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Week1-1)授業で創造性を促すには

MediaSmartsのオンライン講座「Making Media Across the Curriculum」、一週目のトピックは「創造性」。MediaSmartsの教育ディレクターであるMatthew Johnson氏から「創造性とは何か、創造性を促すにはどうしたら良いのか」について動画でレクチャーがありました。

その内容を以下にまとめます。

1.創造性と学校での評価

学校のシステム上、創造性に報いることはない、と言う人がいる。それは間違いではないが、正確に言えば、私たちが「創造的」であるとみなした一部の生徒は、ある種の報いを受けている。低学年の時に創造性を褒められたら自信がつく。生徒は「創造的」な人とそうでない人がいると認識し、生涯に渡って自分の評価を引きずることもある。
生徒が自分を「創造的」だと認識しているかどうかに関わらず、生徒は皆、インスタに写真を投稿する、TikTokに動画を投稿するなどの創作活動を行っている。生徒がどんな状態かではなく、生徒が何をしたか、を考える時に、私たちはすべての生徒は創造的であり、授業でそれらの力を発揮することができると思えるだろう。

2.創造性についての神話

創造性についての神話はいくつかあるが、それらは私たちが自分自身を創造性があると認識することから遠ざけ、創造性を教室から遠ざけてしまう可能性がある。

① 創造性は芸術系教科でのみ問われる
創造性への言及はほとんどが芸術系教科に限定されているが、創造性はすべての分野の教科においても同様に重要な要素だ。

② 芸術家は孤独
これを信じている人は多い。例えば、数百人で制作された映画は「作者」として監督を想像するが、実際には多くの人によって制作されている。監督の独特なスタイルは編集者や撮影監督のものの場合もある。つまり、芸術は多くの場合、チームで制作される。

③ 自己表現としての創造
創造が自己表現と定義されることで、生徒が余暇にメディアを作ることがあっても、評価の対象になる授業で制作することを嫌がる。

④ 何もないところから生み出す
創造物は新しい独創的なものだと思いがちだ。しかし実際には、ほとんどの場合、過去の仕事の変形か、既に存在するもの同士の結合、存在するもので新しいものを作る、新しいツールや技術やアプローチを探す、ことを創造性としている。

⑤テクノロジーが必要
テクノロジーはメディア制作を簡単に誰でも本格的に行うことができるようにした。しかし、ただの印刷用紙でも簡単で有意義なメディア制作をすることができる。

3.創造性を育て発展させるには

生徒が授業でメディアを作ることに消極的になるのには理由がある。
・個人的な批判に晒されるのではないかと思う
・上手く制作できるかどうか自信がない
・創造性を評価する時、不公平、恣意的、個人の才能に重きを置いて評価されるのではと思う

このようなプレッシャーを回避するために3つの方法がある。
① 制約を課す
何も書いていない紙を渡して「さぁやってみましょう」と言えば、生徒にとって大きなプレッシャーになる。生徒が自由にできることと制約のバランスを取ることで、「創造的」でなければいけない、というプレッシャーから生徒を解放することができる。そして、その制約がある中でいかに良いものを作るか挑戦することができる(動画は4分以内でなければいけない、という制限)。
強調したいメディアの側面に注意を向けさせること(漫画は少なくとも三コマ以上書く、という制限)は、選択を制限する(漫画のコマは水平でなければいけない、という制限)より効果的だ。
生徒に創造的にならない自由を与えることで、創造的になることを助けることもできる。必要以上に創造的になる必要はなく、時にありふれた選択をすることを許す。(レストランでランチの注文をする時に、「創造的」であることは求められない。状況に合わせた適切な選択をするだけで良い。)

②土台を与える
明確な手順を与えることで、プロジェクトに圧倒されず、プロジェクトを分割して対応することができる。また、過程ごとに教師からのフィードバックを得、繰り返し対応することで、創造性とは何かをすることである、という考えを強化することができる。

通常、このようなステップがある。
1)媒体について学ぶ
メディアの消費者としてではなく、メディア制作者として媒体について学ぶこと。媒体の全ての要素をカバーする必要はないが、基本的な「文法(カメラアングルの効果など)」を学ぶ必要がある。

2)計画を立てる
制作物の内容をしっかり考える。もし生徒が意見を出すことに抵抗があったり、上手く話し合いが進まない場合は、制約を追加するなどの工夫をする。悪いアイディアしか出してはいけないブレーンストーミング、韻を踏んだ対になった台本しか書いてはダメ、多くの雑誌を与えその中から面白い画像を切り取ってもらう、など。具体的な絵コンテ、台本、フローチャートの作成を行うことは集中力を維持するのに効果がある。
計画がしっかり立てられているか確認し、準備をしっかり行うことで、後の作業がスムーズにいくことを伝える。
教師は計画を確認することで、生徒の理解度を知ることができ、指導に役立てることができる。

3)撮影準備
制作を行う時に事前に行うべきすべてのこと。機材をそろえるなどの簡単なものから、画像や音を見つける、など様々な難易度ものがある。次のステップから戻ってくることもできるが、できる限りすべて終わっていることを確認してから次のステップに進むことが好ましい。

4)制作
撮影、絵描き、コーディング、レコーディング、クラフティング、など。重要なのはこのステップまでに大切な決め事はすべて終わっている、ということだ。

5)制作後
広告文の作成や再生可能なファイルに変換する、など。テクノロジー(特別なソフトやアプリ)を使用する場合、生徒はここで問題を抱えることが多い。生徒がこのステップに入る前に教師が十分に知識を備えておく必要がある。

6)お披露目
教師は教室外で生徒のプロジェクトを披露するのに抵抗があるかもしれない。そのことにはメリットとデメリットがあるが、他の人とプロジェクトを共有することは大切だ。

③物語を話す
子供たちが創造的になるために最も良い方法の一つは、子供たちに物語を話してもらうこと。
ただ、一部の生徒はとても不安に感じてしまうので、話の構造を教えることで不安を取り除くようにする。できる限り物語を単純化すると良い。「毎日…、そしてある日」の表現を使う。この物語の構造は、簡単にルーチンを書き、それがどのように中断されたかを書くことができる。
例)・あなたが犬を呼ぶと、あなたの車が代わりにくる
  ・あなたが湖に浮かぶ石の上を歩いていると、人魚にぶつかった
これらの物語の続きを何通りも考えることができる。生徒に想像してもらうことを重要視する。

このレクチャーを受けて

生徒がなぜ参加することをためらうのか、についての説明と対策方法の紹介は、現場で生徒と接する先生にとって、とても参考になるのではないか。このメディア制作の授業以降の生徒の気持ちも想像し解説していることに好感が持てる。学校で授業を受けることは長い人生のほんの一部分であって、授業を受けた後の人生に良い影響を与えること、は授業にとって最も大切な要素の一つなのだ、と考えさせられる。


トップ画像:オンライン講座の一週目の講師レクチャー動画のキャプチャ


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