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オンラインでの窓口予約導入に向けて

私は地方公務員ですが、私が担当している業務に限定して、2024年3月からオンラインでの窓口予約を導入しようと準備を進めています。人口減少・供給制約の時代を本格的に迎えるにあたり、これまでどおり「いつ来ても誰かが対応してくれる」という昔ながらの役所の窓口のイメージを払拭していかないといけないと思っており、2023年に導入に思い至ってから今日までのことを振り返りたいと思います。


オンライン予約導入検討期

導入を考えたきっかけ

窓口を予約制にしてはどうかと考えるようになったのは、夏に修正申告のために税務署を訪れたときのこと。税務署では完全にオンライン予約のみとなっており、当日に飛び込みで窓口に行こうと思っても完全に拒否されるということを知ったからでした。「次に予約が取れるのは2か月後です」と言われたときは心底驚きました。

自らの業務との親和性

「実際に予約制にしている役所がある」ということを目の当たりにし、それなら今私が関わっている業務でも導入できるのかどうかを考えてみたところ、保育所関係の手続きはかなり親和性が高いことが判りました。

例えば障がい者手帳関係の新規手続きであれば、急な入院と手術が決まって、手術までに役所の窓口で手続きを済ませないといけないといった事例が実際にあります。が、保育所の新規申込みなどは申し込む時期が自分で決められるため、突然役所に行かないといけなくなった、ということにはなりません。

オンラインとの相性

また、保育所の申込を考えている方の年代としては20~30代がメイン。これまで窓口で対応してきた経験からすると、「電話番号」欄には携帯電話番号を書く方ばかり。持っているのもガラケーではなくスマホがほぼ100%。こういった状況を踏まえると、オンラインで窓口を予約してもらうということはかなりやりやすいのではないかと見積もることができました。

デメリットの検討

スマホを持っていない人は?

とはいえ必ず出てくるのが「スマホを持っていない人はどうすればいいのか?」という質問。効率性を高めたい反面、役所という組織の性(さが)で「誰も取り残さない」という理念は維持しないといけません。

これについては個人的に「まあそういう人もいるかもしれない」程度で考えています。と同時にこれに対してはきちんとデータをとることも必要で、私の場合は運よくコロナのおかげで一部の業務でオンラインによる予約が必須となっており、この時に「スマホを持っていない」という人がどれくらいいたのかというデータをとることができました。

詳細にデータを積み上げたわけではありませんが、シンプルに「スマホを持っていない」というクレームがどれくらい来るのかを数えてみることにしました。その結果、そういったクレームはゼロでした。これは上司を説得するのには非常に強力でした。

「そもそも予約が必要」ということを知らない人が来たら?

これも検討しておかないといけない事態です。これについては2つ対処すべきことがあると思っています。具体的には「事前の対応を入念にする」ことと「腹をくくる」こと。これについて順番に書いていきます。

オンライン予約導入に向けた準備

事前の対応を入念にする①:段階的な導入

とにかく「予約が必要」というキーワードを浸透させることに意識を向けました。また、いきなりオンラインでの予約にするのではなく、「予約制にする」→「オンラインでの予約制にする」という2段階で進めることにしました。

事前の対応を入念にする②:紙に書いて配る

行政の世界ではホームページに載せた段階やポスターを作成した時点で周知が済んだという理解をすることが多いですが、これではまだまだ足りません。みんながよく知っているiPhoneですら、莫大なお金をかけて商品の宣伝をしているというのに、なぜか行政は周知にコストをかけていないように感じます。

そこでことあるごとに「予約が必要」ということを書いた紙を作成し、来庁者に渡すようにしました。また、個別に手紙や通知を送る方に対しても必ず案内文を同封しています。「予約が必要」という情報が届くよう、なるべく文字数を減らしたものを配っています。

ちなみに1月末に来年度の一斉入所申込者への結果通知をお送りする予定ですが、そこでも案内文を同封するべく準備を進めています。

事前の対応を入念にする③:最初に「予約していますか?」

また、窓口にお客さんが来られた場合には、開口一番「予約していますか?」と聞いてもらうことにしました。お客さんからすると「え!?予約が必要なの!?」と驚かせることになるかもしれませんが、何かを始めるときには避けて通れない部分かなと思います。

腹をくくる①:予約なしの不利益を明示する

これは今後作成する案内に入れ込んでいく予定ですが、想定QAを作成し、「予約なしの場合はどうなりますか?」という質問に対して「予約なしの場合は後回し、最悪お帰りいただく」という趣旨の案内を作成しています。これをいかに一人でも多くの人に浸透させていくかが勝負だと思っています。

腹をくくる②:組織内での共通認識

また、「最悪お帰りいただく」ということについて、それを案内しないといけない場面がありうるということを組織内で浸透させていくことを進めています。幸いなことに私の職場では一番トップの方が私の意見に賛同してくださっており、窓口を予約制にすることについてはGOサインが出ている状態です。

腹をくくる③:最後は自分が矢面に立つ覚悟

そして最後に発案者である私自身が最後は矢面に立つ覚悟を持たないといけないと思っています。どれだけ入念に準備したとしても、いきなり100%問題ないという状態にはなりません。とくに役所は何かと頼りにされる存在であるがゆえに、その期待を裏切られたと感じたときの反動も大きいもの。新しい取組に対するクレームが出てきた際には、自分自身が矢面に立つ覚悟を持って、オンライン予約を進めていこうと思っています。

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