんなミクを見るのが好きだった。

山は、地球の息づかいが感じられる場所だ。
山に身を置くと、人間も犬も自然の一部であり、自然の循環の中で生きていると思える。
自然に身を置いた犬は、本能や野生が目覚めるのだろうか。
家では甘えん坊で無防備なミクが、山に来ると少し逞しく感じるのだ。

春、夏、秋、冬
ミクと登った山の思い出は数えきれない。
写真を見れば、あの時が蘇る。
ミクのいない今、夫婦で山を登る時は必ずミクのリードと首輪を持参する。そして、ミクと話しながら歩く。
こんなことあったね、あんなことあったね、と言いながら。

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