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藤沢周平『日暮れ竹河岸(たけがし)』ダイジェスト(英語対訳)12 Fujisawa Shuhei “Takegashi at Sunset” (English Translation)12
藤沢周平『日暮れ竹河岸(たけがし)』ダイジェスト(英語対訳)1212 三日の暮色 一通り年始回りして帰った玉木屋の女房おくには 亭主喜兵衛が 元の奉公先鹿野屋へ 奉公仲間倉田屋甚助に誘われて 出直していることに腹を立てる。「ひとをなんだと思ってるのか・・・」。正月には 店先に 獅子舞い、三河万歳、鳥追い、猿回し等 門付け芸人や物もらいがやってくる。その度、おひねり、餅等を与えるが おぼくれ坊主のとなえ声が響いてきて おくには 耳をそばだてた。それは おくにが18歳の時世帯
藤沢周平『日暮れ竹河岸(たけがし)』ダイジェスト(英語対訳)11 Fujisawa Shuhei “Takegashi at Sunset” (English Translation)11
藤沢周平『日暮れ竹河岸(たけがし)』ダイジェスト(英語対訳)1111 年の市 年の市は 師走十四日、十五日の深川八幡宮の市から始まって、浅草の観音さま、神田明神、芝神明宮、芝愛宕権現、麹町平河天神と続き、江戸の町に近づく正月気分を盛り上げる。おむらは毎年同じ店で買い物すべく浅草寺に向かった。一人息子の宗吉は 嫁のおきくが家を出てから ふてくされ家を飛び出し帰ってこない。「みんな あの女のせいだ」、おむらは、おきくが憎くてたまらない。「こら、まて その二人」、転んで散らばっ
藤沢周平『日暮れ竹河岸(たけがし)』ダイジェスト(英語対訳)10 Fujisawa Shuhei “Takegashi at Sunset” (English Translation)10
藤沢周平『日暮れ竹河岸(たけがし)』ダイジェスト(英語対訳)109 明烏 花魁播磨に入れあげた雪駄屋の新兵衛は 借金で家屋敷を取られることになったことを告白する。分不相応な男の夢が叶った幸せ者で、後悔等していないときっぱり言う新兵衛。春雨の眠ればそよと起こされて乱れそめにし浦里は・・・、新内の声は明烏だった。 10 枯野 夫清兵衛の命日、向島の寺からの帰り、紙問屋山倉屋のおりせは 浅草寺門前の料理屋で男と待ち合わせる。夫清兵衛の女道楽の後始末を頼んでいる同業
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藤沢周平『日暮れ竹河岸(たけがし)』ダイジェスト(英語対訳)9 Fujisawa Shuhei “Takegashi at Sunset” (English Translation)9
藤沢周平『日暮れ竹河岸(たけがし)』ダイジェスト(英語対訳)98 十三夜 お才は、菊蔵の帰りが遅いので、変な噂の事を考えていた。それは、菊蔵の帰りが遅いのは外に女がいるからだという長屋の中の噂だった。 お才はまるい乳房を両手ですくい上げるようにして鏡に映してみた。身籠ると乳首のいろが変わると聞いていたが、 そのしるしはまだあらわれていなかった。胸をよじって乳房を映していると、突然に表の戸があいた。 「おーい、いま帰った。腹へった」 菊蔵の大きな声が聞こえてきた。
藤沢周平『日暮れ竹河岸(たけがし)』ダイジェスト(英語対訳)8 Fujisawa Shuhei “Takegashi at Sunset” (English Translation)8
藤沢周平『日暮れ竹河岸(たけがし)』ダイジェスト(英語対訳)8 7 晩夏の光 おせいは ヤクザな男忠助とかけおちしたが捨てられ、前の亭主伊作が気になっている。ひょっとして、まだ一人だったら・・、元の鞘に収まることだって・・・、伊作を訪ねていくが・・・、後悔しちゃいけないよ、これがあたりまえさ、おせいは胸の中でつぶやく。一つの季節の終わりが見えた。 Fujisawa Shuhei “Takegashi at Sunset” (English Translation)8
藤沢周平『日暮れ竹河岸(たけがし)』ダイジェスト(英語対訳)7 Fujisawa Shuhei “Takegashi at Sunset” (English Translation)7
藤沢周平『日暮れ竹河岸(たけがし)』ダイジェスト(英語対訳)7 6 朝顔 おうのは夫の忠兵衛が取引先にわけてもらったという朝顔を丹念に育てていた。忠兵衛とおうとの間には子供がいない。そして、忠兵衛はそとに妾を囲んでいた。 おうのは、畳表問屋伊原屋の女主人。 三十八歳になるが、まだ夫婦の間に子供がいない・・・。 とは言え童顔で美貌の彼女に対して、 お店の奉公人たちは「天女さま」と呼ぶのだ。 実はその呼び名には、もう一つの意味がある。――― おうのが、若い妾を囲ってい
