勝手にオマージュ Vol.1!会田誠さんに届け!あぜ道 NO8
やがて。「なぜ問わぬ、問えばいいのに、消えた皮膚」香の声がした。
「わたしのだ、むけた皮膚とて、わたしのだ」再び香の声。
「未来へと、続く道のり、むけた皮膚」
この言葉は香の、香による、香のためのみなこからの卒業宣言。
みなこの怒りの中に、悲しみの泡がぽこりと浮かび、一人にしないで、置いていかないで、と沈黙のままみなこは叫び、そしてコンパスを振り上げた。
みなこはコンパスの鋭利な針を香の頭頂に突き刺すと、そのまま分け目に沿ってぎしぎしとうなじまで下ろし、
教室内には香の悲鳴とみなこの悲鳴、ほとばしる鮮血。
何事かと駆け付け現状を目の当たりにした英語教師のちえりは、驚きのあまり頭上を横流れする自身の髪の毛を掴みひっぱり、
「ボッ!」と叫ぶと駆け出して職員室に戻ったならば受話器をひっつかみ、
119番を押すつもりが117番を押していて、
「午前九時五分五秒・・・」と流れてきた時報を「極楽ヘア、ボーボー」とヒヤリングし、
慌てて電話を切ったなら今度はきちんと119番を押して五分後には救急車が到着し、
担架に載せられ運ばれていく香、
それを見送る三年二組の生徒たち、
教室に残された血の香り、
捕らえられたみなこ、
床に落ちた血だらけのコンパスの針に刺さったままの肉片。
写真:極楽ヘア、ボーボー
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