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ブレインストーミングはただアイディアを出すだけの行為ではない、という話

デザインプロジェクト、あるいはデザイン思考といえばポストイットというイメージを持つ人も多いでしょう。そしてポストイットといえば、多くの人はアイディア出しをイメージするのではないでしょうか。

しかしながらアイディア出し、つまりブレインストーミングって、その目的や役割がうまく伝わっていないのではないかなと思うことがあるのです。

ブレインストーミングの役割や特性を正しく認識した上でブレストを実施しないと、ブレストをしたのにいまいちイケてるアイディアが出てこない…を繰り返すことになり、疲れだけが残るということも。

アイディエーションの役割とは

アイディエーションとは解くべき問題を定義して、コンセプトを見出すまでの一連の流れの中で、アイディアを発散させることを指しますが、これを乱暴に図にすると、下記の図のようになります。

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多くの場合、問題に対するアプローチには様々なものがありますのが、適切なアプローチを選択するためにはまず、そのアプローチを検討の俎上に乗せる必要があります。

かといって適切なアプローチだけを最初から考え出すというのはなかなか難しいことです。良さそうなアプローチには行き着くかもしれませんが、もっと良いアプローチがあるかも知れません。

そこで、アプローチとして可能性があるものを出来る限り多く出し、どのアプローチが良いかを比較検討するわけです数多くのアプローチを取捨選択したり、ブラッシュアップしたりしてコンセプトを作り上げて行きます。。

この一連の流れの中において、ブレインストーミングの役割は3つあると考えています。

(1)問題を解決する方向性と方法を探索する

ブレインストーミングの目的といえば、まずはアイディアを出すことと思われる方が多いのではないかと思います。実際、ブレストを行う場合の主な目的としてこれを設定することは多いでしょう。

「新しいキャンペーンの内容についてブレストしましょう」「顧客からの問い合わせへの平均応答時間を短くするに方法について考えましょう」などなどブレストのテーマは様々かと思いますが、企業などで働いていると、みんなでアイディア出しをする機会というのは数多くあるのではないでしょうか。

そういったケースにおいて、ブレインストーミングはとても強力なツールです。ブレインストーミングを行うことによって設定した課題からアイデアを膨らませ様々なここの相手を生成することができます。特に1人では思いつかなかったような解決法やアプローチなどが出てくることも少なくありません。

(2)解こうとする問題とコンテキストを適切に定義する

ブレインストーミングによって様々なアイディアを出すだけではなく、問題定義が適切かどうか、そもそも問題の理解に齟齬がないかなどについて把握することができます。

例えば、高齢者向けのサービスについてのソリューションを考えるケースにおいて、ある程度アイディアを出してみると、いくつかのアイディアは、ブレインストーミングのお題には沿っているものの、実際には明らかにコンテクストにあっていないというものが出る場合があります。

あるいは、参加者間において、問題に対する認識のズレが明らかになる場合もあります。

我々が取るべきアプローチとはちょっと違うのではないかとか、思ったようなアイディアが出てこないとか、あるいはもっとこういう解決法があるのではないかとか、そもそも問題として解決したい問題はこれではなく、違うところにあるのではないかなど。

こうした様々なズレをアイディエーションのプロセスを通して修正、あるいは揃えることができます。ある意味でモンテカルロ的ですね。

問題定義が適切でないと感じた場合には、問題そのものを設定し直すことが有効に働く場合も多いでしょう。もうちょっとこういった方向で考えてみようとか、ソリューションとして、こういう制約をつけてみようなど。

(3)アイディアをブラッシュアップしてコンセプトへの橋渡しをする

ブレストのルールとして「他人のアイディアに便乗」がOKであることは周知の通りかと思いますが、実際にアイディアのブラッシュアップが行われることは少ないのではないでしょうか。私個人的にはですが、これ、結構もったいないのではないかと個人的に思ったりします。

アイディアは質より量であるのですが、他人のアイディアに便乗したり、そこからインスピレーションを得ることこそ価値がある場合がありますが、実際のブレインストーミングを見てみると、もちろん多少なりとも影響を受けているとしても、他人のアイディアに便乗するということがあまり意識されてないのかなと思います。

良いコンセプトにたどり着くアイディエーションとは?

上記をもとに、アイディエーションプロセスを通してより良いコンセプトを生み出すためにはどうすればよいかを逆向きに考えてみますと、下記の点が必要なのではないかと考えています。

(1)より良いコンセプトを生み出すためには、適切な幅と深さのあるアイディア群から絞り込みを行うこと。

(2)適切な幅と深さのあるアイディア群を作るためには、定義された問題の中で集中的にアイディアを出し、ブラッシュアップを行うこと。

(3)適切な幅のアイディアを出すためには、適切に問題を定義すること。

1については説明するまでも無いでしょう。10個のアイディア群よりも、100個のアイディア群のほうが良いコンセプトのネタが潜んでいる可能性が高いはずです。

アイディアの数が多かったとしても、それらが大雑把なものや抽象度の高いものばかりだったり、浅いアイディアばかりではコンセプトには繋がりにくいでしょう。数が大事であることに間違いはありませんが、アイディアの密度やある程度の具体度合いも必要であると考えており、そのためにはアイディアに触発されたり、アイディアの具体抽象の間を行き来したり、アイディア同士を組み合わせたり、なども必要になってきます。

