テスト専門会社として、あらゆるソフトウェアの品質を保証する|株式会社GENZ 札幌支店 【会員インタビュー】
現代の生活は、さまざまなデジタル技術に支えられています。パソコンやスマートフォン、タブレット、スマート家電のほか、銀行ATM、セルフレジ、無人決済店舗などがあたりまえのように使えるのは、各種システムが正常に動いているからです。社会の土台ともいえるシステムは、最後の砦となる品質保証(QA=Quality Assurance)をクリアすると世に出ていきます。製品の品質を測るためのソフトウェアテストをはじめ、セキュリティテスト、ストレステストの計画から実施まで、幅広く評価を手がけているのが、「株式会社GENZ(ジェンツ)」。札幌支店の支店長 外山和宏さん、佐藤剛さん、竹花和裕さんが、それぞれの立場からテストについてお話しくださいました。
テストの計画・設計・実施を手がける専門会社
-主な事業についてお聞かせください。
外山 株式会社GENZの主な事業は、ソフトウェア開発における第三者検証です。開発会社の製品の品質を測るため、システムテストをはじめとする各種テストの計画から設計、実施、不具合報告までの一連の業務を手がけています。
テスト対象は、動画配信システム、電気・ガス積算システム、POS系システム、WEBシステムが多く、そのほかにも動態管理システム、SFA(営業支援システム)ツール、決済サービス、ゲームなど。
GENZでは、どんなテストも実施できる体制や設備を整えていて、基本方針は「できない理由よりできる方法を考える」です。とくに強いのは、スマホアプリ検証。新発売の機種を含めて端末をひととおりそろえ、OSも最新のものから何世代前のものまで用意しているので、お客さまのご要望に沿えると自負しています。
-テストはどのように進めるのですか。
外山 テストの工程をおおまかに説明すると——。テスト対象となる製品の仕様書をもとに、Q(Quality=品質)・C(Cost=コスト)・D(Delivery=納期)のバランスを考えながら「計画」を立てます。次に、テスト観点やテスト技法、テスト項目などを整理した、テストを「設計」します。その設計書に基づき、テストを「実施」していくわけです。このとき、不具合が出たらお客さまに報告して、改修されたものをチェックして……というのを繰り返していきます。最終的にバグがなくなったら、品質評価の結果などをまとめた「テストサマリ」をお客さまに納品して、業務終了です。
この工程のなかで、私たちマネージャーは、テスト計画書を作成して、適任者を選んでひとつのチームをつくり、仕事を割り振っていきます。
佐藤 そのあとは、僕たちQAエンジニアが、テストの設計、実施、不具合報告から納品までを担当します。
チームは本社・札幌支店・青森支店の混成なので、ときには、対面ではまだ会ったことのないメンバーと組むことも。また、ひとくちにテストといっても、内容も手法もいろいろ。なので、案件ごとにイチから始める難しさと楽しさがあります。
いま僕がリーダーとして進めている案件はちょっと珍しくて、日本の企業が発注して、アメリカのシステム会社が開発した製品を、インドのテスト会社が検証して、その結果をGENZがレビューするという流れです。いつものテスト業務とは勝手が違ううえに、アメリカ・インドとは時差があり、基本のやりとりは英語ですから、戸惑うこともあります。でも、はじめての経験ばかりで学ぶことが多く、だからこそ、やりがいがあって楽しいです。
ソフトウェア開発を陰ながら優しく支えている
-社名のGENZとは?
