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Week4-1)メディア制作授業の評価方法

MediaSmartsのオンライン講座「Making Media Across the Curriculum」、四週目のトピックは「評価」。MediaSmartsの教育ディレクターであるMatthew Johnson氏から「メディア制作授業の評価方法」について動画でレクチャーがありました。

その内容を以下にまとめます。

1.メディア制作の授業評価を教師が避ける理由

① 教師は自身のメディアの知識に自信がない
② 生徒の創造性を傷つけてしまうのではないか不安に思っている
③ 生徒の活動を成績に換算することは難しいと考えている

上記の理由で教師は生徒のメディア制作の授業評価を避けがちだ。メディア制作のすべての活動を評価する必要はないが、メディア制作では多くの時間と労力を使うことが多いので、なんらかの評価は必要だ。
特に中学生くらいの生徒は、授業の力の入れどころを戦略的に決定するので、真剣に取り組んでもらうためにもメディア制作を評価することが必要になる。
大切なことは、①評価は教師が生徒の上達を支援するものであること、②根本的な問題「評価エラー」避けることである。(※「評価エラーは後述」)

2.評価をする時にまず最初に考えるべきこと

・なぜ評価するのか
生徒の上達を助けるため?
達成度のレベルを全体の中に位置づけるため?
・評価を通じて何をするのか
特別なサポートが必要な生徒、さらに挑戦できる生徒を見つけるため?
成績を付けるために必要だから?

通常、複数の目的がある。評価は部分的に形成評価であるべき。形成評価はプロジェクトが終わっても、生徒たちの役に立つ。

3.良い評価方法・悪い評価方法

◆良い評価方法
学生が苦労している箇所や成功している箇所に関する具体的な情報を提供する記述的フィードバック(※具体的なフィードバックと、褒め言葉を混ぜてはいけない)
・評価を通じて生徒に新たな気づきを与える
・生徒が改善しているかどうか確認できる
(→改善しているか確認するために同じ学習目標を2度設定し、評価しても良い)
◆悪い評価
学生のパフォーマンスに評点や数字をつける評価的フィードバック
・すでに知っていることを確認するだけ
(→評価が新たな気づきを与えない場合は、同じことを評価しすぎている可能性がある)
・主要な学習目標のすべてを評価していない、プロセスや制作物を評価していない、学習目標の一部ではないものを測定している
(→評価が公平でない、正確でない)

4.評価エラー(評価と実際の達成度の差)

生徒が受けた評価と実際の達成度の差を「評価エラー」と言う。これには内/外的要因があり、それらは同時に起こり得る。
・内的要因となり得るもの:健康状態、気分、障害、テストを受けるスキル、スクールカースト
・外的要因となり得るもの: 正しい学習目標が評価されているかどうか

例)学習目標が明確に書かれていない(外的要因)+生徒の言語理解能力(内的要因)=評価エラーの発生

5.評価方法を決める時の2つの質問

① 生徒に期待されているコンテンツやスキルは何か
② メディアの文法をどれだけうまく使いこなしているか

◆評価を正しく行っているかの確認方法
まず、「教師の指導だけを受けた生徒」より、「すでに何らかの予備知識や経験がある生徒」の方が著しく良い成績を取るかどうかを想像する。もし経験のある生徒が著しく良い成績を取る場合は、教師の指導が表面的な要素や技術力に重きを置きすぎている、ことの証拠である。

6.生徒が使用する技術やツールの選択方法

技術やツールが何を自動化しているのかを十分に意識し慎重に検討する必要がある。Mitchel Resnickはタスクの自動化を「Black Boxes(ブラックボックス)」と名付け注意を促している。

◆ブラックボックスの例
・(〇)評価したくない部分を自動化する
理科の授業でアニメーションを制作する場合に既製のグラフィックを使う
・(×)評価するべき部分を自動化する
美術の授業でアニメーションを制作する場合に既製のグラフィックを使う

※ツールは評価エラーを生み出したりタスクを困難にすることもある。

7.授業でメディア制作を行うメリット/デメリット

・学生が成功とはどのようなものかをよりよく理解した上で始めることができる(小論文や研究室のレポートなどの従来の学校ベースの評価に比べて)
・評価にあまり重要ではないことに力を注いでしまう危険性(学んだことを使ったゲームではなく、生徒にとって良いゲームを作ることに注力してしまう)

8.生徒に評価基準を理解してもらう方法

・評価ツールの作成に生徒も参加する
(モデルや例を使ってカリキュラムのユニットを作成する)
・消費者としてではなくメディア制作者として評価されることを説明する
・事例を分析する
(良い例・悪い例を提示し改善点を議論する)

9.段階ごとに評価する(評価のマルチステップ化)

まず、どの段階で評価を行うのかを決定する。すべてのステップで公式な評価をする必要はないが、それぞれのステップで生徒へフィードバックを行うなど、何かしらの対応をした方が良い。
実際のゲーム・映画・音楽制作でも、この繰り返しチェックするステップを踏んでいる。段階ごとに評価することで、技術のボトルネックを解消するだけでなく、生徒の学習を評価する機会が増え、評価エラーを減少させることができる。技術、ツール、メディアのどこで躓いたのか教師が認識することができる。

10.生徒の自己評価を授業に利用する

生徒の自己評価(振り返り)は、生徒の学習の記録という意味と、これを受けて教師が授業を修正する機会を与えてくれるという意味の2つがある。

◆対応例
・自分がどのように評価されているかが明確でないので、文法や内容よりも表面的なスキルに重点を置いてしまっている
 →評価基準を明確に説明する
・ツールの使い方がわかっていない
 →ツールの使い方についての追加指導を行う

このレクチャーを受けて

今回はメディア制作を授業で行う時の評価についてのレクチャーだったが、これは他の教科でも十分応用できるものだと感じた。私が生徒だった時のことを振り返ってみると、どんな基準で評価されていたのか知らなかったし、伝えられていなかったように思う。授業にはそれぞれ目的があり、その目的達成のために行われていることを考えると、学習目的とそれに伴った評価基準を生徒が理解し、それに向かって対応していくのは授業本来のあるべき姿のように思えた。

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