【BL】「忘れるために……」

俺には片想いしている人がいる。
でも、その人と自分が付き合うことは、多分ないだろう。
それは、俺が男で、その人も同じだから。
だから、俺はあの時を最後にこの人のことを忘れようとした。

自分の家に彼を呼んで、家飲みをすることにした。
いつもお世話になっているお礼としてということで、色々ご馳走とか頼んで。
俺は、彼が酒にあまり強くないことを知っていた。
なので、なるべく酒を勧めた。
終電なくなったら、そのまま泊まっていけばいいですよ、とか言って。

彼は、こちらの目論見通り、酔っ払ってそのまま寝てくれた。
テーブルの上で顔を横向きにして、寝ている。
彼の顔が、こちらに向いていた。

これで最後にしよう。
そう思っていた。
最後に一度だけ……、キスが出来たら……。
俺は彼の顔に自分の顔を近付けた。
ゆっくり目を閉じる。
自分の唇に温かい体温を感じた。
ゆっくりと唇を離す。
彼の顔をじっと見つめながら、この人としてしまったんだな……と思った。
何も気付かずに、さっきと同じ顔で寝ている。
最後にキスをしたら忘れようと諦めようと思っていたけれど……。

この感触が逆に忘れられなくなってしまった……。

この後どうしていったらいいか、俺はまた頭を悩ますのだ……。

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