がんのリハビリテーション【緩和ケア病棟編】
リハビリテーションは、ほとんどの場合、すべての人が対象ですが、「終末期のがん患者さんに本当にリハビリは必要なのか?」といった質問を、医師や事務職からいただくことがあります。今回は、緩和ケア病棟におけるがん患者さんのリハビリの重要性についてお伝えしたいと思います。
これは、一般的な話と言うより、以前、私が働いていた病院での経験に基づいた内容として、記事としていますので、その辺をご了承ください。
私の以前勤めていた病院には、緩和ケア病棟がありました。緩和ケア病棟に入院する方は、多くの場合は治療が困難な終末期のがん患者様です。緩和ケア病棟で亡くなる方もいますが、投薬などにより症状が落ち着けば転院や退院される方もいらっしゃいます。入院基準については、病院事に違う部分もあると思いますが、下記のサイトが分かりやすいため、参考にしてみてください。
ちなみに、緩和ケア病棟の入院費は多くの場合、定額制です。
定額制と言うことで、リハビリを行っても、行わなくても、患者様の医療費は変わりません。そのため、リハビリを行っても病院の収益にはなりません。しかし、以前、勤務していた病院では、必要であれば、緩和ケア病棟の患者様にもリハビリを提供しようと言う方針が取られていました。リハビリを行っても収益に繋がらない中でも、緩和ケア病棟の患者さんにリハビリを行うことには、私自身重要な意味があると感じて行っていました。
緩和ケア病棟でのリハビリが必要な理由
1. 在宅復帰の可能性を高めるため
緩和ケア病棟に入院したからといって、全員がそこで最期を迎えるわけではありません。自宅に帰りたいと望む方や、施設に行きたいと考える方もいらっしゃいます。リハビリを通じてある程度ADLが保たれると、自宅での生活が可能になる場合もあります。
2. 入院中のADL低下を防ぐため
緩和ケア病棟の患者さんは、痛みや倦怠感から長時間ベッドで過ごすことが多く、その結果、筋力や体力の低下が進みます。筋力や体力が低下すると、歩行やトイレ動作が困難になることもありますが、リハビリによって身体機能を維持・向上させたり、低下するスピードを遅らせたりすることが可能です。
3. 患者さんの希望に寄り添うため
私が勤務していた病院では、主治医の許可があれば、緩和ケア病棟の患者さんに限り、飲酒や喫煙が可能でした。喫煙の希望があると、リハビリの時間に一緒に車椅子で外の喫煙所にいき、少し遠くから喫煙する姿を見守っていました。また、「歩いてトイレまでいきたい。」、「お花を見たい。」、「家族と一緒に外の空気を吸いにいきたい。」などの希望があれば、リハビリの時間を利用して安全に行っていただけるように、サポートしていました。残り少ない時間を、可能な限り自分らしく過ごしていただくためのリハビリの提供が重要だと感じています。また、このように、「したい事をする」中で活動力が維持され、ADLの低下を予防でき、QOLの向上も期待できます。
緩和ケア病棟でのリハビリがもたらす意義
緩和ケア病棟でリハビリを行うことで、患者さんがベッドで寝たまま過ごすのではなく、自分の希望に沿って生活できる環境を作り出すことができます。個人的には、緩和ケア病棟でのリハビリがもっと活発に行えるよう、収益に繋がる仕組みがあれば良いと感じています。「わが国におけるがんのリハビリテーションの現状 B.緩和ケア病棟におけるリハビリテーションの現状と課題」と言う文献でも、緩和ケア病棟におけるリハビリテーションの課題として、リハビリテーション料算定困難なことが、挙げられています。
終末期のリハビリには、患者さんの生活の質を少しでも向上させる意義があると実感しています。