カナダの教育者向け講座を紹介します【教科横断型のメディア作り】

カナダ政府が出資し、カナダのNPO法人MediaSmartsが提供しているカナダの教育者向けの1ヵ月間のオンラインコース「Making Media Across the Curriculum」。私は受講対象者ではなかったが、受講を申し出たところ許可を得ることができた。せっかくなので、講義内容などについて紹介していきたいと思う。（全10回くらいの予定）

１．MediaSmartsとは

今回のオンラインコースを提供しているMediaSmartsは、子どもや青少年が、積極的に情報に精通したデジタル市民としてメディアに関わるための批判的思考力を身につけることをミッションとしており、1996年からカナダの家庭・学校・コミュニティ向けに、デジタルおよびメディアリテラシープログラムやリソース開発を行っているNPO法人だ。
スポンサーには、TELUS（カナダの大手通信会社）、cira （The Canadian Internet Registration Authority（カナダインターネット登録局））、Bell（カナダの大手通信会社）、Facebook、Googleなどの大企業が名を連ねている。

２．メディアリテラシーとは

１ コンピューターや先端的な情報通信機器を使いこなせる能力。
２ メディアに対して主体性を確立すること。コンピューターネットワーク・テレビ・音楽・映画・出版物などさまざまなメディアが伝える価値観・イデオロギーなどをうのみにせず、主体的に解読する力をつけること。
出典：コトバンク「デジタル大辞泉」

３．カナダのメディアリテラシー教育とは

カナダでは州ごとに教育制度が異なる。オンタリオ州では1987年に世界で初めて「国語（英語）」の教科にメディアリテラシーを取り入れた。90年代のはじめには各州で教師を中心にメディアリテラシー推進団体が結成。現在では小学校から高校までのカリキュラムにメディア教育が組み込まれている。
参考：菅谷明子「メディア・リテラシー」岩波書店，2000年

４．受講する「Making Media Across the Curriculum」とは

日本語訳すると、「教科横断型メディア作り」だろうか。
◆対象：幼稚園から高校の先生
　※カナダでは幼稚園から高校までが義務教育なので、義務教育課程に関わる全ての先生、となる
◆目的：教室でメディア制作を行い、教科を横断して学習の可能性を見ることができるようになるための準備。
- メディア制作とメディア消費を区別する。
- さまざまなタイプのメディア制作に関連した実践的・技術的スキルを学ぶ。
- さまざまなタイプのメディア制作が教室での実践でどのように使用できるかを探る。
- 教室でのメディア制作のためのさまざまなメディア、技術、ツールの価値と限界を分析する。
- 教室でのメディア制作の使用に関連する課題を特定し、それに対処するための準備をする。
- メディア制作を取り入れた授業をデザインし、評価の目的でメディア制作を使用することも含めて、メディア制作を取り入れた授業をデザインする。
- メディア制作に基づく評価課題に対応する模範を作成する。
- 授業でメディア制作を採用する準備ができているかどうかを振り返る。

５．プログラム内容

1週目：創造性
2週目：テクノロジー
3週目：カリキュラム
4週目：評価

毎週、下記の流れで進行する
① 導入ビデオを見る　→ディスカッションに参加
② ゲスト講師の動画を見る　→ディスカッションに参加
③ 参考資料を読む　→ディスカッションに参加
④ 課題の提出　→ディスカッションに参加

６．この講座の受講について

1週間ごとに新しい資料がアップされる、4週間のオンラインコース。各自好きな時間に取り組むことができる。受講者はオンラインディスカッションに参加する必要がある。オンラインディスカッションは予め与えられた質問についてコメントし、そのコメントに別の受講者が返信することで成立する。多くの人が参加すればするほど個人としても集団としても有意義な学習機会になるため、積極的に参加することが推奨されている。

終わりに

私はコロナ以前にカナダ、オンタリオ州で生活をしており、カナダ人のメディアリテラシーへの理解は日本のそれに比べてかなり高いと感じていた。今回はカナダ人のメディアリテラシーの理解を支えている教育現場で働く先生方が、どのような研修を受けているのかを知るために参加を決めた。ディスカッションに参加することで、講師だけではく様々な現場の先生の意見や考え方を知ることができるはずなので、その点にも注目していきたい。参加を許可してくれたMediaSmartsに感謝をし、受講したいと思う。