見出し画像

地方でのエンジニア採用の難しさを解決?「複業/副業人材活躍の場」とは。

この記事は、2021年6月7日に北海道のIT情報発見!発掘!マガジンmikketa!!に掲載された記事です

2025年の崖、DX推進とエンジニア確保育成

もしDXが進まなければ「2025年以降、最大で年間12兆円の経済損失が生じる可能性がある」との文言が記載された、『DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~』(以下、DXレポート)が、2018年9月に発表され、早くも3年目に突入しました。2025年まで残り4年。2020年12月には中間レポートとなる「DXレポート2」も発表されました。企業でのIT導入は、喫緊の課題でありIT産業では、案件の増加も多く見込めるのではないでしょうか。

ただ、私達が住む北海道では毎年北海道ITレポートでもお伝えをしている通り、64.4%もの企業が、「人材の確保・育成」に課題感を感じていると回答をしています。

「エンジニアの確保・育成」という観点で、入澤会長はこう語ります。

ー入澤:エンジニアや、IT人材はどうしても賃金が高い傾向がありますよね。IT企業が採用するのであれば、給与レンジはさほど問題にならないと思います。しかし、他の業種の場合、その他の職種社員との賃金がどうしても合わないという事になってしまいます。例えば、北海道の企業は、小売やサービス業が多くサービスのユーザーと接点を多くもつ店員と、エンジニアの給料とでは差が大きくなってしまうのが現状です。僕は、そこを一丁目一番地に改善すべき点なのではないかと思っています。もちろん、できる企業と出来ない企業が出るのは当然なので、そういった場合に「複業/副業人材の活用」を視野に入れると良いのではないかと感じています。

複業/副業をすることで、どんな良い点が企業と個人にあるのか

実際に、ITエンジニアやITコーディネーター職の方々への複業/副業案件を、検索サイトで調べて見てみると、週3日勤務で月収41万〜や、50万円といったような案件が沢山出てきます。実際に北海道在住の方で、企業に属しながら複業/副業として、他の企業の案件をサポートするエンジニアの方に、複業/副業エンジニアとして働く良い点をについて聞いてみました。

ーエンジニアAさん:私の場合は大きく2点ですね。1点目は、(本業で生活する為のお金を得られている場合) やりがいや技術的興味を最優先してお仕事を選ぶことができる点。2点目は、 副業と本業、それぞれで得た知見を他方に生かすことで両方の場で自分の価値を高められる点です。

本業の会社では大きな案件を進めることが多く、また若手メンバーがチームメンバーにいることもあるので、大きな技術要素の変更がやりずらいんです。

一方で、副業の方はスタートアップのアプリ開発を支援しているのですが、少し小規模なアプリを開発しています。開発メンバーは僕一人なので、技術要素の変更もスピーディーにできるんです。

特色の違う、本業と副業をすることで、それぞれの経験をもう一方に還元することもできるし、両方の場所での経験で自分のエンジニアとしての市場価値を高める事もできるという点が本当に良い点だと感じています。もちろん、報酬も増えますしね(笑)

ーエンジニア不破さん(エコモット(株)社員 兼 東雲研究所 代表):

複業の良いところは、「お客様の目をしっかり見ながら、お客さんが求めているものを提供出来る」ことだと思っています。

普通の会社では、規模が大きくなればなるほど、エンジニアが直接お客様のところにお伺いする事もあまり無いため、エンジニアが「お客さんが求めている物」を見失ってしまうケースがあります。

しかし、複業では自分1人で営業活動や要件定義・見積作成を行います。

お客様とのやりとりも常に私が出来るので、お客様の目を見ながら自分の判断で提案を行うことが出来ます。

ソリューションの選定も全て自分の判断で行えるため、「お客様が本当に欲しがっている物」を確実に提供することが出来ます。

私はお客様のDX支援をコンサルティングというアプローチで提供していますが、考えている事はシンプルで、「お客さんは何に困っていて、何を欲しがっているのか」です。目の前のお客様が困っている事を直接聞いて、直接解決出来ることが、複業の一番いいところだと私は思っています。

