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Re-posting No.066 マジックへの情熱「奇術界報」M004・高木重朗さん

Re-posting No.066 マジックへの情熱「奇術界報」M004・高木重朗さん

Re-posting No.059 の続きです)

「奇術研究」は書店での取り扱いがあり、中学1年生から定期購読を始めた。もう一つ気になる雑誌があった。いや、雑誌とは呼べないシロモノだった。「奇術界報」である。

僕が子供の頃、デパートのおもちゃ売り場の一画で、マジックの実演販売を見ることは珍しくなかった。池袋東武百貨店は天洋(現・テンヨー)、西武百貨店はJMA日本奇術連盟の製品を取り扱っていた。JMAの製品の方が本格的な感じで、天洋より好みだった。

西武百貨店のマジックディーラー、オールバックの髪型がお似合いだった高野さんのマジックを飽きることなく、いつまでも観ていた。カップに入れたボールがカップの底を通り向ける。手に握った二匹のスポンジのウサギが、子どもを産んで六匹になった。4枚のトランプが段々段々小さくなっていく。目の前で起こるマジカルな現象は、驚愕の連続で、クラクラした。

夏休みや冬休みに顔を見せるいわき訛りの小柄な少年しんやを、高野さんも覚えてくれるようになっていた。そんなに沢山の小遣いがあるわけではない。どの奇跡を手に入れるか、いつもいつも迷った。高野さんは、軽く優しい微笑みを浮かべ、少年の迷いにいつでも付き合ってくれた。

ようやく決まった一つか二つの奇跡の謎が、自分の膝の上にある。東武東上線下り各駅停車の電車が中板橋駅に着くまでがもどかしかった。帰ったらすぐ開けられるようにと、袋の一部を切った。中からマジックの説明書と、もう一枚の別の紙が入っていた。JMAの入会案内書だった。入会すると、毎月「奇術界報」なるものが届く。「最新の奇術が解説」と書かれている。申し込めば見本が届く。

百貨店に並ぶ奇跡以上のものが手に入るのだ。当然のように見本の申し込みをした。「奇術研究」は50ページに満たない雑誌だが、その中身の濃さに取り憑かれていた。同じような雑誌を想像していた。「最新の奇術」ってどんな奇跡なんだろう?

JMAから郵送されてきた封書は、雑誌が入っているとは思えない薄さだった。開けると10ページの「紙の集まり」だった。小冊子と言うのだろうな。中を見ると、二つのマジックが載っていた。初めのマジックが「帽子紛失事件」高木重朗解説とある。高木重朗、「奇術研究」で数多くの解説もしているあの人だ。

「奇術界報」は迷った末に、一年半後から定期購読する事となる。それにしても・・・高木重朗さんってどういう人なんだろう?恐ろしくマジックに造詣の深い方なのは分かる。写真で見ると、トッポりとした方だが。どうも、マジックに触れると、マジックな、謎の人に当たるなあ〜。

奇術界報の定期購読を始めた3年後、高校生しんやは高木重朗さんに手紙を出すこととなる。
手紙を出してから2年後に、初めて高木重朗さん本人とお会いする。
さらに翌年、高木重朗さんの職場を訪れる事となる。

戦後のマジック界の重鎮、何らかの形でお世話を受けなかったマジシャンはいないであろう高木重朗さん、その職場国会図書館を訪れた方は稀ではないだろうか?

・・・続く

見本で届いた「奇術界報303」



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