3について。たとえアイディアの数が多かったとしても問題が適切に定義されていないとあまり意味がありません。例えば「社会を良くする方法を考える」というお題でブレインストーミングをしたとしても、様々な角度から様々なソリューションがでてくることが容易に想像できます。それよりは「地元を離れて上京した若者が地元に貢献する新しい方法を考える」のような具体的なもののほうが、アイディアの密度は高くなり、同じ個数のアイディアを生み出したとしても、よりよりコンセプトにつながる可能性が高いでしょう。

なお、この問題をいかに定義するかの部分で役立つパワフルなツールがデザインリサーチなのですがこれはまた別の機会に。

ブレインストーミングのルールを振り返る

最後に、上記を踏まえていわゆるブレインストーミングのルールについて振り返ってみましょう。上記の目的を念頭におくとそれぞれのルールの意味が理解出来るはずです。

質より量

ブレインストーミングは質より量というのはよく言われることができますので、改めて説明する必要もないでしょう。より良いコンセプトを作り出すためには数多くのアイディアから選ぶ必要があります。とにかくアイディアを発散させることを重視するわけですね。

アイディアの良し悪しを判断しない

質にこだわったり、良くないアイディアを出しては行けないと萎縮すると数が出なくなります。とりあえず思いついたことは場に出してみる事によって、他の人がそのアイディアに触発されて新しいアイディアを思いつくかも知れません。

ラフなアイディアOK

突拍子もないアイディアと言うのは、他のアイディアの呼び水になります。そのアイディアそのものでは使い物にならなかったとしても、それをもとに新しい良いアイディアがでてくるとしたら、その元となったアイディアは大きな貢献を果たしたことになります。

アイディアに固執しない

ブレインストーミングの目的の1つは様々な解決策の方向性を探ることでもありますので、一つの方向性で、あるいは1つのアイディアに固執してブラッシュアップを続けることはあまり良くありません。

すべて紙に書く

アイディアは全て紙に書きましょう。ブレスト、と言うと口頭のみで実施される場合もそれなりにあるのですけれど、音にしたものはすぐに消えていきます。紙に書いて一覧できる状態をキープすることによって、その後のコンセプトにつなげやすくなったり、あるいは他の人がそのアイディアの上にアイディアを重ねやすくなります。

なお、私の場合は特にアイディアを紙に書くときに、タイトルと簡単なスケッチをお願いする場合が多いです。ただしこれについては、私のメンバーの顔ぶれやデザインプロセスにもよって変える場合があります。

私の場合はプロジェクトに参加する方々をデザインプロセスで巻き込むことが多いのでスケッチをお願いする場合がありますが、デザインのプロセスによってはデザインチームがインスピレーションを得るためにアイディエーションを行う場合もあり文字だけでも充分と言う場合もあります。

人の話に割り込まない

これはブレインストーミングというよりも人としてのマナー、であるかもしれません。人が自分の間について話をしているときにそれを割り込まないそれを遮らないというのはこれはブレインストーミングというよりは人としてのマナーであるかもしれません。

アイディエーションにおいては、参加者がそれぞれアイディアを出すだけではなく、そのコンテクストを含めてチームで共有することが重要であり、それによってアイディア同士のコラボレーションなどが生まれることがあります。

テーマを忘れない

アイデア出しに熱中していると時たま、我々は何のためにブレインストーミングを行っているのか忘れる場合があります。適切な範囲の中でアイディアを出すために、テーマはできれば紙に書いてみんなの目に入るところにおいて実施するのが良いでしょう。

ブレインストーミングのやり方について

ブレインストーミングを行うためには準備と、その進め方が重要です。

テーマを設定する

テーマの設定によって、グレンストーミングの成否が決まると言っても過言ではないでしょう。そのため解くべき問題を適切にテーマとして設定する必要があります。

タイムボクシングを活用する

ブレインストーミングを実施するさいには20分とか30分かけてダラダラやるよりは、3分や5分など、時間を区切って集中して実施したほうが良いでしょう。

そして必要ならブレインストーミングのお題を修正したり、アイディアのブラッシュアップを呼びかけたりするわけです。これはタイムボクシングと呼ばれるテクニックのひとつでもあります。

終了後の後片付け

ブレインストーミングが終わったら、出てきたアイディアを設置しコンセプトえとつなげる作業に取り組む必要があるこの方法についてはクラスタリングなど様々な方法がありここに書くと膨大な量になるので別の記事として改めて紹介出来ると良いなと思っております。

おわりに

本来ブレインストーミングは大変パワフルなツールであることは間違い無いので、目的と役割を認識していただいて、皆様の業務に活用して頂ければと存じます。

それでは皆様、よいブレインストーミングを!

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私が代表を務めるアンカーデザイン株式会社では、スタートアップのプロダクト開発や、大企業の新規事業創出の支援を行っております。デザインに関する研修、各種リサーチ、プロトタイピング、各種デザインなど、お気軽にお問い合わせください。


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