牡蠣001

【薬膳のキホン⑩ 五味~鹹】

【薬膳のキホン③ 五行】で
味覚(五味)は、五行の「木火土金水」に対応すると書きました。

「水」に対応する味覚は「鹹(かん)」です。
酸味、苦味、甘味、辛味に対し
鹹味というのは馴染みがないかもしれません。

わかりやすく言うと
しょっぱい
塩辛い
塩っぽい
というような味のことですが
いわゆる精製されたしょっぱいだけの「塩(NaCL)」の味というよりも
自然のミネラルを多く含む魚介類のような味をいいます。

「水」に対応する身体の部位を挙げると
「腎」「膀胱」「耳」「骨」「髪」などがあります。

また対応する季節は「冬」。
「寒(邪)」が心身に影響します。

「鹹」の性質をもつ食材は
 排泄を助ける
 硬いものをやわらげる
といった働きがあると考えられています。

「鹹味」をもつ食材もいろいろありますが
それぞれに五性(体を温めたり冷やしたりする性質)があります。
特に「寒邪」を意識する季節なので
五性に分けて挙げてみます。

(温性・熱性・・体を温める食材)
 エビ・穴子・アンコウ・アン肝・イワシ・栗・牛スジ・味噌など
(平性・・温めも冷やしもしない食材)
 鮑・イカ・干しシイタケ・牡蠣・豚肉・鴨肉など
(涼性・寒性・・体を冷やす食材)
 カニ・昆布・シジミ・タコ・ワカメなど
※トップ画像の牡蠣は「甘味」「鹹味」の両方をもっています。

日本人は塩を摂りすぎといわれて久しく、塩をいけないものと考える風潮があります。
しかしここでいう「鹹味」は先に書いたように単なる塩のしょっぱさではなく
ミネラル豊富な自然の塩味です。
魚介類はそのもののもつ塩味があるため、かえって塩を控えた料理もしやすいと思います。
だからこのような「鹹味」を毛嫌いして避ける必要はありません。
食べ過ぎず適度にいただくなら、むしろ「腎」によいのです。
「鹹」は「腎」に影響しやすい。
ほどほどは◎、摂りすぎはむしろ害になると覚えてください。

また体を冷やす食材を一切食べてはいけないと言う訳ではありません。
そのようなときには
身体を温める食材といっしょに調理したり
別のメニューを体を温めるものにすればよいのです。
カニ酢(カニ+酢)
シジミ汁(シジミ+味噌+ネギ)
穴子の昆布巻き(穴子+昆布)
などは、温めるものと冷やすものを組合わせる好例です。

以前
【薬膳のキホン⑧ 五味~甘】

「先天の精」「後天の精」という言葉をご紹介しました。
こんな説明文です↓

精とは、体の基本です。エネルギーの源ともいえるかもしれません。
精は二種類あると考えられています。
「先天の精」は、両親から授かり持って生まれた天賦の精です。
「後天の精」は、食事によって体に取り込まれる精です。
この二つの精はどちらが欠けても生きていけません。

ここまで↑

「甘」のグループの五臓は「脾」で、消化吸収を司るため
「後天の精」を体内にとり入れるという大切な役割をもっていると説明しました。

そして今回取り上げている「鹹」に対応する五臓は「腎」。
両親から受けた「先天の精」は「腎」に貯えられていて
これを使いながら私たちは生き
ゼロになったときに死を迎えるのです。
つまり「腎」は特に老化に大きく関わる部位なのです。
その他このグループに属する体の部位は
「膀胱」「耳」「骨」「髪」などですが
高齢になると
頻尿や尿漏れが起き
耳が遠くなり
骨は脆くなり
髪はツヤや潤いを失くし抜け落ちますね。

食養生をして、寒い季節に「腎」を大切にすることは
若々しく健康に生きていくために非常に大切なことなのです。

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