魂の抜け殻 第12章

通夜の前日


この日は葬儀屋との打ち合わせや、実家に持ち返った父の書類を調べたり、一日中雑用をこなしていた。

僕は妻に電話で、葬儀には参加しなくていい。子供達を頼む様に言った。

葬儀屋担当の方は楽しい方で、暗くならずに相談できた。母と一緒に打ち合わせをしたが、僕も初めての事なので、解らない事はどんどん質問した。用意するものから当日の事、お供えもののお団子の粉まで葬儀屋が用意してくれるから、驚いた。

葬儀屋との打ち合わせは、よく笑った。笑わずにはいられなかった。哀しむ事は許されなかった。だから、笑った。本当の哀しみは「哀しい」と言えない事だ。

それから僕は父の生命保険の確認をした。2件加入していた様だが、1件は途中解約をしていた。もう1件は加入継続している事を確認。続いて消費者金融に電話した。自殺したと解ればどうなのだろう?僕は警戒しながら電話した。驚いた事に借金は消えた。5件借りているうち、3件が消えた。独自の保険があり、借りた本人が亡くなると…そういう仕組みになっている。遺族が支払う事は難しい。借りる人は多い。そして自殺に至る現実も多いのだろう。

借金の金額が減った。少しだけ先が明るくなった様な気がした。


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