『愛の不時着』勝手に座談会➁

韓国ドラマ『愛の不時着』勝手に座談会の後半では、「ふじちゃく沼」「ヒョンビン沼」にどっぷりとハマりながらも、南北の分断、物語の大切さなどを真面目に語り合った。そして、納得した。私たち3人は「ふじちゃく沼」「ヒョンビン沼」について永遠にしゃべり続けられると。＜ネタバレあり＞

座談会出席者

N : 映画、演劇などのエンタメ大好き。韓国ドラマは「冬のソナタ」あたりから見始め、「愛の不時着」は久々にどっぷりハマった作品。最近はポン・ジュノ監督作品もよく見る。息子たちの顔がヒョンビンだったらと常々思う。

F : 3年間の韓国在住経験あり。職場一の韓国通。もちろん韓国のエンタメやグルメにも詳しい。「ふじちゃく沼」と「ヒョンビン沼」に真っ先にハマり、かわいい4歳の愛息に「またみてるの～ふじちゃく」と言われてしまう。

S : ３人の中で一番若い。グルメや おしゃれなどのトレンド情報に通じている。最近、頭を強打してしまい、顎がずれたという恐ろしい経験に遭遇したが、「ふじちゃく沼」「ヒョンビン沼」のおかげで何とか立ち直る。現実でも、ヒョンビンのような男性が現れないものかとつい考えてしまう。

「沼」ポイント➂　リアルな北朝鮮の描き方

N 北朝鮮の庶民を描いたドラマは初めてよね。リアリティーに満ちていて、本当にそうなの？って思いながら見たわ。
Ｆ 脱北者に、綿密なリサーチをして作り上げたんですって。
N 1話に出てくる北朝鮮の村人たちの奇妙な体操はウケたよね。
Ｆ＆Ｓ ホント～笑
Ｆ 北朝鮮では、頻繁な停電や一般家庭への抜き打ちの宿泊検閲も現実にあるらしいですよ。
Ｓ 宿泊検閲って何のためなんだろう？
Ｆ 国境に近い地域では脱北者をかくまうことがあるからじゃない？毎晩のようにあるって、脱北者ユーチューバーが解説していたよ。
Ｓ ドラマの中で、「大都会ピョンヤン」にはびっくりしませんでした？
Ｆ そうそう！ピョンヤンの大同江沿いのレストランで、ジョンヒョクとセリはビール飲んで唐揚げ食べるし。軍の高官はキャラメルマキアートも飲むし。
N 北朝鮮の村と都会の経済格差はすごいよね。
Ｓ 村では軍人の奥さん連中が集まって洗濯していて…たたいて洗ってるし笑　キムチも皆で海水で漬けているし。
Ｆ キムチ冷蔵庫がなくて、キムチ蔵（ぐら）だしね。
N 相当むかしの日本に近い！
Ｆ 昭和を通り越して、大正時代みたい笑　北朝鮮は私たちにとって、実像が分からない未知の世界だから、余計に興味深いね。
Ｓ ドラマを見ていて感じたんだけど、同じ朝鮮語でも北と南では少し違うの？
N ジョンヒョクを追って、部下の兵士たちが南に潜入するでしょ？　彼らが「南の人っぽくしゃべろう」とか言うよね。
Ｆ 単語や抑揚が違うんですよ。例えば、ジョンヒョクが「イロプソ」（大丈夫）ってよく口にするけど、韓国では「ケンチャナ」だし。血液型とか携帯電話とか、単語も違ってた。誕生日の歌も、北ならではの歌があるのもドラマで知ったね。
N え～そうだったんだ！
Ｓ セリの誕生日をジョンヒョクや部下の兵士たちが祝うシーンですよね。
Ｆ 韓国では「センイルチュッカ、ハムニダ～♬」って歌うけど、北では歌が違うのよ。
Ｓ ドラマでは、北の人たちが南に憧れを持っていますよね。市場ではカーテンで隠しているけど、化粧品とか韓国からの密輸入品を売ってたり。北の兵士たちは滞在した韓国で、「ザ・資本主義」を満喫していましたよね。
F そうそう！サウナに行ってシッケ飲んだり、ネットカフェでゲームに熱中したり。韓国のネットカフェではゲームに熱中しすぎて急死する人もいて社会問題になった。そういう韓国っぽさに、北朝鮮の人たちがハマる設定が面白いね。
Ｓ ドラマに登場するグルメも美味しそうじゃなかったです？　北でセリがジョンヒョクと部下の兵士に振る舞われるハマグリ焼きは、食べてみたいな～。
Ｆ ピョンヤンに向かう列車が停電で止まってしまって、セリとジョンヒョクが外で焚火をして暖を取るでしょ。その時に食べるジャガイモやトウモロコシでさえ、素朴だけどおいしそう！
N それから、北では珍しい高級品のように登場する…「棒コーヒー」笑
Ｆ スティックコーヒーなのに笑
Ｓ ジョンヒョクのお父さんがいつも飲んでいるマツタケ茶も気になり過ぎる！
全員 （爆笑）
Ｎ 私は、韓国に帰ったセリがよく行っていた「bb.q」のチキンが食べたくなったわ。「サブウェイ」には、セリの会社の広報室長らがよく行って食事していたり。
Ｆ 「bb.q」も「サブウェイ」も、ドラマに協賛しているんですかね？グルメじゃないけど、車の「レンジローバー」の車も出まくり。登場人物がこぞって乗っていたね。
N それにしても、部下が高官にへつらう北朝鮮軍の内情を皮肉に描いていたのが、印象的だと思わなかった？過度な忖度というか…。
Ｆ それは日本も韓国も一緒じゃない?
Ｎ　ホント！安倍政権もそうだしね笑

