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精神論じゃなくて「サービス」を分解して考える

「サービスを向上してほしい」と先輩や上司から言われて困ることはないですか?私は困りました。自分がサービスを提供する際は、何となくこうすればいいかな?というものがありながら、チーム全体を向上させるため人にそれを伝えるのは難しい。

サービス業は相変わらず伝承と直感、気合いで運営されている
(「顧客はサービスを買っている」より引用)

この言葉にはホテルの現場で働いている身からしても納得する内容です。では、どうれば精神論ではなくサービスを、そして顧客満足度を向上できるのか…上記書籍が考え方をわかりやすく教えてくれたので、本の内容を紹介しつつ、「いかにサービスを向上させるか」について考えてみたいと思います。(この本はおすすめ)

実はあれもこれもサービス業

私の仕事である、ホテルの仕事はサービス業のど真ん中といえると思います。ですが、実はサービス業は幅広い。経済産業省の業種一覧表〔*1〕では宿泊業・飲食業をはじめ、教育・学習支援・医療・福祉や、経営コンサルタントから広告代理店、宗教まで約450種類がサービス業とされています。

そんな幅広くて多くの人が関わるサービス業なのに、精神論的に運営されていることが多いというのはデメリットも多いのでは?と思い、個人の学びを記事にしようと思いました。なので、「もっとこんな方法があるよ!」とか「こうしたら良い影響があったよ!」という内容がありましたら教えていただけますと喜んじゃうよ〜〜ふぅぅぅう↑↑

サービス業を分類する

サービス業をまずは分類することで、どのようなものが求められているか気づくことができます。「手順型と気づき型」「ロースキル型とハイスキル型」という分類軸で分けるとこのようになります。

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例えば、ハイスキルかつ手順型の保守サービスなのに、特別な訓練やマニュアルがないとサービスが成り立ちませんし、逆に居酒屋でスタッフの方がマニュアルに書かれている事しか話さないとなると「マニュアル通りで温かみがないな」という印象を与えるでしょう。

自身が携わる仕事が分類の中でどこに位置しているのか、だからこそ何が必要かは掴んでおく必要があります。

感動を呼ぶサービスはマニュアルの土台の上に築かれる

ホテルで働いているとよく耳にするのは「感動的なサービス」という言葉です。きっとリッツ・カールトンのマニュアルにはないような対応のエピソードはホテル業界でない方も聞いたことがあるかもしれません。私自身、以前はマニュアル通りの接客では感動してもらえない=マニュアルはそんなに必要ではないと思っていました。


そこから約1年経て変わってきた考えがあります。それは基礎的で誰もが必要としているサービス(接客含む)を抑えていないとその先に進めないということ。ホテルでいうと安全性や清潔感、ベッドの寝心地の良さなど最低限求められることがあります。いくらスタッフのサービスがよくてもベッドで寝ようと思ったらシーツが謎にチョコレートまみれだと「ちょっと待てぃ!」と千鳥の相席食堂みたいになります。ボタン連打です。

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↑THIRD石垣島の佐々木さんがビシッと分かりやすく書いていた

マニュアルがなくても抜群の接客ができる人はいます。今までの経験から「これはNGだな」というコミュニケーションを肌感覚で抑えている人や、相手がどのような気持ちになるか想像しながら言葉を上手く選ぶ人などは上記の図でいう”標準サービス”が接客において身についているので、その先のワン・トゥ・ワンサービスまで持っていくことできます。

ですが、すべての人が接客モンスターではないので、マニュアルを具体的に用意することで一定のレベルを担保できるようになります。TRUNK (HOTEL)ではマニュアルがない〔*2〕とのことですが、”ちゃんと抑えている人”を採用の時点でしっかり選んでいるからこそ実現していることなのでは?と思っています。

サービスの提供プロセスを分解する

標準サービスを提供する上でマニュアルが大切なのはわかった!次は具体的にどうするかですが、サービスの提供プロセスを分解しましょう。ホテルではある程度、サービスの提供プロセスが決まってきます。私が働いていた、HOTEL SHE, KYOTOを例にしてみます。

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① 来館

② チェックイン

③ 客室へ移動するためにエレベーターに乗る

④ 外出する

⑤ ホテルに戻ってきてアイスクリームやドリンクを注文する

⑥ 客室でレコードを聴くためにフロント横のラックでレコードを選ぶ

⑦ 翌朝、朝食を食べにロビーに降りてくる

⑧ チェックアウトしてホテルを出る

みたい感じで、ゲストの大まかな動きを分解することができます。その各項目で「何をゴールにするか」「どのような声かけをするのか」「どのような情報を提供するのか」を決めます。当ホテルでは美味しい〜美味しい〜アイスクリームを提供しているのですが、ゲストがどれにするか迷っている時を例にしたいと思います。

