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救いの天使

「ヤバい、どうすればいいんだ?」

というピンチの時に助けに来てくれる人がいた…というお話。

娘が生まれる前、化粧品屋さんでパートをしていた。学生の頃、近所のジャスコの化粧品売り場でバイトをしていたから化粧品の事はちょっとだけ詳しいというのもある。薬局が母体のそのお店は、家族経営で近隣の駅周辺に7つ位店舗があった。その店舗の中でも、私はショッピングモールの中にあるその店舗のレジで働いた。その当時はそのショッピングモールが近隣で1番大きく、土日になると家族連れでごった返していた。50代くらいのマダム達が毎週のように来て、2万円のクリームやらコラーゲンドリンクやら高価めな化粧品を買っていくのだが、どのマダムも私より3歳位年上のパートのBA(美容部員)さんを指名していく。『○○さん(パートのBAさん)は今日いらっしゃる?』とレジの私に聞いていく。そのBAさんがいる日には1人だけではなく、沢山のお客さんがお買い物していくので、1日の売上が2倍位違う。

私もこのBAさんが優しくて大好きだった。

仕事に行った1番はじめの日、5時間の間、誰もレジを交代してくれず、トイレにも行けない状態で辞めようかと思ったり、メーカーから派遣されるBAさんに言われて、スポンジや雑巾を洗うように言われたりしていた時も、社員の人ではなく、このパートのBAさんが気にかけてくれ、休憩させてくれたり、スポンジや雑巾を洗う位自分でやりなさいとメーカーのBAさんに注意してくれた。

初めてお化粧品を買いにきたという高校生の女の子に、「ファンデーションのスポンジは最低週に1回は、台所用洗剤で洗って干す事」や、「化粧水→乳液→美容液→クリームのように、液体~個体になる順番で重ねていく事」等を丁寧に説明していて、最初にこういう大切な事を教えてあげるのがやっぱりBAさんの役割だよな…今まで誰にも教わって来なかったよ…と思った。

その店はまつげパーマや眉カットやエステ等も行っていたのだが、男性のお客さんがレジに来られて、

「男性ですが眉カットとエステの予約をしたいのですが出来ますか?」と来店されたので、

「大丈夫ですよ!空き時間の確認をして来ますのでお待ちくださいね」と言って社員の人に取りつぐと、その社員さんは驚いた事に

「男性の方はお受け出来ないんですよ」

とその方に言った。するとそのお客さんはわなわなと震えて、「店長呼んでください」と言った。

その社員さんが店長を呼びに行くと、想像どおりお客さんは店長に

「男性だからという理由で受けられないなら、ちゃんと明記するべきでしょう!」と怒り、店長と社員さんは「大変申し訳ありません」と謝った。そこへちょうどレジにお会計にきたパートのBAさんが

「やだ、△△ちゃん(社員さん)、今日私来てるんだから今からで良ければエステと眉カット、ご案内出来るわよ。15分コースと30分コースとご用意してますがどちらがよろしいですか?お手洗いが済んでましたらすぐご案内しますね、こちらでおかけになってお待ち下さい。みこちゃん、お茶、暖かいのと冷たいのどちらがいいか伺って、出して差し上げてね」

ここまで、今接客中のお客様の商品を包装しながらである。手際の良さよ。私がお茶を出すと飲み終わる間もなくすぐにそのお客様は、BAさんに30分コースのエステを受け、さらにそのお茶とエステに使った美容液を購入されて、このお店の常連さんになった。

ちなみにこのBAさんが妊娠してお仕事を辞める頃に私の妊娠が分かり、このBAさんの赤ちゃんと私の娘が同じ学年になって、うちに遊びに来てくれた事がある。そうしてうちは旦那の転勤で他県に引っ越す事になったのだが、このBAさんの旦那さんが、私達が引っ越す先の市出身だった事もあり、新しく住む場所の話を聞けたりした。このBAさんは、服飾の学校に通っていたそうで、お別れの時手作りの娘のロンパースをくれた。

このBAさんに関わるみんなが幸せな気分になる。

本当に私の憧れだ。

転勤から戻ってきてその化粧品屋さんに行ってみると、店舗が5分の1位の規模に縮小されていた。周辺の駅の店舗も2つ閉店していた。店長も代わり、社員の人も代わった為もあると思うが、このBAさんが居ないという事がかなり大きいのだろうな…と思った。

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