見出し画像

NFTまとめ②:NFT作成から販売、そして課題

前回のノートでは、NFTの歴史といくつかのプロジェクトの紹介をしましたが、今回はNFTを作成してから販売するまでの流れと、その中で浮かび上がってきた課題について書きたいと思います。

NFTの作成から販売(概要)

イーサリアムブロックチェーンを利用したNFTの作成から販売までのフローを説明します。後述しますが、イーサリアム以外のブロックチェーンを利用した場合や、NFTマーケットプレイスが独自機能を提供しているため、一般化するのは難しい部分もありますが、大枠は以下の図のようになります:

画像3

① NFT作成

この例では、犬のデジタルアート画像をNFT化する例を取り上げています。画像を例として上げていますが、音楽や動画など様々なデジタルコンテンツをNFT化(代替不可能なトークン化)することができます。

実は、トークン化の前に暗号通貨のウォレットをセットアップしておく必要があります。例えば、Coinbase Wallet, MetaMask, Rainbowは、NFCで利用されているERC721(ERC721については前回のノートを参照)をサポートしています。ERC721をサポートしているウォレットであれば、以下のCoinbase Walletのように、NFCアセットを画面上に表示することができます。

画像3

Coinbase Blog 'A brand new look for Coinbase Wallet'より

そして、アートをNFT化するのに必要な手数料(イーサリアムでは”ガス”と呼ばれています⛽️)を支払う(後述)ために必要なイーサを購入するために必要な決済情報などを入力しておきます。

ウォレットの準備ができたらいよいよNFTの作成です。OpenSeaでNFTを作る場合の手順がこちらに書かれていますが、基本的には、メディアファイルと各種情報(作品名、説明文章、同一アートでいくつNFTを作成するか等)を入力するだけです。

② 出品

一旦デジタルアートをNFT化すれば、OpenSeaのようなマーケットプレイスでは比較的簡単にマーケットプレイスへ出品できるようになっています。販売方法は、マーケットプレイスによって異なりますが、クリエイターが決めた販売額もしくはオークション形式で販売することができます。必要な情報の入力が終わったらいよいよ出品ですが、多くのマーケットプレイスではこの段階で、新たなNFTをイーサリアムブロックチェーン上に作成するための手数料「ガス代」を払う必要があります。クリエイターは前述のウォレットから必要なガス代を支払います。

OpenSeaのマニュアルによるとガス代の目安は、ドル換算で$2-$32で、イーサリアムブロックチェーンの混雑状況によって上下します。混雑している(ネットワークへ書き込みたい人が多い)ほど、ガス代は上昇します。

このガス代がネックとなり、低価格のNFTが作成しずらかったり、売れるかどうか分からない段階で、クリエイターが事前にガス代を負担しなければならいといった課題があります。

③ コレクターによる購入

イーサリアムブロックチェーンを利用したNFTの場合は、ほとんどが支払いはイーサを含む暗号通貨となりますので、コレクターもウォレットを用意し、必要な暗号通貨を準備しておく必要があります。

④ 購入処理

マーケットプレイスは、当該NFTの所有者をクリエイターからコレクターへ移動します。また、コレクターからクリエイターへの支払いのトランザクションをブロックチェーン上で発生させます。ことのき、マーケットプレイスは支払額から手数料を徴収します。OpenSeaの場合、新規NFTに対しては5%を徴収します。

この購入処理が終われば、NFTはコレクターが所有するアセットとなり、コレクターのウォレット内に表示されます。

課題

NFTのエコシステムを見ていて課題に感じていることがいくつかあります。既にソリューションが開発されている場合もありますので、そちらも合わせてご紹介します。

メディアファイルの扱い

コレクターがマーケットプレイスで買ったデジタルアートのメディアファイルの現物って一体どこに保存されているのでしょうか?デジタルアセットは、コピーや改造、削除が簡単にできてしまうので不安ですよね。ちなみにですが、メディアファイルは、容量が大きすぎてコストがかかり過ぎるためイーサリアムブロックチェーン上には保存されません。マーケットプレイスのシステムへメディアファイルをアップロードできる機能があるのですが、競争激しいNFT業界でどのマーケットプレイスが生き残るか分かりませんし、クリエイターのファイルサーバーやWEBサイトに置かれたままになっていても困ります。

