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バスク/AOCワイン・イルレギー01

バスク地方唯一のAOCワイン・イルレギーIrouleguyの歴史は古い。 しかし此処でもご多聞に洩れずフィロキセラ渦が吹き荒れた。20世紀の全般に殆どの農家が全滅した。この地で再度、ワインの生産が産業として動き始めるのは、第二次世界大戦後暫く経ってからである。
AOCとして認定されたのは1970年。耕作総面積240haというとても小さなAOCで、農家は50軒ほどしかない。現在の生産量は70万本程度、大半がバスク/ボルドーで消費され、パリでも見かけることが珍しいAOCである。

残念ながら、今回はイルレギー村を訪ねることが出来なかったが、フレンチ・バスク滞在中は之を呑みまくった。巡礼者の村サン・ジャン・ピエ・ド・ポーSaint-Jean-Pied-de-Portで入ったレストランでも之を頼んだ。・・というかリストに載っていたワインの大半がAOCイルレギーだった。

「私、白。」という嫁さんのリクエスト。
イルレギーの白かいな・・そんな珍しいモん・・オンリストしてるね。ははは、地元じゃ珍しくないのか。オーダーしたのはジャン・クロード・ベルエのHERRI MINAのblanc。液温は低めだったけど、口にした瞬間、きちんと香りが立った。 
「あら、ジュラかサヴォアのワインみたい。良い感じ」と嫁さん。 「ん。グロ・マンサンGros Mansengという品種が中心だ。個性的な佳いワインだ。」
地葡萄なので、ピレネー山塊東側ヌーヴェル=アキテーヌ以外で利用している生産者はない。どっしりとした良い葡萄である。

赤はグラスにした。同じくHerri MinaのRouge。こちらはカベルネ・フラン100%である。
「カベルネ・フランは、ピレネー地区原産の葡萄ではないか、と云われている。もちろん、このあたりで育てられていたカベルネ・フランはフィロキセラ渦のために全滅している。だからこのワインで使われいる葡萄は、おそらく他から持ってきたものだね。エリミナの生産者ジャン・クロード・ベルエは、長い間ボルドー/ペトリウスに居た人だから、もしかするとその辺りから持ってきたものかもしれない。」
「カベルネ・フランって、ボルドーの三大使用品種でしょ?」と嫁さん。
「おや、よくご存じで。」
「なんどもシャトー巡りしてるからね。そのくらい憶えているわ。」
「恐れい入りました。そのとおり。ボルドー赤ワインは、カベルネ・ソーヴィニオン、メルロー、カベルネ・フランをアンサンブラージュして作られている。カベルネ・ソーヴィニオンは比較的最近の交配種だが、メルロー、カベルネ・フランは古くから有る葡萄なんでね、実はこの二種がボルドーワインの要になっているんだ。この地で、その原種カベルネ・フラン100%のワインを呑むのは、なかなか意義深い。」
僕がそう言うと、嫁さんが笑った。
「このワインで使ってる葡萄は、ボルドーから持って帰って来た葡萄だって、さっき言わなかった?」
「ん。それでも意義深い。」
「はは。なんのことやら」

無くてもいいような話ばかりなんですが・・知ってると少しはタメになるようなことを綴ってみました