書籍レビュー「ハケンアニメ!」〜魔法を使えない大人たちの熱き戦い〜
「ハケンアニメ!」は
アニメの監督、プロデューサー、声優、アニメーター、聖地巡礼の町おこし…、と
アニメに携わる業界の様々な人たちの視点が重なり合って織りなす
熱血お仕事小説。
魔法を使える少年・少女の冒険物語を、
魔法を使えない生身の大人たちが、
年季が入って傷んだ体にムチ打ちながら、
必死にくらいついて作っている。
その「魔法の使えなさ」、
ショートカットも何もなく、
ただ一人一人が、一つ一つを積み重ねていくことでしか達成しえないところが
最高にかっこいい。
「あーーー! 仕事ってかっこいい!!」と叫びたくなる
最強のお仕事小説。
そういえば、エヴァンゲリオンの
アニメシリーズは
最終話近くで戦闘シーンが突然なくなり、
絵コンテのようラフな描写で、よくわからない精神世界の話になって終わった。
そういう小難しい話が作りたかったのかと思ってたけど、
庵野監督が、何かのインタビューで、
毎週放映するアニメとしては最高潮のものを作り続けて、
戦闘シーンなども徹底的に作り込んだ末に、
最後は時間や予算の関係で、あの最終話を作るのが精一杯だった、というようなことをおっしゃっていて。(うろ覚えです)
ドラマの脚本家の中園ミホさんの本を読んだ時も、
ドラマの放送をしている最中に、
続きの脚本を書いたり、現場に行ってその場で書き直したりしているとのことだった。
アニメやドラマって、
ある程度1パック出来上がってから放送していくイメージだったけど、
放送しながら、自転車操業(?)的に作ってるものなんだなぁ。
連載漫画のイメージに近いんですね。
それにしても。
漫画作りについては、なんとな〜く知っていたけど、
アニメに携わる人の多さと規模、利害関係の複雑さに驚愕する。
自分は紙媒体やウェブの仕事しかしたことがないので、
こんなに船頭さんが多い船で、毎週放映して最後に大円団を迎えなきゃいけないんですか、と思うと悪寒が走る。
怖すぎ。無理。
そんな複雑な業界の構造を、
キャラの濃い多様な登場人物たちの絡みの中で自然に紹介してくれる
著者の辻村深月先生の圧巻の文筆力。
きちんと取材をしたうえで、
知らない世界のことを物語として
楽しくわかりやすく
紹介してもらえるのって本当にありがたい。
挿画がCLAMPなのも、どことなく「レイアース」味があって、
世代としてはエモきことこの上なし。
アニメ制作の裏側を覗いてみたい人も、
仕事って大変だけどやっぱりいいよね!
って思いたい(思わずにはやっていられない)人も、
必読の1冊。
(とはいえ、
仕事をしている人のかっこよさは
それはそれとして、
これだけ「世界に誇れる日本の文化」とか言ってるんだから、
現場(特にアニメーターさん)の待遇をもっと良くしてほしいものです...)
おわり。
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