そこで注目されているのが、IPFSです。IPFSは分散型オープンファイルシステムで、耐改ざん性、耐障害性、耐検閲性、負荷分散などの特徴があります。とりわけ耐改ざん性・耐障害性によって、一旦IPFSに保存されたファイルは理論上はオリジナル版が永久に保存されることになります。IPFSを簡単に使えるようにしたPinataというサービスもあり、OpenSeaにも対応しています。ただし、IPFSにデータを保存しておくにもコストが掛かります。NFTがいろんなコレクターの手に渡っていくなかで、オリジナルのメディアファイルの保存を確実にするために誰が保存コストを払い続けるのかといった課題は残っています

ガス代⛽️

こちらは、NFTをイーサリアムネットワークへ書き込む時の手数料として前述しました。NFTの売買の記録を書き込む際にも必要です。

イーサリアムネットワークを利用する上では必要な対価ですが、クリエイター達からは、ガス代って何?なぜ金額がすごく変動するの?いくらに設定すればいいの(多く払うほど処理の優先順位が上がる値があります)?誰がガス代を負担すべきなの?ガス代無しでNFTを売買する方法ってないの?といった疑問🤔 がネットやクラブハウスでも数多く話し合われており、NFTが一般に普及していく上での大きな障壁になっていると感じます。

ガス代問題をスタートアップはいくつかの方法で解決しようとしています。例えば、マーケットプレイスによっては、購入者が現れるまでNFT化の処理を遅らせる対応をとっています。また、NBA Top Shot は、Flowというイーサリアムではないブロックチェーンを利用しガス代を下げています。一方Sorareは、イーサリアムブロックチェーンを利用しつつ、ゲーム内でのサッカープレイヤーカードのトレード時のガス代をユーザに課金していません。(イーサをSorareのゲームウォレットへ移動する際にはガス代が必要) また、ガス代はNTFに限らずイーサリアムブロックチェーンを利用するエコシステム全体の課題でもありますので、Layer 2を始めとする新たな技術が開発されています。

取引のメインは暗号通貨👽

NFT資産の記録にイーサリアムブロックチェーン、売買通貨にイーサを利用していることによって、ガス代やイーサの価格変動問題、暗号通貨ウォレットを持つ必要などがでてくる訳ですが、NFT資産と支払い通貨を分けて考えることによってユーザにとってより使いやすいサービスを構築することができます。例としては、NBA Top Shotは、NBAプレイヤーカード資産の記録にはFlowブロックチェーンを利用していますが、支払いは全てドル建てクレジットカードとなっています。Sorareもサッカー選手のトレーディングカードを買う時にイーサに加えてユーロでも支払うことができるようになっており、サッカー選手カードの所有権はイーサリアムブロックチェーンに記述されています。

画像3

Sorareで買えるKazuyoshi Miura選手のカード(€618.73)

NFTで永続的な所有権を補償しつつ、支払い方法で工夫をし、全体としてどのようにサービスをデザインしていくかということはマスに広げていく上では重要になってきます。

透明性

これは、ブロックチェーンの最大の特徴の1つであるため、課題とは言ってしまうと元も子もないのですが、パブリックブロックチェーン上のトランザクションは誰でも見ることができます。例えばこちらのNFT Marketplacesを見ればどのマーケットプレイスやゲームでの過去24時間、7日間、30日間、全期間での取引ボリュームや取引人数を見ることができます。会社によっては、経営状況と直結していく可能性があるため、NFTへの進出に二歩足を踏む企業も出てくるかもしれませんし公開企業であれば情報開始の点で工夫が必要になってくるかもしれません。

結論

暗号通貨ファンから始まり、ここ数ヶ月でスポーツ選手カードやファンタジースポーツ、さらには有名な音楽アーティストの参戦などで注目度が上がっているNFTですが、今後より多くのクリエイターが参加する永続的なプラットフォームとなっていくか、技術の進歩も合わせて見ていきたいと思います。

この記事が参加している募集

最近の学び