外山 GENZの由来は、英語で優しいを意味するgentleです。そこには、お客さまに歩み寄り、お客さまの視点に立って物事を考えなさいという創業者の思いが込められています。ソフトウェアの品質管理は、お客さまを陰ながら支える仕事。なので、ご要望にできるだけ沿えるように、柔軟なサービスをご提供しています。
-GENZは、ひとことで説明すると、どんな会社ですか。
外山 ひとことで言うと、風通しがよく働き方の自由度が高い会社です。細かい服務規定はなく、服装や髪型だけではなく、仕事の進め方、休憩時間や有給休暇の取り方などは、それぞれの良識や裁量に任されています。ガチガチに決められたルールがないため、とくに若い世代には居心地がいいかもしれません。
佐藤 自主性を重んじる会社ですよね。この業務はこのようにしなければいけませんといった縛りがほとんどなくて、アイデアを提案すると、採用されて業務に落とし込まれることも少なくないのです。だから、ポジティブかつクリエイティブに仕事ができますね。
-社員の提案から生まれたモノやコトは?
竹花 いつのまにか部署のひとつと認識されている「開発タスクフォース」は、僕の発案です。もともと開発エンジニアなので、開発は趣味で続けています。面倒くさいと感じたものは片っ端からシステム化しようと考えているようなところがあって、社内で運用している経費精算システムや本社オフィスの入口に設置している受付システムなどもつくりました。
一方では、社員教育を担当するなかで、テストによってはシステム開発の知識があるほうがいいから、実践的に学べる場が必要だと考えていました。そこで、開発に興味のあるメンバーに声をかけて、「開発タスクフォース」をつくったのです。名前のとおり、プロジェクトごとに集まる時限的チームであり、メンバーは変動します。
-開発の知識があるほうがいいテストと、なくてもいいテストがあるのですか?
竹花 例えば、「テスト自動化」といって、プログラムにテストを実行させる手法があります。これを行うためには開発ができるのが望ましいですね。また、サーバやアプリケーションにアクセスが集中したときの挙動を確認する「負荷テスト」、ITインフラやアプリケーションの脆弱性を診断する「セキュリティテスト」なども、開発の知識があるとより効果的にテストを実施できます。
逆に、「スマホアプリ検証」では、開発の知識が邪魔になることも。というのは、スマートフォンのアプリは誰もが利用しますから、ITに詳しくないユーザが使う想定でのテストが求められたりするのです。また、コンビニエンスストアなどのPOSレジやファミリーレストランなどのオーダー端末をテストするときは、それらを実際に使っていた接客経験者がいい仕事をしてくれます。
QAエンジニアの仕事は、開発の知識や経験があるからいいとか、未経験だからできないというものではありません。その意味では、どんな経験も生かせる仕事です。
QAエンジニアの仕事は楽しんで取り組んでほしい
-札幌支店を開設した経緯をお聞かせください。
外山 GENZ設立を機に2020年、GENZの前身企業が札幌に置いていたニアショア拠点から、いまの「札幌支店」に切り替えたと聞いています。その後、2022年、私が二代目の札幌支店長に着任しました。
-札幌支店の体制と役割は?
外山 いま、札幌支店には約30人のスタッフがいます。ほとんどがリモートワークで、オフィスに出社してくるのが、10人くらいでしょうか。基本的には、本社・札幌支店・青森支店ともに体制と役割は同じ。3拠点すべてに品質管理グループに所属するQAエンジニアがいて、案件ごとにチームを組んで、さまざまなテストを手がけています。
強いて違いを言うと、ひとつは、本社には営業チームがあること。受注した案件を取りまとめて、品質管理グループに仕事を割り振っています。もうひとつは、札幌支店には、技術推進グループがあること。その部署を立ち上げ、運営しているのが、マネージャーの竹花です。
竹花 技術推進グループのメイン業務は、社員教育です。GENZに入社すると、入社時オリエンテーションのあと、「未経験者研修」もしくは「経験者・テスト設計者向け研修」を受けてもらいます。主な講義内容は、「テストとは何か」「何のために行うのか」というテストの概要から技術、実施のコツなど。そのあとは、QAエンジニアとして、実地で学んでいくことになります。
2023年度、GENZとしてははじめて新卒採用を行い、今年4月、本社に5人、青森支店に2人が入社しました。仕事にも会社にも早くなじめるようにと、本社の意向でメンター制度を取り入れました。一人ひとりに先輩社員がつき、マンツーマンでサポートするため、業務への心配ごとや新しい環境への戸惑いなどがうまく解消されているようですね。成果があったので、いま、中途社員や既存社員も適用する方向で調整しています。
-札幌支店らしさとは?
