機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争・全話全シーン感想 2話「茶色の瞳に映るもの」Aパート

ロボットアニメを見漁っていた中高生だった私が初めて観たガンダムが、話数の少ない本作でした。自分で思った以上に思い入れが強かったことに気づかず、以前1話の全シーンレビューをしたときに気合が入りすぎてしまい、ぐったりしました。
困難は分割せよ。2話から前後編に分けて、シーンごとに咀嚼しながら気づいたこと・思ったことを書き出していきたいと思います。

2話Aパートは、以下のシーンから構成されています。
①2:14 アルとバーニィの出会い
②6:42 被害を受けた街でチェイ・テルコットと合流する
③7:29 学校にもどり児童たちが街の被害の話で盛り上がる
④8:08 アルが自分の部屋でパイロットごっこをする
⑤8:37 月面基地でサイクロプス隊とキリング中佐がコンテナのビデオを見る
⑥10:05 バーニィが呼び出され、サイクロプス隊への配属を告げられる


シーン①

本作でもっとも重要な2人の出会いのシーンを、たっぷり4分半かけて丁寧に描いています。少年アルが拳銃を向けられた前話EDの緊張が一気に解け、随所にBGMを使いながらも、森林公園の野鳥のさえずりがふたりの会話の間に響いて、なんとも奥行きがあって牧歌的です。

前話に引き続き背景美術の不時着したザクは、やはりカットに合わせていろんな角度から描かれているので、画的な奥行きも感じます。

戦争末期に動員されているバーニィはごく普通の青年で、「やられちゃったんですね」と図星をアルに言われてむっとし「こんなところまで来てガキの相手」と悪態をつきます。その言葉にアルもむっとしてしまうわけですが、つまり巨大兵器をひとたび降りれば、民間人の少年と同じ目線でケンカをしてしまうような、バーニィの幼い部分が出てくる。
そんなことを、ザクの上から銃を構えていたところから地面に飛び降りて、見下ろしていたアルと同じ目線に降りてくる。この画面の構図の変化から感じてしまいます。

出会いのシーンを丁寧に描いて、ふたりがかわいい人間だなということを視聴者に嫌味なく感じさせ、作品の解像度を上げているとてもいいシーンだと思います。後はやはりこの作品の、物・小道具の使い方が優れていると感じます。バーニィが見たビデオのディスク(フロッピー状!)はこの後の物語を展開させますし、アルがもらった階級章も後に印象的な使われ方で再登場します。

なにより、ビデオカメラに書かれた名前を見て「アルフレッド!」とカメラを投げ返すバーニィが、シャレてます。次話でバーニィがアルの名前を知っていることで事態が動くシーンがありますが、このシーンでは、”戦場でからまれたガキ”と”かっちょいい兵器に乗ってるお兄ちゃん”は、お互いに自己紹介する必要がないのです。バーニィが流れで「お前、名前は?」と聞いてもツッコミどころになるほど違和感はないと思いますが、上記の演出はスマートです。

シーン②③

ガンダムシリーズでは、民間人の目線から市街地での被害を描くシーンはあまりないので、その意味でも本作品は異色作ですよね。民間人が主人公なのだから当たり前といえば当たり前なんですが。常に引きの画で街を写し、消防隊員がうなだれていたり、被害の大きさが計り知れます。車の上にアルが登り降りするときちんと車体が揺れる作画がされていたり、大胆なカメラ視点の上下があったり、つなぎのシーンを思わせません。

自分の生まれ育った街で戦闘行為が起きて大きな被害が出ていながら、先生に怒られること・友達の無知をからかうこと・学校が休みになること、などに意識が向きっぱなしの子供達は、過剰な平和ボケの演出にも見えるのですが、このあと成長していくアルへの前フリともとれます。しかし野次馬の大人と、はしゃぐ子供達にいくらの違いがあるのかもよくわかりませんね。現実感をもってない子供達の方についつい違和感をもってしまいますが、大人と子供を対比したとき、その行動には対して違いがないのかもしれません。

シーン④

バーニィからもらった階級章を使って勉強机でパイロットごっこをするアル。1話の宇宙港に行く路面電車のシーンでも思ったのですが、ガラスごしのキャラクターとガラスに写り込む景色のカットに異常にこだわりを感じます。シーンが窓越しのアルからはじまるのが、小5の男の子の無邪気なごっこ遊びを覗き見てる感じがして本当にいいですね。

1話では自分の部屋で遊ぶのはTVゲームでした。2話ではごっこ遊びに変わったわけですが、バーニィに階級章をもらったことで、アルは現実世界、戦争に無意識に引きずり出されていき、Bパートではたまらずザクへと向かってしまいます。
月のないコロニーの夜空から、月面基地の次シーンへと移ります。

シーン⑤

バーニィが入手したコンテナの映像をキリング中佐がサイクロプス隊に見せているシーンですが、取っ組み合いしていたアルとバーニィのケンカと対象的に、嫌味を言い合ったり、論点をずらしたり、偶然を装って机を蹴ったり、大人のケンカが行われます。しかし②③の野次馬と子供達ではないですが、大人のケンカは大人のかっこよさを見せるのではなく、知恵がつき扱う言葉が違っただけで、本質的には子供と変わらないのではないかとも思わせます。

ところで月面基地にいるキリング中佐が「ツキに救われた」と言うのは、オヤジギャグ的なことなのでしょうか。優秀なパイロットを選んでおいたと言うキリング中佐から、バーニィのカットへ移ります。

シーン⑥

バーニィと、バーニィをからかう同僚が基地内を歩いていますが、この背後にみんな大好きケンプファーを映す構図が最高です。バラされてコンテナに詰め込まれている最中ですね。この作業現場の超引きの抜けた画から、サイクロプス隊の閉塞感ある個室に移動するのでかなりメリハリが効いてます。

ソロモン送り、前シーンでもニュータイプ用ガンダム、というワードが出てきてガンダムファンはおっ、となるのですが本作品では重要な意味はありません。ファンサービスともとれるのですが、台詞回し上、意味深な使われ方になるので、会話に世界観の奥行きが増す効果になっているように思います。独立作品としても外伝としても楽しめる絶妙な塩梅です。

ヌード雑誌を読むガルシアに、サバイバルナイフで爪を研ぐミハイル、チェーンスモーカーのシュタイナー。ならず者感あふれる隊員が集まる異様な雰囲気に落ち着かず部屋をきょろきょろするバーニィ。「はっきりしないやつは死ぬぞ」はこの後の全員の運命を思うと2重にぐっと来ます。

一方的に作戦を説明され、やれやれ参ったなと言わんばかりのバーニィの顔でAパートが終わり、アイキャッチです。

後半へ続く。

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