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夫婦で歩くプロヴァンス歴史散歩#41/アルデッシュ渓谷列車

https://www.youtube.com/watch?v=FLUTebdpkrQ

Le Cerisier(1 Rue Saint-Joseph, 07300 Tournon-sur-Rhône)でのディナーが終わったのは22時近かった。
店を出るときに再度オーナーご夫婦がご挨拶に出てくれた。結婚35周年のお祝いの言葉を頂いた。熱い握手の後、店を出た。
ホテルへの帰路は同じグラン通りGrand Rueを歩く。予想した通り店は殆ど閉まっていた。しかし歩いていると三階建ての家には何れも生活の灯りが有った。人々の息使いを感じた。
「こんな静かな村を二人で歩けるなんて・・不思議ね。」幾つか開いている店舗を横目でチラチラみながら嫁さんが言った。
「明日も朝は此処を歩くよ。デュー渓谷を走っている蒸気機関車へ乘りたいんだ。停車駅へ行くバス停留所がこの先にある」
「蒸気機関車が走ってるの?早いの?」
「バス停に8時半には着きたいから、8時過ぎにはホテルを出たい。恰好は山に入るつもりの恰好が良いよ。此処よりは間違いなく寒い」
「パンツで行くわ」
「ん」
ホテルへ出るとロビーでコンシェルジェが話しかけてくれた。素敵なレストランだったことを報告した。部屋にそのまま戻らずに、中庭に面したバー「ル・ガブリエル」へ寄った。窓から見える丘に人影らしい灯りはなかった。部屋に戻ったのは11時ころだった。

翌日。食事を済ませて、少し重装備(?)をしてホテルを出た。
Bus station of Tournon(5 Rue Pasteur, 07300 Tournon-sur-Rhône)+33969390707までは徒歩15分くらいだろうか?昨日通ったグラン通りを進む。パストゥール通りへ入って少し歩くと、大きなバス停留所センターが見えた。茶色い木製の駅である。
https://www.archeagglo.fr/vivre-ici/transport-mobilite/transports-en-commun/
バスは何台も並んでいた。
僕らがチケットを買ったのは11/TAIN L’HERMITAGE • TOURNON • SAINT-FÉLICIEN。
乗り場は発券所のすぐそばにあった。目的地はアルデッシュ鉄道駅Train de l’Ardèche。サン・ジャン・ド・ミュゾルSaint-Jean-de-Muzolsにある
Gare Routière発が7:45-8:47-12:23-17:55-18:35だった。
Train de l’Ardèche着が7:58-9:00-12:36-18:03-18:43

「村からサン・ジャン・ド・ミュゾルの渓谷列車乗り場まで4kmくらい離れてる。バスに乗って13分くらいだ」
バスは少し前にバス停へ入って来た。運転手に確認してから乗車した。発車すると国道D86をローヌ川に沿って北上する。そしてデュー川を渡ると
サン=ジャン=ド=ミュゾルSaint-Jean-de-Muzolsを左折。グランポン通りを直進する。左側にデュー川がずっと見えた。
「これから乗る渓谷列車は、あの川を登っていくんだ」
「すごいわね、フランスで蒸気機関車に乗るなんてワクワクね」
「アルデッシュ鉄道と云うんだ。不定期なんだけどな。今回の旅行はそのスケジュールに合わせて組んだんだよ」
Train de l'Ardèche(111 Rte du Grand Pont 07300 Saint-Jean-de-Muzols)
https://www.trainardeche.fr/
駅舎はサン・ジャン・ド・ミュゾルSt-Jean-de-Muzolsにある。出発は午前10時なので余裕はある。蒸気機関車は既にホームに入っていた。
嫁さんが驚嘆の声を上げた。
「わあ!本物の蒸気機関車なのね!」
「実際に使用されていたものを払い下げしてもらってるんだそうだ。大変な管理だろうな。
すぐそばにミュージアムスペースが有るそうだ。そこに石炭を採取するときに使っていた旧い時代のトロッコ列車があるらしい。時間までそれを観よう」
「ねぇ、早く乗って席を取ったほうがいいわよ。左側がいいわよね」嫁さんが言った。
「いや。右側だ」
「あそ」

わりと乗客は多かった。時間になると、蒸気機関車はゆっくりと動き始めた。
デュゾン橋Pont du Duzonあたりから蒸気機関車はデュー川を渡った。川は右側になった。トンネルを抜けたあたりから景色は少しずつ渓谷を抜ける鉄路になった。
「すごい渓谷ね!いつも見るフランスとは大違いの風景だわ!」嫁さんが窓から顔を出しながら大声で言った。
「ヘルシニア山脈essentiellement hercynienというんだ。中央山塊Massif centralともいう。フランスの南半分を占めている。地中海の蠕動が生んだ皺みたいなもんだ。この辺はその一番北側あたりになる」
「大きな皺ね」
「一番高いのはピュイ・ド・サンシー(ピュイ ド ドームの南西)の火山で標高 1,885mある。全体に山脈はアルプス山脈とピレネー山脈と連携しているんだ。意外にフランス南部は火山地帯なんだよ」

「なるほどねぇ、いままでたくさん見た丘陵の総元締めみたいなものなのね」
「ワインの話を考えるとき、いつだって一番大事なのは地質だろ?地質をアタマに入れとかなくちゃいけないんだよ。葡萄はフラスコの中やプールの中で育つわけではない。必ず土地との強い繋がりから、そのワインのキャラクターは生まれるんだ。

実はね、ローヌのワインを形作っているのは、この中央山塊なんだよ。セパージュは確かに南や西から来た。葡萄は温暖種だからね。それが緯度と高度という強いデバイトをくらって、今のフランスワインを形作っているんだよ。フランスワインを考えるとき、フランスを覆う山脈群を意識しないで考えるのは、根本的なピントがズレてる・・ということになる」
「なるほどね、でもすごいところね。まるでスイスあたりの山の間を走ってるみたい!!」

渓谷列車は30分程度でボシュイュ・ル・ロワBOUCIEU-LE-ROIに到着した。ここで線路の折り返しを見学するらしい。
停車時間は25分だそうだ。帰路は同じコースを走る。
Saint-Jean-de-MuzolsのTrain de l’Ardèche駅に戻ったのは11:30。
バスは11:36分に来た。これに乗ってGare Routièreへ戻ったのは11:45だった。
Train de l’Ardèche発が7:16-8:00-11:36-14:49-17:50
Gare Routière着が7:25-8:09-11:45-16:58-17:59


無くてもいいような話ばかりなんですが・・知ってると少しはタメになるようなことを綴ってみました