魂の抜け殻 第20章

父の呪縛


身体の痺れ、2~3日前から手足唇の痺れ。感覚が麻痺する様で死体を思わせた。これは何だろう。父が何かを訴えているのだろうか。僕にしか解らないやり方で伝えてきたのだろうか。僕に「やれ!」と言っているのだろうか。そうでなければ足止めがある筈。抱えてきた絶望はかなり薄れてきた。

先にも言ったが、両親は僕が小学校低学年の時に別居した。平成11年に父は家に戻った。僕は孫の顔見たさだろうと思っていた。だが、違和感を感じた。何故、気が付かなかったのだろう。

“平成11年”

その年がキーワード。全て繋がる年。父が実家に戻った年。父が借金をした年。父が“死”を意識した年。

平成11年に株式会社の改正により、資本金を増やさなければならなくなった。その為に父は借金をしなければならなくなった。それまで会社経営は順調だった。不況…、父の会社にも負担がかかった。経営が難しくなった。全ては“平成11年”で繋がった。

父の呪縛は解けるのだろうか。僕の身体の痺れはとれるのだろうか。父の死を無駄にしたくない。改めてそう感じた。


#小説



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?