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【長編小説】真夏の死角61 東北帝国関係者のステータス

 AI考察が本アカでもサブ垢でも続いてきました。小説創作においてAIに何ができて何ができないかは、みこちゃんは完全にわかったと思います。それについてはまた書きますが、ひとつだけ。
 ジェネレーティブAIには一切の小説創作は無理だということ。サブアカを見てもらえればわかるように、みこちゃんはツールとしてのAIという点ではAI礼賛者です。
 しかしながら、AIにはやはり想像活動はできても創造活動はできない。ChatGPTで「小説書いて」と命じて出てくるものは誰がやっても一切小説ではない、と結論を出しました。(③「良い小説」と「いい話」との区別がついていなかったので、ChatGPT君はジ・エンド!
 わかりやすく言えば、「ChatGPT小説です」「ChatGPTで小説書きました」というのは全部何かの冗談だと見做して良いという確信です。ですので私はフォローフォロアー関係の人でもそういう記事は一切読みません。絵師さんのようにAI絵師は敵だというのではないです。敵ですらないくだらないしろものだからです。その確信を持ちましたので、満を持して『真夏の死角』を再開いたします。

前回は、アイデルバーグ、田久保秀明警部、澤田景子、美姫、
槇村慶次が裏カジノに入場した場面まででした。

「これでチップに変えてください」

 美姫が慶次と一緒に奥のカウンターでアイデルバーグにもらった東北帝国の魔球を見せると、タキシードを着た20代後半と見える紳士の目の奥から鋭い本性が垣間見えた。それはほんの一瞬であったが、武道家の美姫にとっては一瞬身構えるような殺気とも言えるものだった。空手の組手で黒帯の高段者と対峙したときに一瞬だけ迸る世界のない奥から裂けて見える普段は封印されている世界をちらっとみて、美姫は緊張した。

 横にいた牧村慶次が一般人には誰も分からないが、同様にいつ攻撃されても対応できるように、臍下丹田に一瞬で気を集中させたのが美姫にはわかった。美姫は沖縄伝統空手四段、そして牧村慶次もまたく極真空手四段の実力者だった。

「少々お待ちください」
 男はそう言って一瞬見せた殺気をこれも一瞬で丁寧に跡形もなく消し去り、柔和な笑顔で一礼して奥に入っていった。二人が並んでいるときにチップ交換は手元で普通にやっていたので、奥に消えた男を訝しく思いながら美姫は慶次と目を合わせた。

「只者じゃないな」
 普段はおちゃらけて美姫にからかわれるのが生きがいのような慶次であったが、戦闘モードを崩していない慶次は、今は別人のようだった。これまでも何度も美姫はこういう牧村慶次を見てきた。
 二人で放課後誰もいない体育館で他流試合で空手の組手をやったときに、何度もこの普段とは別人の牧村慶次慶次を見てきた。そのたびに実は美姫は、心のなかで慶次に男性としてただならぬ魅力を感じていたのだった。しかしいつもそんな自分を持て余し、澤田明宏のことを思い出して、まだ何も始まっていない宏明との間に「明宏ごめん」とまるで浮気を謝るように心のなかでその気持を消していた。
 でも、今はその気持を肯定し始めている自分がいる。あのとき(*下記引用回)からそれは変わった。いったんその気持を肯定し始めると、澤田明宏の存在と同じくらい、いや時には、今のように明宏以上に慶次に惹かれている自分に気がつくのだった。

「オマタセイタシマシタ」
 奥から、わずかに中国語訛の、一見してこのカジノの権力者と思える大柄で腹の突き出た男が恭しく美姫と慶次に頭を下げながら出てきた。

「東北帝国ゆかりの方ですね。今チップをご用意させていただきますので、どうぞこちらへ」

 男はそういうと、先程の若い男に目配せをした。男はうなずいて自分の通常業務に移った。美姫と慶次は体躯のいい中国人がゆっくりと案内する別室に通された。

 いわゆるVIPルームというものらしい。中は超一流ホテルのスイートルームさながらだった。美姫と慶次は促されるままに、腰が沈みそうになるような大きなソファーに座らされた。鼻孔には麝香と思われる典雅な香りがすうぅっと夜這いのように秘事のように忍び込み、二人は後宮にいるような錯覚を覚えた。

 しかし、正面を見るとそこには毛沢東の写真が掲げられていた。二人は一瞬で正気に戻った。何かに自分たちは大きく巻き込まれようとしている……。二人は目を合わせると無言でそれを確認した。


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