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レビュー返信歴16年、ホテル業界の大先輩から学んだ返信の「視点」

この記事では、ホテルのレビュー返信について今まで私が意識してきたことと、昨年お会いしたホテル業界の大先輩(以後、Fさんと表記します)のレビュー返信から学んだ「視点」についてまとめます。

Fさんは「とにかくレビューの返信が好き」と仰っていて、熱量溢れる返信内容からOTAのCS担当の方から参考にしたい連絡がくるほどの方です。現在は奈良にあるラグジュアリーホテル、登大路ホテル奈良で働いていらっしゃり、この記事を書くにあたってFさんのレビュー返信内容を読みあさってポイントをまとめました。

どちらかというと、ホテル業界に入って間もなく、「どうやって返信していけばいいだろ?」と考えている人に向けた記事です。どんな業務でも自分なりに工夫できる人は強いです。ぜひ、この記事を参考にご自身でレビュー返信を工夫し、ホテルの魅力を伝える場としても機能するようにしていただければと思います。

総論

【 POINT 】
1. レビュー返信は宿泊検討者へのメッセージと意識しよう
2. 返信内容は具体的にしよう

考え方のポイントとして、”レビュー返信はレビューを書いてくださった方への返信でありながら、現在宿泊検討をしている人に向けたメッセージ”とすることで、どのような返信が良いのか考えやすいと思います。

良い評価をいただいた場合は感謝を述べるとともに、自施設の何が魅力なのかを具体的に伝えてみましょう。反対に悪い評価をいただいた場合は、謝りつつ、改善できることがあればどのように改善するか書く。ゲストの思い違いの場合は言葉は選びながらも事実を述べることも重要です。

次のポイントは”具体性”、具体的な内容でないとお礼や謝罪の定型文のようなものとなり、レビューを書いてくださった方にも、レビューを参考にホテル選びをしている方にも印象は悪くなります。(印象がなくなります)

これから先は具体的な内容になりますので、詳細が気になった方は読み進めていただければと思います。

そもそもなぜレビュー返信が重要?

ゲストの多くが旅行代理店からではなく、OTAや自社予約サイトから予約をするようになった現代、口コミの重要性はホテルで働く方なら実感していると思います。イギリスの調査*1によるとアンケート回答者の72%が滞在先や食事をする場所などを予約する際に口コミをチェックしていることがわかっています。更に宿泊施設の場合は割合が高くなり、なんと回答者の81%が口コミをチェックしています。

複数の滞在先候補があった際、口コミを確認して同時に口コミの返信が丁寧であれば好印象なのは想像しやすいと思います。片や定型文がつらつらと書かれている場合、片やゲストのレビューに対して具体的な話が記されている場合、どちらのホテルの方がより良い滞在になりそうでしょうか?

最近はTwitterでもキレッキレのレビュー返信が話題になったりしますが、ああいった内容は話題になる可能性はあるものの、悪い意味で炎上する可能性もあり、諸刃の剣になります。

映画『耳をすませば』で主人公の月島雫のお父さんが言っていました…「自分の信じる通りやってごらん。 でもな、人と違う生き方はそれなりにしんどいぞ。 何が起きても誰のせいにも出来ないからね。」これです…ですので、今回お伝えするのはあくまで正攻法だと思っていただければと思います。

レビュー返信は宿泊検討者へのメッセージと意識しよう

総論でも書きましたが、レビュー返信で意識することは「レビュー返信はレビューを書いてくださった方への返信でありながら、現在宿泊検討をしている人に向けたメッセージ」です。ゲストが一番そのホテルや旅館に興味を持っているタイミング、それがレビューを確認している時です。

マーケティングファネルの考え方でいくと、認知→興味・関心→比較検討→予約というフェーズで分けた場合、【興味・関心 / 比較検討】の部分がレビュー確認に当たります。

つまり、予約の一歩手前です。その状況でホテルを無料でアピールするチャンスがあるということ。一番良いタイミングで無料の宣伝…これはもう、ちゃんと返信しないといけないことが分かったかと思います。もちろん、レビュー自体がよくないと話になりませんが、その施設の魅力的な部分をレビュー返信でも伝えましょう。

返信内容は具体的にしよう

例えば以下のようなレビューがあったとします。架空のホテルです。

【宿泊客:MIKITO様からのレビュー】
HOTEL TANAKA に初めて宿泊しましたが良い滞在になりました。駅からも近くて、買い物に行くのも便利でした。お風呂も広かったので、ゆっくりくつろげましたし、朝食は量もちょうどよく美味しかったです!また泊まりたいです!

