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イマドキの高校写真部(その5)

今回は「写真甲子園」について。正式名称は「全国高等学校写真選手権大会」。「写真の町」「写真文化首都」を宣言している北海道上川郡東川町を中心とする実行委員会が主催。1994年に開始され今年(2021年)で28回目を迎えます。私は前任校で第15回(2008)第21回(2014)で監督として参加させていただきました。

今でこそ「〇〇甲子園」という文化部のコンクールはたくさんありますが、その先駆け的存在ではないでしょうか。要するに全国コンクール(コンテスト)なのですが、通常は個人単位での応募であるのに対し、「甲子園」という名の通り学校単位の「団体戦」「勝ち抜き戦」であるという、かなり異色のコンクールとなっています。

まず、選手3人一組+監督(顧問)1名でチームを作ります。写真部でなくても構いませんが、学校で各1チームしか応募できません。撮影自体は何人で行っても構いません。作品テーマは自由ですが、最大の特徴は6~8枚の「組写真」(プリントとデータ)を制作し5月下旬を〆切とする初戦に応募するという点です。撮影技法や機材も基本的には自由ですが、デジタル化の進展で加工・合成への制限は近年厳しくなりつつあります。応募数の増加に伴い、2015年からは「ブロック公開審査」を導入。全国11ブロックから北海道で行われる本戦に出場できるのはそのうち18校。近年は応募校数は500校を超えることが多いので、かなりの狭き門であることがわかります。まさに「甲子園」。

7月下旬から行われる本戦では5ステージでの撮影、作品制作、そして審査委員長・立木義浩先生をはじめとする審査員の先生方による「公開審査」(プレゼンテーション)、表彰式などに加えセミナーなど前後の関連行事を加えると丸1週間(!)北海道で一気に行うという、想像以上に過酷な大会です。

…とまあ、これ以上の詳しい説明は大会公式サイトをご覧いただくとして、ここでの本題は「写真甲子園は高校写真部をどう変えたのか?」

結論から言えば、撮影から作品発表まで基本的には個人で完結する写真作品の制作に「団体戦」という要素を加えることによって写真部に「共同作業」と「一体感」、そして(学校としての)「全国出場」という新たな目標とモチベーションを与えたことが大きかったと思います。また、単写真ではなく組写真であることもポイントです。組写真の難しさであり面白さでもあるのは「単写真としていい写真を集めさえすればできる」というものではない、ということです。テーマ(例:「夏」「いとなみ」)を複数の写真で表現するというのは1人でも難しいのに、個性の異なる部員たちが意見を戦わせながら作らなくてはならないので、難しさが倍加するのです。でもそれを乗り越えた時、私たちの想像以上の作品が生まれます。

そして、本戦で北海道・東川町に行くと町民の家へのホームステイや歓迎夕食会、合宿生活、他の出場校生徒たちとの交流など、単なるコンクールの枠を超えた感動が待っています。そう。いわば「入口は競争でも、出口は感動」。運動部では味わえない経験ができるのです。

個人的にも、2008のときは、なんと北海道の地方TV局制作の特集番組(全国でも放送)で密着取材を受け、しかも私の心情を故・大杉漣さんがナレーションで代弁してくださるという大きすぎるオマケつき。大会を通じて知り合った東川町の皆さんや全国の高校写真部の顧問・生徒の皆さんとの交流は今も続いています。写真って楽しいんだ、楽しくていいんだ!という原点を思い出させてくれた。その意味では、この大会はとても大きな存在です。

ただ、内心はというと、この大会についてはそう単純には割り切れないほど様々な想いがあります。批判や非難や大会の存在そのものに対してというより、大会を取り巻く事象に対して個人的に感じている若干の違和感、とでもいうべきものですが。次回はその点について。




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