【 何をゴールにするか 】
アイスクリームをスムーズに注文していただく

【 どのような声かけをするのか 】
「10種類フレーバーがあるのですが、どのような味がお好きですか?」

【 どのような情報を提供するのか 】
・人気のフレーバー
・個人的におすすめのフレーバー
・おすすめのアイスとドリンクの組み合わせ

みたいな感じで、ある程度決めておくことで何を言うか迷うことなくコミュニケーションすることができます。(声かけで「相談乗ります!」と勢いよく言ったら盛り上がったこともあったヨ)

上記のような内容をサービスの提供プロセスの各項目で決めることで、ホテル側の知っていただきたい情報を伝えつつ、ゲスト側もよりそのホテルを楽しむことができます。今回は①〜⑧と大まかにしましたが、どのようにお会計するか、どうドリンクを提供するかなどより細かく設定すると良いでしょう。

ユーザーの事前期待に適合するものが「サービス」


”旅館のご飯が多い問題”がTwitterで大きく話題になりましたが、「顧客はサービスを買っている」の中でサービスの定義がありました。

人や構造物が発揮する機能で、ユーザーの事前期待に適合するものを「サービス」という。
(「顧客はサービスを買っている」より引用)

つまり、ユーザーの事前期待に適合しなければ、いくらユーザー(ホテルでいうとゲスト)のことを想っての行動でも"サービス"にはならないということです。よく、「サービスか余計なお世話の違いは?」という話になりますが受け手がどう感じるかがすべてということです。

極端な例ですが、出張利用のゲストにおすすめの観光地を詳しく伝えても迷惑になる可能性は高く、それよりかは目的地へどのような交通手段を利用すれば最速で到着できるかなどを伝えた方がありがたいはず。どのような事前期待があるかについては、直接コミュニケーションをとって情報を集めて仮説を立てていくしかありません。

事前期待には様々な内容があります。同書の中ではユーザーの事前期待の持ち方には4種類あると書いています。

① 共通的な事前期待
② 個別的な事前期待
③ 状況で変化する事前期待
④ 潜在的な事前期待

このように、4つの事前期待にそれぞれ適合したサービスを提供することでユーザーの気持ちは変化してきます。

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例えば、以下のような内容です。

【 ① 共通的な事前期待 】
清潔感のある客室

【 ② 個別的な事前期待 】
こだわりのアメニティがあった

【 ③ 状況で変化する事前期待 】
好きなジャンルの音楽のレコードを会話をしながらその場で選んでくれた

【 ④ 潜在的な事前期待 】
翌朝、好きなアーティストのライブが近日あると教えてくれた

顧客満足度を向上させるためには、ゲスト一人一人の事前期待を把握しつつそれに適合するサービスを提供する、さらには潜在的に求めていることも仮説を立てて行動することが重要になります。正直、めっちゃ難しいですがそこが面白いところでもあります。

サービスの要素分解と事前期待のコントロールが重要

サービス業は失点をなくすことと得点を増やすことが重要と言われています。失点とはお客様を怒らせない、失望されないようにする。得点はお客様の期待に応える。さらには期待以上のサービスを提供するということです。

この両輪が必要で、失点はないけど得点もなければ記憶に残りませんし、得点がたくさんあっても一つの失点ですべてを台無しにすることも。両輪の改善は個人で達成できることは少なく、チームや会社全体で取り組む必要があります。

その時に大切なことが「サービスの要素分解」と「事前期待のコントロール」です。要素を分解して一つ一つ言語化していくことで複数の人と考え方を共有できますし、ユーザーの事前期待を把握することでその期待値を超えたサービスを提供できます。

私自身、今までは感覚的にサービスを提供してきていたので、今回ご紹介した本が考えと経験を整理するのに役立ちました。同じような課題を持っている方にはおすすめの内容です!紹介した内容はほんの一部なので、気になった方はぜひご一読ください…!

📝

※記事内の図は上記の書籍の内容を元に作成しました

〔*1〕業種一覧表
https://www.chukei-news.co.jp/publication/chubunenkan-regist/type.pdf

〔*2〕マニュアルで縛らない、TRUNKの人事戦略
https://www.trunk-base.com/trunkers-talk/column/02/

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