ゲストの方は滞在して感じたことを書いてくださります。今回のレビューで出てきたポイントは以下の①〜③になり、A〜Cについて言及できるということです。

① 駅からも近くて買い物に行くのが便利
⇒ A) アクセスについて

② お風呂が広かった
⇒ B) 設備について

③ 朝食の量がちょうどよく美味しかった
⇒ C) 飲食について

では、実際にA〜Cを具体的してレビュー返信をしたいと思います。

【HOTEL TANAKAからのレビュー返信例】
A)
この度はHOTEL TANAKAをご利用賜り、誠にありがとうございました。MIKITO様がお買い物を楽しめたご様子を拝見しまして、嬉しく思います。当ホテルは最寄りの駅から徒歩3分、繁華街へも電車で5分で行ける立地にあり、ショッピングにも利用しやすいとご好評いただいております。

B)
バスタブはJAXSONという日本のブランドのもので、デザイン性と機能性を重視した特別なものです。ゆっくりお寛ぎいただけたようで安心いたしました。

C)
朝食は料理長が「その時に一番美味しいものを召し上がって欲しい」という考えから、旬の食材を直接、農家から仕入れて調理した和食です。ご満足いただけたご様子で、大変ありがたく存じます。

今後もお褒めいただきましたことのすべてを大事にし、精一杯努めながら、再びお会いできます日を、スタッフ一同、心よりお待ち申しあげております。

MIKITO様のレビュー自体はポイントとなる内容はありつつも、抽象的なものです。そこを返信する際に具体性を持って返すことで、レビューを書いてくださったゲストに対して感謝の想いを伝えるとともに現在検討中の方へも自施設の魅力を伝えることができます。

上記はグッドレビューの返信でしたが、バッドレビューの場合も同じように謝罪だけで終わるのではく、何がホテル側の落ち度だったのか具体的に認めた上でどのように改善するかを伝えましょう。ですが、できないことを「改善します」と書くのはNGです。もし同じような不手際が起こった際に、ただ改善すると書いているだけになり、より印象が悪くなります。

Fさんの返信で驚いたこと

Fさんの返信を読んでいると私自身できていないことが多々ありました。例えばレビューで特定のスタッフへの賞賛があった際は、そのスタッフにレビュー内容を伝えたと述べた上でそのスタッフが喜んだこと、それを受けて更に「今後の糧となるに違いないと確信を持った次第でございます。」とFさん自身の感想も伝えていました。

料理に関して良い評価をいただいた場合は、料理が月替わりで変わるという情報を伝え、初回の宿泊に満足した方へのリピートを促していたり、上記の例文にも少し入れましたが、料理の種類、食材のこだわり、シェフの経歴等を伝える事でレストランの魅力や料理の美味しさの秘密を説明していました。

客室がゲストの期待に添えなかった場合はストレートに申し訳なさを伝えつつ、もし他のルームタイプでそのゲストが気になったポイントを解決できるならその事も伝えていました。これらのアプローチは、今までしたことがありませんでしたし素敵な返信だなと思いました。

さいごに

私自身、ホテル業界に入るまでは宿泊後にレビューを書いたことがありませんでした。だって面倒臭いじゃないですか…そんな面倒臭いことをゲストはしてくださっているわけで、そこに深く感謝しつつ自施設の魅力を具体的に第三者にも伝わるように返信すること。

結局、自施設の魅力をどれだけ知ることができるか、好きになれるかが1番重要な視点なのかなとFさんの返信を読んでいて感じました。今回の内容が少しでも参考になれば嬉しいです!

ちょっとでも勉強になったなとか、面白かった!と思っていただけましたら「いいね」「シェア」いただけるとすごく嬉しいです…ホテル好きの方がもっと増えますように!

▼ 今後も『地方で選ばれる宿の作り方』について情報をお伝えしていきます。Twitterのフォローはこちらからどうぞ!

参考文献

*1【調査】ホテルやレストラン予約で7割が「口コミ」を参考に 特に最新であるかを意識



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