ラグジュアリーホテルのラグジュアリーとは何か
ハロー2024年。昨年は幸運にもさまざまなことにチャレンジさせていただいた1年でしたが、余裕がなかったのか文章をあまり書かず、生活の記録がなかったなと悔やんでおりました。今年はたくさん文章を書きたいぞと思い、筆をとった次第です。
年末にこの本を読んだことから、改めて「ラグジュアリーってなんだろう?」と考えるきっかけになったので、思考を整理したいと思います。
結論から言うと、ラグジュアリーホテルのラグジュアリーとは「現時点の自分の生活とはかけ離れた、希少価値のある体験を伴ったもの」というのが自論です。なぜそのように考えたのか、順を追って書いていきます。
ラグジュアリーホテルのイメージ
「ラグジュアリーホテル」という言葉を聞いてあなたはどのようなホテルをイメージするでしょうか。私は今でこそ宿泊業界に入って5年も経ち、仕事でもプライベートでもさまざまなホテルに泊まってきたのでその言葉の多様性をある程度理解していますが、偏った印象を持っていました。
街中にあり、インテリアも煌びやか。マリオット・インターナショナル系列の『W』のような雰囲気や、方向性は全く違いますが、改装に4年の月日と約460億円をかけた『Ritz Paris』のような歴史ある厳かなホテルです。
もちろん、今でもこれらのホテルはラグジュアリーホテルブランドとして確固たるものですが、近年において勢いがあるのは独立系の小規模なホテルという印象です。(あくまで個人的な印象ね)
『Small Luxury Hotels』という独立系のラグジュアリーホテルが加盟する組織がありますが、そのInstagramをみるとイメージしやすいと思います。
都市部のホテルも含まれていますが、美しい自然の中にある施設が目立ちます。豪華絢爛というよりは、その土地の魅力を体感できる場所。
この違いから、ラグジュアリーホテルとは?そもそもラグジュアリーとは?という疑問が浮かんできます。
ラグジュアリーとプレミアムの違い
まずは混同しがちなラグジュアリーとプレミアムの違いについて述べることで、ラグジュアリーの輪郭を掴みたいと思います。この違いについては、『新ラグジュアリー』でも登場します。
この書籍では比較級と絶対級の違いを超えた内容に踏み込んでいるのですが、一般論を紹介する目的のために省きます。
西野亮廣氏も『世界で一番楽しい学校~SA-CUS~』というイベントで「プレミアム」と「ラグジュアリー」の違いについて講演を行なっています。ラスベガスのベラージオ ホテルのエピソードを元にプレゼンをされているのでホテル業界の方は興味深く聞けると思いますので未視聴の方はぜひ。
プレゼンの中では「プレミアム」と「ラグジュアリー」というのは全然違って、「プレミアム」というのが「競合がいる中のNo.1商品(上位商品)」で、「ラグジュアリー」というのは「競合がいない商品」と言っています。
一見、プレミアムの究極としてラグジュアリーがあるような気がしますが、実際は全く違うものということは要点として理解しておきたいところです。
『ラグジュアリー戦略』という書籍で「マーケティング逆張りの法則」という18の法則が述べられています。この内容がプレミアムや一般的なマーケティングとの違いが際立つので紹介いたします。
どれも興味深い内容ですが、これらの法則を見て真っ先に頭に出てきたホテルブランドはアマンリゾーツでした。エイドリアン・ゼッカ氏が創業した同ホテルは世界中にアマンジャンキーと呼ばれる熱狂的なファンを生み出し、独特なブランドポジションを確立しています。
プレミアムで考えやすいのが、『ドーミーイン』です。そう、あの夜鳴きそばで有名なホテル。(私はドーミーいんこのLINEスタンプも使っていますよ)
ドーミーインには『ドーミーインPREMIUM』というプレミアムラインがあります。私が住んでいる長崎にもドーミーインPREMIUMがあるのですが、素晴らしいサービスでした。チェックインの際にウェルカムフルーツとしてメロンとオレンジが出てきましたし、大浴場のシャワーヘッドは全てReFaとハード面とソフト面においてプレミアムです。
ですが、これはあくまで通常のドーミーインと比較するところの上位互換であり、唯一無二として素晴らしいということではありません。雑誌の『&Premium』も読者の生活の延長線上でのプレミアムであり、ちょっと先にある理想を提案するライフスタイルマガジンだと言えるのではないでしょうか。
ラグジュアリーホテルとは
中世・ルネサンス時代、王侯・貴族が社会の頂点だったこの頃は、ラグジュアリーは経済的な余剰の誇示と社会階級を明確にするための手段でもありました。衣装や建築は豪華で、中産階級以下はラグジュアリーを禁止するほどの徹底ぶりです。彼、彼女らが政治的に支配するべく社会秩序を守るためにラグジュアリーを用いました。
紳士服におけるフォーマルウェアの煩雑なルールは19世紀半ばのイギリスで生まれました。お金を持っているだけではダメで、服や小物などを場所や機会によって正しく扱える知識とマナーを持っていることが真のラグジュアリーであり、豪華なものをもつだけで認められる社会ではなくなっていきます。
とはいえ、何がラグジュアリーかはある一定の階級の人たちが一方的に植えつけた思想だと言えます。現代における「何が良いか」の価値観は多様化しています。私がホテルを選ぶ際もその価値観はさまざまです。
シティホテルに泊まって、朝に届く新聞の新鮮さに喜ぶ時もあれば、大自然の中にあるリゾートホテルで朝日にあたりながらコーヒーを味わう場合も。私にとってラグジュアリーはそういった瞬間の中にあり、煌びやかなインテリアの中にラグジュアリーを見出せないこともあります。
ラグジュアリーホテルのラグジュアリーとは「現時点の自分の生活とはかけ離れた、希少価値のある体験を伴ったもの」である。と冒頭に述べましたが、その意味がここにあります。
今後のラグジュアリーホテルを考えてみる
「世界のベストレストラン50」と「世界のベストバー50」の創設者らが昨年初めて世界のベストホテル番付を発表しました。
第1回の首位に輝いたのはイタリアのコモ湖にある『パッサラクア』という、客室数24室の小規模ホテルです。18世紀の建物で、フランス皇帝ナポレオン・ボナパルトやウィンストン・チャーチル元英首相などもゲストに迎えた歴史を持ちます。オーナーのパオロ・デサンティス氏と妻のアントネッラ氏、娘のヴァレンティーナ氏らが数年がかりで修復して2022年にホテルを開業しました。
同番付では独立系ホテルがブランド系ホテルを大きく上回り、アマンとフォーシーズンズはそれぞれ4軒選出されましたが、マリオットとヒルトン系列は共にゼロという結果です。こういったランキングは一つの物差しでしかありませんが、この潮流については認識する必要があると思っています。
チェーンホテルは均一なサービス品質をもつことが良い点ですし、私自身も初めてのいく海外の国では安心を優先してチェーンホテルを選ぶことも多いです。ですが、小規模でその土地ならではのモノやコトを体感できるホテルは豊かな時間を与えてくれます。この豊かさこそ、今後のラグジュアリーホテルに求められるものだと考えています。
【 参考書籍 】
・新・ラグジュアリー ――文化が生み出す経済 10の講義
・ラグジュアリー戦略―真のラグジュアリーブランドをいかに構築しマネジメントするか
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