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Week3-1)メディア制作をカリキュラムに取り入れる方法

MediaSmartsのオンライン講座「Making Media Across the Curriculum」、三週目のトピックは「カリキュラム」。MediaSmartsの教育ディレクターであるMatthew Johnson氏から「メディア制作をカリキュラムに取り入れる方法」について動画でレクチャーがありました。

その内容を以下にまとめます。

1.「カリキュラムに取り入れる時間がない」問題

調査によると、授業でメディア制作を行う時に、伝統や制度が障壁になっている場合が多いことがわかっている。その他にも『ほとんどの教科でメディア制作を行うことが想定されていない』『やるべきことが多く、メディア制作を行う時間がない』という問題もある。教師は核となるコンテンツの時間を少なくしたり、メディア制作に時間をかけすぎないように十分注意する必要がある。

2.問題は「教科の統合」で解決する

芸術とテクノロジーの統合に関する研究では、問題は『複数の教科に対応したメディアプロジェクトにする』ことで解決できる、と言う。
例)“Oregon Trail”や“Cross Country Canada”といったカナダの古典的教育ゲームと統合する場合、言語クラスでは「文章とメディアの選択」、 科学もしくはICTクラスで「ゲーム制作」、社会科で「ゲームの内容を考える」ことで、複数の教科を使って対応することができる。

3.魅力的な授業とは何か

生徒は本当に面白い課題が与えられると、より多くの課題に取り組み、より多くの成果を得ることができる。タスクが難しいと感じた場合でも克服することができ、そして克服したい課題だと見なす可能性が高くなる。

◆プロジェクトを魅力的にするために必要不可欠な6つのこと
 ① 生徒がカリキュラムの中心となる「大きなアイデア」を探求する
 ② 生徒に本物のスキル、専門家が実際に使用しているスキルを実践させる
 ③ 生徒が意味のある決定をすることができる
 ④ 正解やアプローチが一つではない
 ⑤ すべての生徒に成功する機会を公平に与える
 ⑥ 時間などの現実的な制約の中で、生徒が完成させることができる

シーモア・パパートは以上のようなプロジェクトを「Hard Fun」と呼び、メディア制作はそのようなものになり得ると言う。

多くの場合、教師は教師しか読まないであろう作文の課題でも(生徒にとってあまり意味のないもの、教師が成績を付けるためにだけ使われるもの)、生徒がその課題にやる気を持って一生懸命取り組むことを期待してしまう。他方で、どのように評価されるかに関わらず、プロセスと成果物の両方が生徒にとって意味のある「Hard Fun」な活動は、すべての生徒にとって魅力のあるものになる。
もし生徒が消費者となって楽しむようなメディアを作っているのであれば、何が良くて悪いのかという意見を既に持っているという点で、そのプロセスは意味のあるものになる。
もし生徒がメディア制作をしていて、制作したものを教師以外の人にも見てもらえる状況(たとえそれがクラスメイトだけだとしても)にすれば、質の良い作品を作る努力をすると考えられるので、その制作は意味のあるものになる。

4.生徒の内的モチベーションを高める5つの方法

 ① コントロールと選択の感覚を持っている
 ② 頻繁に与えられる具体的なフィードバック
 ③ 生徒が自分のパフォーマンスを自分で正確に評価できる
 ④ 生徒の学校外の生活に関連した本物の課題である
 ⑤ 自分の自信を脅かさずに挑戦できる(=Hard Fun)

5.メディア対カリキュラム

メディア制作の授業はカリキュラムに合致している必要がある。メディア制作をカリキュラムに組み込む時には、まずコンテンツを考えるのではなく、生徒に何をしてほしいのか、3つの分類「学びや、学習の記録」「内容を伝える」「学んだことを解釈する」から考えると良い。
一つのプロジェクトで多くのことをするのは注意が必要。すべての要素を合わせて行うのではなく、小出しにして取り組む方が管理しやすい。

6.メディア制作プロジェクトの順序

メディア文法(2回目の講義で解説済み)の重要性を生徒が理解したらプロジェクトを始める。教えるのに慣れるまでは意識的に4つのプロセスを考えると良い。
 ① I DO:教師が説明し、モデルを作り、実演する
 ② WE DO:生徒は教師から直接サポートを受け練習する
 ③ YOU DO:生徒は教師から最小限のサポートを受け対応する
 ④ RE DO:生徒は教師(または他の生徒、または自己評価)からのフィードバックに基づいて自分の作品を修正する
(注意)
・生徒がメディアやテクノロジーに精通していると思い込んではいけない。
・生徒のメディア経験が豊富であっても、メディア制作の視点からそれらを見ているというわけではない。→教師はメディア文法を教えるために時間を使う必要がある。

メディア文法はシンプルに説明する、または制作のデモンストレーションを行うのも良い。デモンストレーションをする時は、教師が事前に撮影したものを提示しそれを説明する。教師の提示する例は「素晴らしいもの」である必要はなく、実際の例であればどんなものでも良い。
その他には、生徒と一緒にサンプル作りや、生徒が初心者向けの課題(3コマ漫画を書く、60秒の動画制作など)に取り組み、教師が無理ない範囲で直接サポートするのも良い。特にすべての生徒が慣れているわけではないテクノロジーやツールを使う場合は、本番の課題の前にそれらを使ってみても良い。
クラスが一緒にモデルや模範となるものを分析し、良い例について考え特定することは、消費者からクリエイターへ視点を変えるのに大きく役立つ。

7.チームで作品をブラッシュアップすることが大切

Jason Ohlerのeighty-twenty ruleというものがある。これはプロジェクトの最後の20%(「プロフェッショナル」に見える作業・成果物につながる改善)は生徒の時間と努力の80%を必要とする、という意味だ。

プロジェクトは、「グループワーク」ではなく「チームワーク」であると考えると良い。制作プロセスの中で、生徒にチーム内のさまざまな役割をローテーションで経験させること。

必ずI DOからWE DOのすべてのステップを順番に踏まなければいけない、というわけではない。もし生徒が理解していないと感じれば、ステップを戻って対応するなど、臨機応変に対応することも必要だ。
教師がするべきは、最終的な作品が完成する前に生徒が良く考え自己評価をし、作品を変更するプロセスを有効活用することだ。

このレクチャーを受けて

教科横断型メディア制作は大変魅力的だが、教師側が授業をきちんと組み立ててからスタートしないと学期中に授業で取り組むべき項目が抜けてしまう恐れがあり、危険な面もあるように思う。しかし、教科書ベースではない実践の場での気づきや経験は、間違いなく生徒にとって良い機会になり、生徒を長い目で見た時に確実にプラスになるだろう。メディア制作を通じた「Hard Fun」な経験は生徒にとって貴重だ。

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