見出し画像

ブティックホテルについて詳しくなれるnote

この記事ではここ数年、日本でも少しずつ浸透してきた”ブティックホテル”という種類のホテルについて詳しく説明したいと思います。私自身、ホテル業界に入って約2年半、ブティックホテルという言葉をたくさん聞いてきました。ですが、何がブティックホテルなのか」「他のホテルと何が違うのか」と質問を受けた時に説明が難しく感じた事も事実です。

アメリカで始まったブティックホテルというジャンルのホテルについて、くわしい情報がまだ日本では述べられていないので、この記事を読む事で輪郭をつかむ事ができると思います。「言葉はなんとなく聞いた事があるけど詳細はわからない」という方はぜひ読んでいただけますと幸いです。


1. ブティックホテルとは

日本においてブティックホテルというと、ラブホテルの別の言い方という印象が強いのではないのでしょうか?私自身、ホテル業界に入る前は「ブティックホテル=ラブホテル」という認識でした。ですが、業界に入り日々ホテルに関する情報に触れていると本当の意味は違うことが徐々にわかります。

Wikipediaで調べて見ると以下の文が出てきます。

ブティックホテル(英: boutique hotel)とは、独創的で店舗ごとに異なるコンセプトと高いクリエイティビティをセールスポイントに持ち、10室から100室ほどの客室を有するホテルを指す。ブティックホテルは、独立系のオーナーによる経営スタイルが多く、一貫したコンセプト、細部に至るまで徹底したクリエイティブのこだわりが見られ、高品質・高価格帯である。また、運営をマニュアルで縛ることなくチェーン展開されている。

引用元:Wikipedia

・店舗(ブランド)ごとに異なるコンセプト
・建築やインテリア、クリエイティブに力を入れている
・独立系オーナーによるこだわりが強い経営スタイル

というのがポイントだと思います。上記を実現しようとすると結果的に高品質・高価格帯で100室未満くらいの小規模なホテルになってしまうというのが実情ではないでしょうか。なので私自身は高価格帯でなくてもオーナーのこだわりが反映されたものであればブティックホテルだなと思っています。

画像1

ブティックという言葉の意味はデパートに対する衣料品のブティックからきていると言われています。規模の大きなホテルがデパートだとしたら、ブティックホテルはよりオーナー色の強い小規模なホテルということです。

2. ブティックホテルとライフスタイルホテルの違い

ブティックホテルのイメージが掴めたところで、次はブティックホテルとライフスタイルホテルの違いについて考えたいと思います。雑誌『カーサ ブルータス』では”ライフスタイルホテル”という呼び方でホテルの特集を2018年と2020年に組んでいます。ですので読者の方は「え?ライフスタイルホテルなの?ブティックホテルなの??」と混乱してしまうかもしれませんが、一応、呼び方で意味の違いがあります。

日本のブティックホテルの先駆けと言われるTRUNK(HOTEL)の木下様の言葉がとてもわかりやすいの引用させていただきます。

対してライフスタイルホテルとは、グローバル展開しているホテルチェーンが、多様化するユーザーのニーズに対応できるようにブティックホテルに倣って生み出したカテゴリーのこと。「スニーカーを履いたクリエイターが、スーツに革靴のビジネスマンが集うラグジュアリーホテルにはない居心地の良さを得られるホテルですね。ホテル側がゲストのスタイルに合わせていった結果です」

引用元:TRUNK(HOTEL)が目指すのは、「これまでにないホテル」をつくること。

ざっくり言うとオーナーが「こういうホテルが欲しいんだ」と望んで作ったブティックホテルはプロダクトアウト型、ユーザーのニーズを汲み取って作られたライフスタイルホテルはマーケットイン型と言えます。雑誌で掲載されているホテルは似ているようで、実は考え方が根本的に違っているところが面白いですね。

後述しますが、ブティックホテルの生みの親のような人でイアン・シュレーガーという方がいます。2020年にオープンした”東京エディション虎ノ門”というホテルはイアン・シュレーガー手がけましたがエディションというブランドのコンセプトは "ビスポークで作られる新世代のラグジュアリーライフスタイルホテル" です。ブティックホテルの生みの親が”ライフスタイルホテル”と形容したのは、ユーザーが現代のライフスタイルで求めたものを形にしたからだと思います。(客室数206室と多く、大手のマリオット系列というのもある)

3. アメリカにおけるブティックホテルの始まり

ブティックホテルの源流はヨーロッパにあります。1980年代初頭までにヨーロッパでは独立系の上品で洗練されているホテルが確立していました。イギリスの五つ星ホテルであるBlakes Hotelなどがそれにあたります。

1980年代、ほぼ同じ時期にアメリカの東西でブティックホテルが生まれました。主役は西のビル・キンプトン、東のイアン・シュレーガーです。彼らは全く対照的な感性を持っていました。

キンプトンは当時、投資銀行で働いておりヨーロッパに出張することが多く、そこで、個性的でオーナー自身とも親密な関係を築けるようなホテルを好みました。アメリカに帰国し、ヨーロッパでの経験を忘れられないキンプトンはサンフランシスコでベッドフォードホテルを開業しました。1981年はまだ大型のホテルが主流でしたが、大型のホテルとは違ったところで勝負をしようとしました。それがホテルに街で最高の独立したレストランを作るという考えです。

