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知らない人

結局またスーパーに戻った。
家の近所のスーパーにたむろしていたのは同世代の男女だ。


だけども、私は触れ合ったことの無い性格や人格の人達だった

また戻ってきたわたしを不思議に思ったのか
有難いことに声をかけてくれた。


「どうしたの?
こんなところにいるような子じゃないよね」


「初めまして。
そうなの、お父さんに家追い出されちゃって
帰れないのでここに居たいの」

「別にいいんじゃない?好きにすればー」


こんな会話だったと思う

同世代の子たちは何かを楽しそうに話してる。


何を話してるかはわからない。
でも。わかるのはJWで「世の人」と言われていた「言葉の汚い単語」の羅列だった。

一緒にいるだけで温かい気持ちになった

エホバにお祈りしても返事はなかった

言ってる意味もわからないけど出会った人たちの方が暖かさを感じた。

「ねえ、家は?どうしたの?」

「やめなよ、聞かれて困るのはうちらもだろ!」

「父に追い出されちゃって。
明日になれば家に入れてくれると思うんだけど…どうしたらいいかわからなくてね
自転車で走ってきたの」

「そうなんだ?
ウチらといよー!」

と、まあこんな感じだった。

話してる内容は彼氏の話だったり彼女の話だったり恋バナが多かった記憶がある

ついていけないし
ワカラナイ話なのでボーっとしてた。

朝まで彼らと土手沿いを自転車で走ったり
座ってくだらないことを話したり
彼らの愚痴を聞いたり
そんな些細な時間を過ごしていたんだけど
わたしにはどれも新鮮で嬉しくて暖かい思い出だ。


朝方になった頃、女の子が

「ねえ!ウチくる??
そろそろ眠いし、うち来ればー?」と誘ってくれた


有難く甘えることにした。

でもその女の子には親がいなくて、親戚の家に住んでいるみたいだった


部屋もJWの家のようにきちんと綺麗なわけではない。

正直、可哀想とすら感じた。

わたしよりも可哀想な子がいるのか



それでも、なんだか人らしくて
人間味を感じれて嬉しかった
涙が出るくらいほっとしたのを

覚えてる。

ここに居てもいいんだ。


翌日になって
家に帰ってみる、と話すと
シャワーしてく?
と言ってくれたけど、母に「人様の家でシャワーにはなるべく入らないこと」と教わっていたので素直に


「お母さんにダメって言われてるからね、帰ってみてから入ろうと思うんだ」


と伝えた


寂しそうな顔をした彼女を置いて帰宅すると


母が恐る恐る家の中に入れてくれた。

目が腫れている。


父はいない。


「……ただいま。」

「どこ行ってたの?」

「色々。」

「色々って?心配するから止めてよね。」


と言われ自室に戻り眠った




一日足らずでいろんなことがあった


新しい学校
新しい友達
新しいクラスメイト

初めての体験
初めての友達
初めての夜


母には言わない方が良さそうなことも抱えてしまった


ぐるぐると思考を巡らせながらもこの日は眠った。


その翌週くらいから両親の離婚に関しての話が出てきた


気づいたのは夜中に言い合ってる「声」だった。

夜の営みでもしてるのかと思ったら違った。
言い合ってるのだ

それから何日か後、父から言われた

「離婚しようと思ってる」

やっぱりか。


と思う反面


わたしの世界が崩れ落ちた気がした


まだ馴染めてない学校生活に加えて
離婚


わたしが離婚する訳でもないのに
「親が離婚した子供」になることが
とても恥ずかしく感じた。

虐められてるのに
親も離婚するって…と思ったことを覚えてる。



震える声で「……なんで?」と聞いた


「じゃあお前らはエホバ辞められるのか」


と言われた。


それ と これ は話が違うと思ってた


抗議した

エホバの事を信じたらダメなの?
エホバは居るんだよ!
エホバと父のことは別の話でしょ!   と泣きながら訴えた

父は父でしょ⁉︎と


父はこう言う

「おまえは母親にそっくりだな」


と言い残して家を出てった。


目の前が真っ暗になった。

わたしには父を引き止めることが出来なかったからだ。


本能で「捨てられた」と感じた。


え、愛してくれてたのは父だけじゃなかったの?



なんで捨てるの?


どうして?

しつもんにこたえられないから?


わたしは?わたしは、かわいそうな子なの?
かわいそうになるの?


置いてかないで


ひとりじゃ無理だよ
母どうするの?
なんで?     なんで?

なんで?

なんで?

ねぇ、なんで





母はその時何も耳を閉ざし「聞かないふり」していた

母は現実を受け止められない感じだった
弟を抱きしめていた


ねえ、わたしは?


ねえ、わたしには?

母、わたしは?
わたしのことは?




え……


どうしたらいいの?




悩んでも


悩んでも
答えが出ない

目の前がぼやけて見える

家の中の雰囲気はとても悪い

今からの生活がどうなるかも不安だ



全てが予想つかない



わたしはひとり
ひとりなんだ
わたしはひとり
かなしい


わたしはあっという間に孤独になってしまった



とりあえず、自分のことよりも母のことをどうにかしないと!と感じたので
母を元気つかせるためにも「エホバの証人」であることにしがみつこうと思った。


父はサタンに染まってしまった
染まったから離婚って言い始めたんだ。
母を元気にさせないと、弟も私もどうしたらいいのかわからない。
家の中に大人は母しかいないんだ。


家のことを誰に言えばいいんだろう?
誰に助けてって言えばいいんだろう


でも、母はいつもJWの仲間に家のことを話すな、と強く言っていたから誰にもいえない。


もう祈るしか無かった
答えを貰えない祈りを沢山した
友であり父であるというエホバに祈った


しがみつくようにエホバの証人であることを証明するかのように今までよりも熱心に王国会館へ通い、奉仕をしたり交わりをしたりした







でも母の目には 私 が映ることは無かった。
たまに父が帰ってきた

何をいえばいいのかわからない。

母はヒステリックになった
父に何かを言っている。
その言葉を理解してはいけない気がしたから聞かない努力もした。


学校のことを相談したかった
もっともっと会話をしたかった
父にも母にも甘えたかった
弟よりも2人にはわたしをみてほしかった

だけど、それは叶わなかった

弟が羨ましかった
妬ましかった

サタンが父を奪った
悔しかった
悔しすぎたんだ

サタンから父を取り戻すためにも
わたしはエホバの証人としてバプテスマを受ける覚悟を決めた。


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