見出し画像

/// 展覧会/// アートの中の自然を愉しむ /// 開催予告

皆さん、こんにちは。私たち姫路 三木美術館では1年に4回の展覧会を開くようにし、その折々にあう美術作品を愉しんでいただけるようにしています。これから開催予定の展覧会「アートの中の自然を愉しむ」について少しご紹介させていただきます。開催は2023年3月2日(木)〜2023年5月27日(日)までですのでどうぞお見逃しなく!

「アートの中の自然を愉しむ」にこめた想い

いよいよ3月となりますが、旧暦にはそれぞれその時季にふさわしい呼び名が付けられていました。みなさんもご存知のように3月は弥生。その語源は「草木がいよいよ生い茂る」という言葉が変化していき、弥生と呼ばれるようになったのだとか。けれども実はこの3月にはまだ別名もあるのです。桃月、季春、花見月など。旧暦は現在の季節感とは少しずれてはいますが、こうやって月の呼び名を眺めると3月は今も昔も日本人にとって自然を愛でる月であることは間違いなさそうです。

まだまだ寒い日が続いていますが、3月の弥生が自然の息吹を感じる月であるなら美術館の中も思いきり自然を感じていただける展覧会にしようと考えました。

草木や花を題材にした絵画もさることながら、萩焼の魅力もこの機会にお伝えしたいと思います。焼締が少なく土本来がもつ魅力を存分に発揮してくれる焼き物です。使うほどに焼き物の表面からお茶などが染み込み、器の色が時間をかけて変わってきます。あたかも呼吸するようにして存在する萩焼はまさに自然そのもののあり方に通じると思います。

三木美術館で作品を通じて自然と触れ合ってきただきたく思います。皆様のお越しをお待ちしております。

展示品の一部をご紹介します 〜萩焼〜

萩焼の歴史は豊臣秀吉の朝鮮出兵にまで遡り、またそれは茶の湯の歴史とも重なります。土の配合、釉薬のかけ具合、ヘラ目 (ヘラ削りのよってできた風合い)、登窯での焼き具合から多様な姿が生み出されます。そしてまた時をかけて器自身が変化していくという様子が茶人の心を捉えて離さなかったのでしょう。今や日本を代表する焼き物の一つですが、萩焼と呼ばれだしたのは明治以降のことです。

作品タイトル:鬼萩割高台茶碗 作家名:十一代 三輪休雪

制作年:1985年以降 人物撮影:下瀬 信雄(1993 年)


この茶碗を作陶した十一代 三輪休雪についてご説明する前にまずは三輪窯について。現在、萩焼の窯元は相当数ありますが、三輪窯は萩焼屈指の名門窯。1663年に初代休雪が萩毛利藩に召し抱えられたことから御用窯となり現在に至るまでその名を知られています。明治維新の際、藩の廃止とともに後ろ盾は消えましたが、三輪窯の火は守り続けられてきました。そして十代、十一代 休雪は重要無形文化財「萩焼」保持者(人間国宝)として認定されたのです。
この茶碗を作陶した十一代 休雪は萩中学校を卒業後、兄の十代 休雪を助けるため早くから家業に専念したといわれています。1960年に日本工芸会正会員に推挙。1967年、57歳の時に兄が「休和」と号して隠居すると同時に跡を継いで十一代を襲名しました。
萩焼伝統の藁灰釉を兄と共に改良を重ねて「休雪白」と呼ばれる白萩手を確立。そして第34回日本伝統工芸展で初めて「鬼萩」の名の付く作品を発表しました。「鬼萩手」とは精製した素地土に砂礫を再び混ぜた粗い質感が特長の萩焼を指しますが、これはそもそも精製された素地土をそのまま用いるきめ細かな「姫萩手」と呼ばれる萩焼に相対するものとして生まれた作風であり呼称です。十一代 三輪休雪はこの「鬼萩」という名によりふさわしい荒々しく力強い姿を作りだすことに情熱を注いだといわれています。本茶碗もその特徴を如実に表す作品となっています。

作品タイトル:萩陶彩華大皿  作家名:十二代 坂高麗左衛門

制作年:不詳

萩焼の起源は約400年前、豊臣秀吉とともに朝鮮半島に渡った毛利輝元が、陶工李勺光、李敬の兄弟を伴って帰国し窯を築いたことから始まります。坂窯は弟の李敬を初代とする窯元で三輪窯と並ぶ萩毛利藩の御用窯となりました。 萩焼は土の風合いを大切にした素朴なものが多いのですが、十二代 坂高麗左衛門がその萩焼に新たな風を吹き込みました。東京藝術大学日本画科を卒業した十二代坂高麗左衛門は坂家伝来の萩焼に自らの専門分野であった日本画の絵付けを施したのです。今回の展覧会ではこの十二代 坂高麗左衛門の萩焼をご覧いただけます。薄雲がたなびく満月の夜に牡丹の大輪の花が美しく咲いています。十三代 坂高麗左衛門が亡くなったあと長いこと空席となっていた陶号を2022年6月に34歳の坂悠太氏が十四代 坂高麗左衛門を襲名。「萩焼はずっと何百年も同じものを作ってきたわけではない」と語るとおり、伝統を守りつつ挑戦をする萩焼の窯が送り出した革新的な作品です。

                     [企画制作/ヴァーティカル]



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?