日米金利差とドル円について考えてみる。
今週の日銀決定会合を受けて、日米金利差とドル円について考えてみた。
今週の動き:まず、今回は政策変更や修正なし、緩和姿勢を貫こうとした黒田総裁ではあったものの、後任人事に注目が移っているためいわゆる「レームダック」化してしまっているし、修正の先延ばし感が否めない印象。依然、金利市場は先走っている。ドル円は一旦反発も、同日に発表された指標の悪化からの景気後退懸念やPPI減速でドル安となり、ドル円はいってこいの展開。
今後は日銀の政策修正とFRBの利上げピークとリセッション、利下げ開始のバランスを考えて動かないといけないので舵取りが一層難しくなってくる。
我が恩師、伊藤先生のロイター記事:今年の半ばにYCCの変動幅が0.75-1.00%になるとの見方。YCCの修正から、その後は実際の利上げへと着実に出口に向かうと考えるのは妥当だろう
一方で米国はというと、ここ数日に改めてターミナルレートが5%超えまで上昇するとの要人発言が相次いでいる中、市場は相変わらず景気後退から利下げ期待で米金利は低下中。逆イールドも当たり前の光景になってきた。
無論、為替市場は金利差だけでは説明できず、国際収支などの需給関係も加味しないといけないが、国際収支はある程度ラグを持ってドル円に反映されると見られるため、金利差との相関はドル円の方向感を考察するのには便利なツールである。
FRBの利上げ開始後は短期金利の2年債の日米金利差がボラティリティが高く、昨年を通して急激な円安との相関が強かったが、昨年11月以降の米ドル/円の急落は、日米10年債利回り差である程度説明が可能。
米10年債利回りは、昨年年11月以降、CPIなどの落ち着きやFRBの利上げペース鈍化期待、かつ景気後退懸念も相まって、4.2%程度から3.3%程度まで、1%近くも低下した。一方で、日本の10年債利回りは、昨年12月の日銀金融政策決定会合にて日銀がYCCの修正、具体的には長期金利である10年債利回りの許容上限を拡大したことで急騰。
以下、JPMからお借りしたドル円と日米金利差の比較グラフ。
中長期:ここからはあくまで仮定の話。仮に今後リセッションに突入し、(2024ごろ?)米10年金利が2%台まで下落、JGB10年金利が1%台まで上昇すると仮定すると、金利差約1%程度となる瞬間があってもおかしくない。金利差が1%程度もしくはそれ以下だった景気後退期(グレーの部分)1991年、2008年、2020年の例を見ると、その間ドル円は2020年を除いて20%ほど下落。2020年は、思い返すと未曾有のコロナ禍への対応としてFRB緊急利下げのあと、有事のドル買い需要が凄まじかったためリスクオフの円高に触れたのは一瞬だった。(このように、その時に需給がどう動くかやリセッションあるいは金融ショックの大きさにもよるし、日銀が予想よりも大きく正常化に動くことで今度は債務問題に発展してJGBおよび円売り(いわゆる日本売り)に変化するポイントがあるかもしれない。)
そういう意味では通貨分散は賢明だろうし、その上で為替リスクは常に隣り合わせであることに変わりはない。最近の円安で外貨建て保険やドル建て資産が脚光を浴びているが、トータルリターン(実質利回り)と為替リスクを加味して妙味があるかシミュレーションをして見極めるのが重要。現在128円台だが、向こう数年では100円程度まで下落するリスクが存在することは常に意識しておきたい。
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