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今はなき、雅叙園観光ホテルと偶然の人まちがいの話

東京都に目黒雅叙園と言うところがあります。古くは昭和初期に銭湯で財を成した細川力蔵氏が料亭と結婚式場をミックスさせたような贅を尽くした建築を作ったのが始まりです。昭和初期の流行や大衆の好みをその建物に反映させ、当時大評判だった場所です。現在は古い木造の建物は解体して現代建築に立て替えたものの、以前あった古い絵画や装飾や銘木を使った階段などはそのまま再現保存されました。今も風情のある立派な建物でホテルやイベントスペースとして人気のスポットのようです。

以前から古い建物が大好きだったみけ子は、20代の頃にその目黒雅叙園のことを知り「一度は行ってみたいものだ!」と思っていました。雅叙園の古いオリジナルの木造建築の時は結局行く機会がなく、当時の建物の実物は見ていません。建て替えられる前に一度でも思い切って行ってみれば良かった、と今でも思います。

その目黒雅叙園の関連施設だった、雅叙園観光ホテルという場所があったのです。きっと雅叙園の建築計画の一環として作られた建物だったのでしょう。作られたのが雅叙園本館と同じ昭和10年頃ですから、昔風の室内装飾がまた贅を尽くした凝ったものでした。古い建物好きにとっては正に「ラビリンス」のような目くるめく美麗な空間でした。ここはみけ子が20代の当時はごく普通に宿泊できるホテルでした。

2度ほど宿泊したでしょうか。雅叙園観光ホテルは、客室はホテル仕様でシンプルで使いやすい作りでした。ただ今風のプラスチックを多用した薄っぺらい作りとは異なり、スイッチひとつ取っても今の物とは違う。今の物にはない落ち着いた雰囲気やデザイン、そして手仕事の技が活かされていて何とも魅力的でした。廊下やエレベーターに非常に凝った装飾が施してありました。みけ子が若い頃は機会があればここに泊まっていたと思います。料金もリーズナブルでした。(だけど多分2.3回程度です)

目黒雅叙園があった地域は、東京では山の手で丘陵地でした。雅叙園の本館も館内に階段があり、それが百段階段として名物になる程の豪奢な作りでした。観光ホテルもアップダウンのある地形をそのまま活かして作られた建物は、廊下を曲がる度に窓からの景色が異なりそれもまた雰囲気があって素敵だったんです。

もう本当に素敵💖ため息の出るような、建築と絵画のハーモニー❗️

新婚旅行でみけ子夫妻(笑)はこのホテルに泊まったのですよ。思い出すとそれが雅叙園観光ホテルの最後の宿泊だったかも知れません。館内を隈なく探検し、あちこちで写真を撮りその見事さに息を呑みながらその空間を楽しみました。

その雅叙園観光ホテルに、新婚旅行で宿泊したその時の事です。みけ子はこの時ばかりはとちょっとばかりめかし込んで、着物を着て歩いていました。ホテルまでは目黒駅を降りたら、10分程度歩けば到着する距離だったと思います。なにせお上りさんの新婚カップルですから、ちょっとばかり不慣れな雰囲気を醸し出していたと思うのです。

めかし込んだ着物の女と少し大きめの荷物を持ったジャケット姿の若いカップル。多少目立っていたかもしれません。そんな私たち2人に声をかけて来た人がいました。キチンとしたスーツ姿の男性です。

エレベーター扉の見事な螺鈿細工の前で。

「あの、サクライさんですか?」
「あ、はいそうですけど」
「お待ちしておりました。こちらです」

とその男性に案内されて向かった場所には、マイクロバスが止まっています。駅から歩ける場所なのにバスで送迎?と思いましたが、名前まで確認されたので特にへんだとは思いませんでした。

バスのフロントガラスには「##家 御一行様」と表示してあります。

んんっ?いくら何でもこれは変‼️

着物を着てチャラチャラ歩いていた女は、どこかの結婚式の招待客と間違われたのです(笑)それも何と言う偶然か、待っていたゲストと同じ苗字だったとは……‼️

妙な偶然もあったものですね🤭

竣工当時は目黒雅叙園の新館として建てられたようです

そんな面白い偶然もあり、最後になった雅叙園観光ホテルの宿泊は印象深かったです。天井一面に描かれた見事な日本画、残念な事に雨漏りで傷んでしまっているものもありました。傷んで取り外された絵画が廊下の隅に積み重ねられてある場所も……。昔日の輝きは過去の物となり、私のような古い物好きは好んでも大人気スポットとはならない。古い建物は維持管理に膨大なお金がかかるでしょう。その後程なくしてこのホテルは売却・解体されてしまったようです。

月刊太陽。だいぶ前に廃刊になりましたがこれも好きな雑誌でした。

新婚旅行の時に撮った写真の数々に、このホテルは思い出として記録されています。東京の山の手の丘陵地にあった古いホテル。かなり昔に発行された、今は廃刊になってしまった雑誌の写真で、ここのホテルの魅力の一部が紹介されています。我が家の永久保存版の雑誌です。


↓目黒雅叙園が出来た当初の絵ハガキ。古書市で見つけて大事にしていたものです。ちゃっかり宣伝(笑)



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