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優しさの味

前回のコラムで「優しさ」ってなんだろう?とありましたが、これは、ありふれているのに、難しい問ですよね。
 
私の中で「優しい人」のモデルは、子どもの頃から「風の谷のナウシカ」の主人公のナウシカでした。そのせいか、私の中で優しさはいつも強さとセットでしたね。人に優しくあるためには、強くなければいけない、みたいな。
 
「優しい」を辞書で引くと、①姿・様子などが優美である ②他人に対して思いやりがあり、情が細やかである ③性質が素直でしとやかである。穏和で、好ましい感じである ④悪い影響を与えない。刺激が少ない などとあります。どこにも「強い」要素はなさそうです(笑)
 
今話題にしている「優しい」は②の他人に対して思いやりがあり、情が細やかである、の意味だと思いますが、本当の意味で他人を思いやるとはどういうことか? という問いが出てくるから難しくなるのですよね。相手にとって耳が痛いことでも、相手のためを思って言うのが優しさなのか、相手が言って欲しい言葉で慰めるのが優しさなのか。
 
結局、どちらも優しさだと思います。他人に対しての思いやり、とは他人の状況や心情に思いを巡らせることであり、相手にとっての正解を知っていることではないので。相手のことを細やかに考えて取った言動は全て「優しい」なのです。だから、受け取る側にしてみれば他人からの「優しさ」が嬉しいときもあれば、重いとき、腹立たしいとき、心苦しいときなどがあるのです。
 
そんな、十人十色の優しさですが、もし「優しさ」に味があったらどんな味だろうなぁと想像してみました。
 
私にとって、「優しさ」は、出汁がしっかり利いたお味噌汁のような、じんわりとお腹の中から温まって、心と体の栄養になる気がする味です。見た目のかわいいお菓子とか、こってりした洋食ではなくて、素朴で温かいお味噌汁。
 
先に例を出したナウシカの優しさは、噛みごたえがあって、栄養があって、命をつないでくれる・・・ 干し肉みたいな味でしょうか(笑) いや、食べたことないけど、ここはチコの実かな?
 
失敗して落ち込んでいるときに、失敗を笑い飛ばして励ましてくれる友人の優しさは、爽やかなオレンジかグレープフルーツの味がしそうだし、自分の驕りや怠慢を諌めてくれる先達の優しさは、口に入れたときは固くてゴワゴワして、なかなか飲み込めないけれど、噛めば噛むほど味がでてくる高級なスルメみたいな味がしそうです。
 
世の中には、甘くて柔らかくてふわふわ、の優しさもあれば、良薬は口に苦しと言わんばかりの優しさもあるでしょう。お水のように無味無臭だけど、心身に染み渡る、みたいな優しさもあるかもしれませんね。
 
こうして優しさの味を想像してみると、色々な優しさがあっていいし、その時々で欲しい優しさが違うことも、すっと理解できる気がしませんか。
 
一方で、いつも自分の欲しい優しさをくれる人はなかなか居ないことも理解できるし、自分が欲しい優しさだけを求めることは、結局自分に都合がいいことだけを求めているんだと気づくことが出来ると思います。
 
ときには、良薬も、スルメも、珍味も口にして、人の優しさを味わう舌の肥えた人になりましょう。 
                (M.C)

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