藤沢周平『日暮れ竹河岸(たけがし)』ダイジェスト(英語対訳)6 Fujisawa Shuhei “Takegashi at Sunset” (English Translation)6
藤沢周平『日暮れ竹河岸(たけがし)』ダイジェスト(英語対訳)6 5 梅雨の傘 懐が寒くなった経師屋清吉には 金の切れ目が縁の切れ目、おちかは手馴れた芝居演技をし、けりをつけようとする。今度は妹女郎おとよの客種物屋の息子松次郎を誘惑、「若旦那」・・・、「おとよちゃんには 内緒よ」 女郎のおちかは金のなくなった男を捨てようとしていた。次のおいしい客をつかまえておかなければ…。そんなおちかの前におとよの客である松次郎が現れた。 Fujisawa Shuhei
藤沢周平『日暮れ竹河岸(たけがし)』ダイジェスト(英語対訳)5 Fujisawa Shuhei “Takegashi at Sunset” (English Translation)5
藤沢周平『日暮れ竹河岸(たけがし)』ダイジェスト(英語対訳)54 つばめ 15歳のおきちは物を掠め取って換金し、寄ってくる新吉、仙太、庄助等子供を見世物小屋に連れていくことに喜びを感じていたが、若い簪職人巳之吉に巴屋で掠め取った簪を見抜かれ、「こういう真似はやめるんだな・・」、忠告される。おきちは巳之吉を訪ねるが・・・、うきうきした気分が裏切られたあとにぽっかりと空虚なものが残った。さっき連れ立って飛び過ぎた2羽のつばめが夕日に背を光らせて地面すれすれに戻ってくるの
藤沢周平『日暮れ竹河岸(たけがし)』ダイジェスト(英語対訳)4 Fujisawa Shuhei “Takegashi at Sunset” (English Translation)4
藤沢周平『日暮れ竹河岸(たけがし)』ダイジェスト(英語対訳)4 3 おぼろ月 おさとはきくえのところに寄って遅くなってしまった。おさとは自分の縁談が決まったことを告げた。きくえは苦労したはずなのに幸せそうだった。おさとは今回の縁談には今ひとつ乗り気でなかった。 遠州屋は、おさとの家よりひと回り商いの大きい店である。一度だけ親たちは、今度の縁談についておさとの考えを聞いたが、その聞きようはほんのおざなりで、これまで何事であれ親の意にさからったことのない娘が、今度の縁
藤沢周平『日暮れ竹河岸(たけがし)』ダイジェスト(英語対訳)3 Fujisawa Shuhei “Takegashi at Sunset” (English Translation)3
藤沢周平『日暮れ竹河岸(たけがし)』ダイジェスト(英語対訳)3 2 うぐいす おすぎは陽気でおしゃべりだった。いつも井戸端会議の中心だった。それが、ある日、例によっておしゃべりを楽しんでいたとき、突然家の中から泣き声が聞こえ、戸口から煙が噴き出していた。火傷を負った息子は助からなかった。 夫の勝蔵におすぎは殴られ、足蹴にかけられた。おすぎは自分でも意味不明の、長い叫び声をあげた。 以来、人が変わったように陰気な女になった。一年後に今の長屋に引っ越した。 夫は少
藤沢周平『日暮れ竹河岸(たけがし)』ダイジェスト(英語対訳)2 Fujisawa Shuhei “Takegashi at Sunset” (English Translation)2
藤沢周平『日暮れ竹河岸(たけがし)』ダイジェスト(英語対訳)2<前半12編紹介>(「江戸おんな絵姿十二景」より) 1 夜の雪 おしづは、途中からその話を上の空に聞き流した。うつむいて火鉢の灰をならした。子供が二人もいる男やもめが、 自分を嫁に欲しがっているという話は、おぞましいとか気持ちが悪いとかいうよりさきに、どこかひとごとのように聞こえる。私には新蔵がいるのに、と思っていた。 信濃屋の次男との縁談が決まりかけたころ、奉公人が一人やめた。新蔵といい、おしづと同年
藤沢周平『日暮れ竹河岸(たけがし)』ダイジェスト(英語対訳)1 Fujisawa Shuhei “Takegashi at Sunset” (English Translation)1
藤沢周平『日暮れ竹河岸(たけがし)』ダイジェスト(英語対訳)1 (あらすじ) かつて「江戸おんな絵姿十二景」という題で雑誌連載され、一月から十二月までの季節に対応した短い話を作り上げるという遊び心のある趣向で書かれたものです。盛りを過ぎた吉原の花魁、自分の不注意で子を亡くしてしまったおんな、嫁入り前の不安な心をもてあます娘…… 前半は作者秘愛の浮世絵から着想を得て、江戸に暮らすおんなたちの心の揺れを描いた12の掌篇(夜の雪、うぐいす、おぼろ月、つばめ、梅雨の傘、朝顔、