ベッドフォードは古い建物をリノベーションしたホテルでしたが、ホテルビジネスについてあまり知識のなかったキンプトンはあまり良い結果になりませんでした。2番目のホテルであるヴィンテージコートと呼ばれるホテルでは素晴らしいレストランを併設することができ、ゲストはレストランを予約するためにホテルを予約するほど人気がありました。(ちなみにこのレストランのシェフはMasataka Kobayashiという日本人でMasa’sという名前のレストランを経営していました)

片や、東海岸のイアン・シュレーガーは1984年、ニューヨークに”モーガンズ”というホテルをオープンしました。シュレーガーのバックグラウンドは”ナイトクラブ”です。ニューヨークで1970年代に伝説的な人気を誇った”STUDIO54”をオープンし、一世風靡をしました。

そんな経験のある彼なので、ホテルにもナイトクラブ的な要素を持ち込みました。現代のブティックホテルの代名詞的なロビーソーシャライジングはシュレーガーが始めたものでした。

4. なぜブティックホテルは人気を博したのか

ブティックホテルが世間で支持された理由はいくつかあると思いますが、大きな理由の一つはラジュグアリーホテルがチェーン展開し、どのホテルもブランドスタンダードを作り、旅行者は画一的なサービスに飽き始めたと言えます。それまでのチェーンホテルの価値は、世界中どこに行っても「リッツカールトンなら安心」というように品質の高い均一なサービスでした。

ですが、それがずっと続くことで旅慣れた人はつまらなさを感じるようになりました。ホテルサービスの型はヨーロッパの影響を強く受けています。スタッフは1800年代の執事のような格好をして、ゲストに対して従順、保守的でした。

ブティックホテルはそのアプローチとは違い、カジュアルだけど献身的、そしてパーソナライズ化されていました。「デザインにこだわりがあるだけのホテルだろ」とサービスの期待が低い人達はスタッフである彼、彼女らのサービスに良い意味で裏切られました。

画像2

また、地域社会や文化との結びつきがあります。世界中の宿泊客を招くのと同じように地元の人をロビーやレストラン、バーに来ていただくことを重要視していました。その”ローカル性”も新鮮でした。ローカルとの繋がりはそのままサポートにも広がりました。HIVやAIDSなどの闘病支援、募金活動、動物の救助、恵まれない女性への社会復帰支援など様々なローカルへのサポートを行っていました。


5. 日本の主要なブティックホテル

アメリカでのブティックホテルの始まりは説明しましたが、次は日本。日本で本当の意味でのブティックホテルが出来はじめたのは実は最近です。この記事では3つのホテルだけご紹介したいと思います。

Ⅰ.TRUNK(HOTEL):2017年 OPEN

これまでも、デザインホテルなどの呼び方でデザイン性の高いホテルはありましたが国内で堂々と「ブティックホテル」と言うようになったのはTRUNK(HOTEL)からではないでしょうか?運営元の"テイクアンドギヴ・ニーズ"はブライダル事業を行っていた会社ですが、2017年にTRUNK(HOTEL)をオープンさせました。オープン前に世界中を旅して、ホテルに泊まり、渋谷という街に必要なホテルを作りました。


Ⅱ.K5:2020年 OPEN

20室という小規模な客室、1923年に竣工した第一国立銀行別館をリノベーション。スウェーデン・ストックホルムを拠点に活躍する建築家パートナーシップ「CLAESSON KOIVISTO RUNE」が建築・空間デザインを監修という、この言葉の並びだけでも紛れもなくブティックホテルなK5。ホテル好きには憧れの空間です。館内にはクラフトビールを楽しめるお店や、カフェなど旅人も現地の人も楽しめるコンテンツがたくさんあります。


Ⅲ.キンプトン新宿東京:2020年 OPEN

そう。ブティックホテルの始まりとされているキンプトンが昨年、国内に初登場しました。ビル・キンプトンがヨーロッパで感動した宿泊体験から始まり、キンプトンという名を冠したホテルが約40年越しにやってきたことは感慨深いものがあります。しかも西のキンプトン、東のシュレーガーと呼ばれたレジェンドの両雄が手がけたホテルが同じ2020にオープンするとは…私自身はまだキンプトン東京も東京エディション虎ノ門もまだ宿泊できていないので、そういった経緯も含めてどのようなホテルか楽しみにしています。

6. おわりに

昨年に”日本ブティックホテル協会”が誕生しました。これからさらにブティックホテルは増えていくと思います。

そんなホテルに宿泊した時に、「このホテルはどのようなこだわりがあるんだろう?」とか、「どんなコンセプトで運営しているんだろう?」と考えるだけでもまた違った印象を受けると思います。せっかく画一的でない、個性豊かなホテルに泊まるのですから最大限楽しんでいただると、ホテルで働くものからしても嬉しいです。

ちょっとでも勉強になったなとか、面白かった!と思っていただけましたら「いいね」「シェア」いただけるとすごく嬉しいです…ホテル好きの方がもっと増えますように!


7. 参照元

Complete Oral History of Boutique Hotels
イアン・シュレーガー×隈研吾注目のホテルがついに完成!
超人気TRUNK(HOTEL)運営のT&G全国にホテル10店開業へ —— マニュアルなし、リース物件で事業拡大
伝説のNYクラブの仕掛け人が東京に相次ぎホテルをオープン その理由を直撃
一般社団法人日本ブティックホテル協会を設立のお知らせ

▼ 今後も『地方で選ばれる宿の作り方』について情報をお伝えしていきます。Twitterのフォローはこちらからどうぞ!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?