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倉敷で漕ぎ出したばかりのワイナリー

7月の岡山ワイン旅。
最後に訪れたのは倉敷市船穂(ふなお)町に昨年新たにオープンした醸造所、GRAPE SHIPさん。

代表の松井一智さんは、倉敷市生まれでフランス料理の元シェフ。
料理の勉強のため渡仏していた時に、大岡さんのワインに出会い、ワイン造りの手伝いをしたことがきっかけで、帰国後地元に戻り一度は飲食に戻ったそうだが、その後ブドウ栽培農家に転身された。

ここ、船穂町はマスカット・オブ・アレキサンドリア(以下略:アレキ)の一大産地でありその中でも特に高品質なアレキを生み出してきた地域。
明治時代からアレキを栽培してきた歴史的な地域だ。

とはいえ現在は農家の高齢化に伴い耕作放棄されていってしまう畑も多く、加えて栽培がより容易なシャイン・マスカットへの切り替えが多いそう。
そのような状況の中、伝統的なアレキを残そうと積極的に栽培に取り組んできたのが松井さんだ。


美観地区などある倉敷の街並みを背にし、高梁川を渡った先にある船穂町。
住宅地を抜け車でどんどんと坂道を登り着いた先に醸造所がある。
最後にこれでもかという斜度の坂道を登りきり、醸造所に到着した。

醸造所の目の前にはぶどう畑が広がり、眼下には高梁川や倉敷の街並み、ずっと向こうには四国さえも見渡せるとても眺めの良い場所だ。

醸造所は木の温かみが感じられる木造の建物のようだ。
外壁のランダムに並べられた木板が素敵。

木の温かみを感じる醸造所。眺めの良い高台にある。

醸造所内を見学させてもらった。
中は天井を高くして暑さを和らげる構造になっている。

2階から1階へ、グラビティー・フローといって、ポンプを使わずに重力を使う方法でワインづくりが行えるようになっている。
これは先に訪ねた大岡さんの醸造所でも採用していた方法と同じだ。

天井が高い醸造所内。生食用のぶどう箱が山積みになっている。
出番を待っているタンクや醸造器具たち

セラーの中にも入らせてもらい、ワインをテイスティングさせてもらえることに。

ワインを熟成中の木樽がたくさん
色のグラデーションが綺麗なワインたち

可愛らしい女の子のラベルのワインは松井さんの娘さんを描かれたもの。
7月にリリースされたばかりのmellowという微発泡の白ワイン。
アレキ100%でつくられ、爽やかな香りとともにマスカットの華やかな香りも楽しめ、やさしく爽やかに楽しめる夏向きのワインだ。
華やかな香りに飲み心地の良いワインで、おいしい!
岡山のワインを知るまで、アレキで造られたワインを飲む機会がなかったがとても魅力的な品種だと思う。

アレキを遅摘みしてつくったワインなど、まだリリース前のものも次々と味見させてもらいとても貴重な体験になった。
松井さんもリリースのタイミングを見計らっていたようだ。
どのタイミングでリリースされていくのか楽しみだ。


試飲後に醸造所の前にある畑も見せてもらった。

畑からは倉敷の街や瀬戸内海が望める

醸造所を出ると目の前に畑があり、高台にあるので倉敷の街並みや瀬戸内の景色が望める絶景スポットになっている。
畑は醸造所の目の前や半径500m以内にあり、台風は少ないが雨は降るそうで、雨除けのビニールが張ってある。

こちらは黒ぶどうのシラーの畑
案内してくれる松井さん

はじめにシラーの畑に案内してもらった。
畑は結構傾斜があり、加えて花崗岩質の土壌なのでとっても水はけが良いそう。
シラーは樹勢が強いらしく、大きな房がたくさん実っていた。

草取りなどの作業は、地元の福祉施設の就労支援の一環で障がい者の方にやってもらっているそう。
地域の人とのつながりも大事にしている松井さん。とても素敵な取り組みだと思う。


今年初生りした小公子の畑も見せてもらった。

小公子の畑を案内してくれる松井さん
まだ樹齢が若い小公子の樹
富吉の小公子よりも色づきが進んでいる印象

今年初めて実をつけた小公子のぶどう。
毎年つくろうと考えているロゼの微発泡ワインにこの初生りした小公子も入れる予定だそう。
松井さんのワインはまだそう多くは味わっていないが、ロゼの微発泡ワインは先日仲間と一緒に飲んでとても印象に残る美味しさだったので、この小公子が加わったらどんな風になるのかとても楽しみだ。

松井さんはアレキをはじめ、多くのワイン用品種の栽培にも取り組んでいる。
そして生食用のアレキの栽培も並行しながら行っている、ぶどう栽培のスペシャリストだ。
2足のぶどう栽培のわらじを履きながらのワイン造りは容易ではないはずだが、苦労を感じさせない松井さんの楽しそうな表情に感銘を受けた。

まだはじまったばかりのワイナリー、GRAPE SHIPさん。
この名前は、松井さんのお父さんが釣船屋だったことと、船穂の町の名前に由来しているそう。
これから少しずつ漕ぎ出していき、ワイナリーの歴史が刻まれていくのを私もワインを楽しませてもらいながら応援していきたい。


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