シェア
國嶌りょう
2020年7月14日 23:23
最後の日の朝、消え入りそうな体を起こして、彼女は髪の毛をとかし、化粧をした。いままでで一番しずかな朝だった。透けるカーテンを見つめながら、彼女は「光の粒子の、一粒ひとつぶまで見えそうね」と言った。すべての準備が整うと、彼女はコップ一杯分の水をのみ、リュックを手に取った。まっすぐに玄関へ向かう。靴箱を開ける音、靴を落とす音、つまさきを交互に鳴らす音。ぼくは音の方へ近づく。彼女は