また、自身の会社の社員に複業/副業を推進する入澤会長は、こうも語ります。

ー入澤:副業やる人は、仕事ができる人が多いと思います。起動力があったり、成長意欲がある人は、社内の業務だけではなく、副業も行いながら次から次へと、自分で案件を探していったりするんですよね。そうすると、社内でのプロジェクトを実施する際にも、その動きが反映されたりするんです。複業/副業する人にとっては、金銭や経験というメリットがあると思うのですが、一方で人材を雇用している私達企業側にとっても、ひいてはIT企業全体にとっても、複業/副業人材が活躍するということは良いことなんじゃないかな。と思っています。

入澤会長が言う通り、ユーザー企業にエンジニア人材が副業で参画した場合、一番最初にグランドデザインやロードマップを書き終わることが多いと思います。その次は、書いたグランドデザインを実現するためにプロダクトを作らなければいけません。プロダクト開発に適した人材が社内に居なければ、せっかく業務委託をして作ってもらったグランドデザインも機能しません。そのような場合、ユーザー企業が取れる手段は2つではないでしょうか。1つは、プロダクトを作ることができるIT企業に外注をする。もう1つは、IT人材を採用し内製化を進める。という手段です。

前者の場合、入澤会長が言うようにIT企業全体にとってのメリット=新規案件が増えるという形に繋がり。後者の場合、ユーザー企業でのIT人材採用や業務委託が増え、IT業界の人材のレベルの向上・活性化につながります。いずれにおいても、IT業界やIT業界に属する人材にとって、良い影響となり得ます。

一方で、ユーザー企業においては、DXやIT化を進めたいと思ってはいるものの、北海道や地方でのIT人材の採用の難しさから、中々進められないユーザー企業も多いです。その中で、複業/副業人材の活用は新しい活路となっていくのではないでしょうか。

DXやデジタル人材の複業/副業マッチングサービスも

ITエンジニアやデジタル系人材の複業/副業という流れで、新しい事業を開発する企業も出てきています。北海道でUIターン人材の転職を支援するリージョンズ株式会社(札幌市中央区、代表:高岡幸生)は、今年6月「DXパートナー」という新しいサービスをリリースをされるそうです。事業責任者の八木さんは新事業の「DXパートナー」に関してこう語ります。

八木:昨今DX関連の人材募集について相談をいただくものの、人手不足という背景から、ご紹介につながらなかったり、社長自身DXをどのように進めて良いかわからないといったことがありました。従来の事業である「本州在住の、UIターン希望者を企業にご紹介する」という事業を行っている中で、DX人材が東京に多く、地方にいない。という構造も把握していました。そこで、「DXパートナー」は「東京にいるDXに詳しい方々に複業/副業かつリモートで地方企業のDXを手伝いませんか?」という提案をし、サイトやアプリ上でマッチングをさせる事業です。支援対象となる企業は、DXに取り組もうとしているけれども、中々うまく進めていない。やれていない。というフェーズにある企業です。

複業/副業人材をマッチングするという点と、マッチングのプロジェクト進行管理も含めて専任のコンサルタントがサポートするという体制で、サービスを作っています。人材と企業は、業務委託契約を締結していただき、報酬に関しては当社が間に入ること無く、企業と人材間でやり取りをしていただきます。当社は、企業側が複業/副業人材やDX人材の活用に対して慣れていない場合に、業務の橋渡しですとか、知識面の橋渡し等、メンターのような役割で、有償サポートをしていきます。

現状はサービス初期のため、人材側の募集もまだ始まっていないんです。現在は企業の方々にお声がけをさせていただいている状態です。また、マッチングを行うためのアプリの開発も進めている段階です。アプリは基本的にはノーコードでの開発を実施しています。実際、僕らが現状動かしているこのプロジェクトにも全国各地からリモートで複業/副業人材に入って貰いながら開発を進めています。

将来的には、企業側と人材側の業務委託契約も含め、アプリで人材の募集から、案件へのアサイン、業務の管理まで一気通貫でできるということを目指しています。


2025年まで残り4年。今年「デジタル化」に向けての体制やグランド・デザインを整えられるかどうかが、今後のDXや企業のデジタル化の進み具合に大きく影響を与える1年になります。

複業/副業人材の活用と同時に、自社従業員の複業/副業推奨等、色々と進めなければいけない点は多いかもしれませんが、リージョンズ社の「DXパートナーズ」などの新しいサービスを活用し、一歩ずつ進めていった先に、北海道のIT業界にまた新しい景色が待っているのではないでしょうか。

文、写真:新岡唯

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?