外山 社内の雰囲気が良くなるように心がけていて、お互いが気にかけ合えるような環境づくりを意識しています。
佐藤 楽しく仕事ができる環境って、大事ですよね。僕も、チームの雰囲気づくりには気を遣っています。とくに未経験だと、周りの人たちがテスト業務を次々とこなしていくのを見て、不安になってしまうことがあります。そのとき、自信をなくして、仕事がつまらないと思ってほしくない。楽しんで仕事をしていれば、能力はぐんぐん伸びるものですから。しかも、楽しさは周りにも伝播していって、チームが明るく前向きになり、その結果として成果も上がります。
竹花 異業種からの転職者が多いこともあり、研修でもよく話すのが、テストどころかITが全然わからなくても自信をなくさなくていいよということ。「ITには詳しくない人」という立場でのテストができますからね。そもそも、GENZが取り扱っている製品は幅広く、テストも多岐にわたるため、ベテランのQAエンジニアでも学び続けなければいけません。なので、わからない、できないと嘆かなくてもよくて、仕事は毎回イチから覚えて、一つひとつ身につけていけばいいのです。
北海道のソフトウェア品質保証に貢献していきたい
-札幌支店のこれからの展望をお聞かせください。
外山 これまでは、GENZの営業体制上、東京の仕事が多く、北海道はニアショア拠点として稼働していました。でも、せっかく札幌支店があるのだから、これからは、北海道の同業者とつながり、そのニーズに応えていきたいと思っています。そのための第一歩として、北海道IT推進協会に入会したのです。ありがたいことにさっそくご相談くださった開発会社のご担当者も。いろいろとお話を伺いながら、テストをまるっと専門会社に外注するメリットはもっと訴求していくべきだと実感しました。そのほうが、結局はトータルのコストが安く抑えられることもありますから。
佐藤 近年は情報セキュリティ意識が高くなっていて、「セキュリティテスト」の仕事も増えてきました。今後はさらに需要が高まるとにらんでいます。そういう時代にあっては、第三者による「このソフトウェアは安全です」という評価は、開発会社への信頼につながるのではないでしょうか。ソフトウェアによっては、小さな不具合が人命にかかわることもあるので、テストの重要性はもっと知られてほしいと思っています。
外山 テストに悩みを抱えている方々は、まずご相談ください。GENZの強みは、小回りが利くこと。例えば、テスト業務に多い「人月」単位ではなく、「人日」単位での契約ができます。なので、「テストの一工程のみ、数日間で実施する」という案件も。コストを抑えられるので、利用しやすいかと思います。また、開発にはつきものですから、スケジュールの変更にも柔軟に対応できるようにしています。もちろんこれまで培ってきたスキル・ノウハウもありますので、テストの上流工程からテスト実施、またセキュリティテストや負荷試験、テスト自動化まで、どんな小さなご相談でもご対応させていただいております。
銀行ATMにトラブルが発生したり、サイバー攻撃による情報漏洩の可能性が明らかになったりすると、大きく報道されます。そのときに取り沙汰されるのが、システム障害やセキュリティの脆弱性などです。しかし、多くのシステムは正常に動作し、サイバーセキュリティ対策は有効に働いています。ニュースにはならない「あたりまえ」を支えている企業のひとつが、テスト専門会社GENZなのです。これからも縁の下の力持ちとして、いろいろな経験を積んだQAエンジニアたちが、ソフトウェアの品質を保証していきます。
(取材日2024年5月20日/北海道IT推進協会 広報委員会、ライター 一條 亜紀枝)