2020年ブックレビュー『夜のリフレーン』(皆川博子著)
幻想ミステリ―の短編を集めた皆川博子さんの『夜のアポロン』を昨年読み、その完成度の高さと面白さに魅了された。姉妹編ともいうべき、『夜のリフレーン』を手に取った。
一つ一つの物語が後を引く読後感。若い男を蜘蛛の糸のように絡めとる中年女女性を描いた『夜、囚われて……』は、同じ時間軸が繰り返される(リフレーン)ような物語だ。若い男は中年女性の夢の中に生きる「影」のような存在として生きる。結局、実体はどこに存在するのか読者は混乱してしまう。
『新吉、おまえの』は、いつの時代の物語