#2 祖父
祖父が亡くなって、数年が過ぎた。
私の高校の入学式、その前日。
病院で息を引き取った。
私はその場に居合わせていなかった。
入学式当日がお通夜、翌日に葬式が行われた。
私は入学1日目にして、午後の授業を早退した。
父は私には葬式よりも新生活を優先させようと
葬式に参列させるつもりはなかったらしいが、
母はじめ親族が許さなかった。
私だってありえないと思う。
葬式中は涙が止まらなかった。
顔、声、匂い、砂糖をまぶしてトースターで焼いてくれた食パン
あまりにも憶えている、身近な人がいなくなるのは初めてだった。
「人は、いつ死ぬかわからない恐怖心を麻痺させて生きている」
私の人生観の一つである。
ただ私は、その麻痺が人より少し弱いのかもしれない。
身近な人が、大切な人が、家族が死ぬことを常に恐れている。
大切な人がいなくなる想像をしない夜はない。
側からみれば一種の気狂いだろう。
高校入学前の春休み、祖父のお見舞いにできる限り行けばよかった。
高校合格したよって、進学校だから勉強もっとがんばるねって、
だから応援してね!
って、自分の口から伝えたかった。
もう今ではどうしようもできない後悔だ。
きっとこれから先の人生、大切な人を失くす度
同じような後悔を抱えるのだろう。
今でさえ、後悔でいっぱいなのに。
赦されるのであれば、生きている間だけでも
そばにいたい。
そんな思いは子どもじみた我儘だろうか。
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