「沼」ポイント④ 　「ツッコミどころ満載！」

N ドラマの中には、「オイオイ！」って突っ込みたくなる部分がたくさんあって笑ってしまったね。
Ｆ 最大の突っ込み部分は、ジョンヒョクがセリを追って、脱北者用のトンネルを利用してあっさり南に入ってしまったシーン。
N＆S そこそこ！！
N セリを南に帰すために、あの手この手でトライして苦労したのは、何だったの？笑
Ｓ でも、狭いトンネルを10㌔も匍匐（ほふく）前進するんだから、危険なトンネルなんでしょうね。バイタリティーがあるセリならできるかも。
Ｆ 北朝鮮と韓国の間には、ああゆう秘密のトンネルがあるんですよね。
N ドラマの脚本家が優れた書き手だから面白いんだろうけど、「運命」の出会いや、「運命」の小道具が多いよね笑　ちょっと都合がいい気がするけど、それが韓流ドラマ。
Ｓ ドラマの作り方で、ラストにタイトルが出た後もショート映像がありますよね？次の回への伏線も含んでいて、あのドラマの作り方も新鮮でした！
Ｆ 私は最初、気付かないで飛ばして見てた笑
Ｓ ええええ、もったいないよー笑

「沼」ポイント⑤ 「国の分断から生まれるドラマ」

Ｆ「愛の不時着」ってタイトルがメロドラマっぽくて最初は引いたけど、お涙ちょうだいではなくてコミカルな要素がふんだんにあるのが、人気を得た一つの要素だと思う。
Ｓ ベタな恋愛ストーリーじゃなくて笑える。でも泣けるし、現実逃避できる笑
Ｎ 考えてみたら、朝鮮半島が分断されて自由に行き来できないからこそ、生まれたラブストーリーかも。恋愛って障害があるから盛り上がるわけで。現代社会は携帯もあって交通網も整備されてるし、会いたい時にいつでも会えるっていう状況の中でのラブストーリーはつまんないよね。
Ｆ 「アフリカにだって南極にだって自由に行けるのに、なんであなたは北朝鮮にいるの？！」ってせりふあったよね。
Ｓ 確かに！
Ｆ ジョンヒョクがセリを船で逃がそうとする時、船内で自己紹介するでしょ。セリの苗字のユンは北のヘジュ（海州）由来で、ジョンヒョクの李氏は南のチョンジュ（全州）の由来だと言い合うんだけど…。韓国と北朝鮮はもともとは同じ国で、自分たちのルーツとは逆の南と北に住んでいる状況なんて、矛盾してるなと。
Ｓ 名前の由来をよく理解してなかったわ！
Ｎ 私も！
Ｆ でも、セリは嘆くんじゃなくて、「皮肉なものね」ってサラっと言うからいいのよ。
Ｎ 国が分断するって、あらためて悲劇だなって思う。それに、このドラマを通して北朝鮮のイメージが変わったね。
Ｓ 私は北朝鮮に対して怖いイメージがあった。拉致被害やミサイルの問題もあるし、冷酷な国のような気がしていたけど、温かい人たちもいるよね、ってドラマを見て感じた。
Ｆ そう思わせるように、庶民を上手に描いていたよね。
Ｓ ホントホント！
Ｎ 北朝鮮の村でセリが出会った奥さん連中やジョンヒョクの部下の兵士たちは素朴で情に厚かったよね。
Ｓ 政治とそこに住む人たちは、別々に考えなくちゃいけないですね。
Ｎ もう一つ、忘れちゃいけないと思ったのが「物語」の力かな。新型コロナウイルスの感染拡大で自粛期間中も、随分と「愛の不時着」に助けられたね。
Ｆ ホントに脚本力すごい。見る人を飽きさせない展開でしたよ。
Ｓ 仕事とか生活の疲れを癒やしてくれたのは、やっぱりヒョンビン様だった…。あーやっぱ、この辺りにいませんかね、ああゆう男性。
Ｆ ファンタジーってことを忘れないで笑
（終）

『愛の不時着』勝手に座談会①↓