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ごはんができたよ・矢野顕子/田舎娘による最新テクノ風味の懐かしい日本の調べ

こんな素敵な先輩女性に「田舎娘」って何だよ‼️失礼にも程があるよ。いきなりタイトルから随分と乱暴な言いようだなぁ、と我ながら思う。でもこれ、みけ子の最大の褒め言葉ですからね💖 矢野顕子のこのアルバム、どの曲をとっても温かさと懐かしさ、そしてこれまで誰も日本のミュージシャンとして表現して来なかった秀逸な楽曲づくめなのだ。そして若くてみずみずしい感性。感動的です。

急に思い出して聞きたくなり、矢野顕子の「ごはんができたよ」のアルバム全曲を聴いた。1曲目の「ひとつだけ / Hitotsudake」から最後の「You're The One」まで、アルバムを買った記憶はないが、全曲をほぼそらで歌えた。(英語の歌詞の曲以外ね)相当当時好きで聴き込んだのだと思う。すっかり忘れていた。

矢野顕子のこのアルバムを聴いていたのは、専門学校1年生の18歳の頃だったと思う。YMOが爆発的に流行り出し、電子楽器が音楽の中心になりつつあった頃だ。そしてそのYMOが全面的にバックアップして完成したのがこのアルバムだ。最新のテクノ、電子楽器満載のサウンドだよ。

しかし雰囲気としては土着的なのだ。どことなく泥くさい。都会的でオシャレな雰囲気……とは違う、大地に根差していると言うか農耕民族的と言うか。(何度も言うが、褒め言葉だよー❣️)アッコちゃんの持ち味なんだろうね。

かつて「タモリ倶楽部」と言う番組があった。みけ子が20代〜30代頃の番組だったかな?今はすっかり文化人であるタモリが番組のホストをつとめる、深夜にやっていたちょっとキワドイ内容も混じった(妙な)番組だった。

みけ子はそのタモリ倶楽部で、矢野顕子がゲストで出演したのを見た記憶がある。番組内のショートコントで、矢野顕子が麦わら帽子に三つ編みヘア、そしてほっぺたを赤くした田舎娘の扮装で出て来た。

当時、すごい人気を誇る一流のミュージシャンの彼女に田舎娘の扮装をさせる?その役をやすやすと引き受けて楽しそうにコントを演じていた矢野顕子は相当の大物だと思うわ。

↑タモリ倶楽部じゃなかったかなぁ?とにかくタモリが出ていた番組でコントのコーナーだったのだけは間違いない。

矢野顕子は東京生まれだが、3歳から中学まで青森で育っている。東北人である自分も何となく親しみを感じる。東北育ちだからなのか、なぜか彼女には最新の音楽を作っていながら泥くささのようなものを感じずにはいられない。それが彼女の魅力だと思う。

この「ごはんができたよ」の次にリリースされたアルバムが「ただいま」である。アルバムジャケットが当時飛ぶ鳥を落とす勢いのイラストレーター・湯村輝彦が手掛けていたと思う。このアルバムの中には、大ヒット曲の「春咲小紅」も収められている。化粧品会社とタイアップしたその春一番の話題曲だった。作詞は糸井重里。間違いなくあの当時の最先端を走っていた。「ザ・ベストテン」にも何週か連続で出ていたかと思う。

その後のリリースで「ブローチ」と言う珠玉のアルバムもある。ピアノに乗せて彼女の澄んだ歌声でクラシックの歌曲や谷川俊太郎の詩、「ぼくは12歳」の岡真史の詩を歌曲にしたものをメロディに乗せて歌う。心身が洗い清められるような、そんな清々しさと温かさを感じる。これもまた、矢野顕子の魅力の一つなのだ。

みけ子はなぜか当時非常に人気のあった、ユーミンはあまり好きではなかった。彼女の音楽にはどうしてか馴染めなかった。あの頃ヒットしていた曲を耳にすれば懐かしいとは思うが、その程度だ。翻って矢野顕子。YMOの熱心なファンだったこともあり、この「ごはんができたよ」はかなり熱心に聴いた。2枚組のアルバムだった。

童謡をカバーしたり子どもが作った詩に曲をつけたり、矢野顕子の音楽の中では「歌詞」のウエイトは比較的小さいのかもしれない、と思う。楽曲の中で歌詞の表現は一部の要素で、だからこそ日本語の歌詞が関係しない世界を活躍の場にできたのだろう。

曲✖️歌詞✖️楽器の演奏力✖️歌声の魅力=シンガーソングライターの魅力

と仮定すれば、松任谷由実は曲と歌詞の魅力が突出していて、若い女性をターゲットにして女性の心をつかむ曲を多数生み出せた。それが彼女の絶大な人気の理由なのだと思う。

矢野顕子は時々、ぐっさりと心に刺さる歌詞と曲を書き、演奏力も歌声も非常に魅力があるのだが、全体を通して聞くとあまり歌詞を重視していないところは否めない。カバー曲も多い。彼女のアレンジで全く新しい曲の装いになったカバー曲も多数あり、編曲能力が飛び抜けている。

自分は結局、彼女のアルバムを熱心に聴いたのは「ごはん」と「ただいま」「ブローチ」の3枚のアルバムだけだったけど。

だけどさ、「ごはんができたよ」の中のこのフレーズには包み込むような母の温かさが歌詞から滲み出ている。

「辛いことばかりあるなら 帰っておいで

 泣きたい事ばかりなら 帰っておいで」


のフレーズを聞くと、みけ子は60過ぎのおばさんであるのに不覚にも涙が出てしまう。こんなフレーズをサラッと書いてしまえる彼女は、10代の後半で母になっていたはずだ。


そう言えば山下達郎は矢野顕子を「歌詞に食べ物が最もたくさん出てくる作詞家」と評していたらしい。食べることは生きることの基本だ。そんな所も土着的で地に足のついた感覚、なのかもしれないね。



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