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銀座新古細工#07/青春のソニービル

「ソニービル、行くんじゃないョ!あスこは不良のたまり場だからネ!」
僕が子供のころ。ッたって、中学のころ。オフクロが突然、言った。きっと店のお客さんから何か聞いたんだね。
へぇ~ソニービルって、不良のたまり場なんだぁ。そりゃ良いこと聞いた。そう思って、早速その日の学校帰りに友たちと行ってみた。
晴海通りと外堀通りの交差点にある。出来たての、背ぃ高ノッポなビルだった。
...
ポン♪ペン♪鳴る変な階段を昇ると、各フロアが踊り場のように短い階段で雛壇のように繋がっていて、モノ珍しかった。でも・・不良のたまり場になれるような楽しい店は無かったし、第一僕たち以外の不良はいなかった。
オフクロも、ちゃんと下調べをしてから文句いってほしいな。そう思った。ま。それでもあの何となくオシャレな雰囲気が良くて、結構よくタムロしに行った。
なぜか、4階だったか5階だったかのフロアにジュークボックスが有ってね、ジャズのEPが収まってて、行くと必ずこれをかけた。ジュークボックスかけるって、不良ぽくていいだろ♪キャノンボール・アダレイのマーシーマーシーマーシーだったり、ジミー・スミスのキャットだったり。ははは♪選曲が不良ぽくないな。

ところが、高校に入って本格的にジャズにハマり始めてからは、地下のハンターという中古のレコード屋には、毎日行くようになった。高校時代、放課後の回遊ルートは、西銀座デパートのハンター→ソニービルのハンター→そして有楽町スバル街のジャズ喫茶ママだった。そして毎週水曜日の夜は、ニッポン放送の公開収録「ナベサダとジャズ」に行った。あとは日劇の下のATG。ココで初めて植草先生にお会いした。東劇の上の佳作座。三原橋の名画座。だいたいコの三か所で毎週6本以上は映画を見てた。ゴダールだったりヴィスコンティだったりパゾリーニだったり・・
それと7丁目の銀巴里の楽屋。よく高柳ジョジョさんにくっついて云ったな。ココじゃ三輪さんや石井さん、それとときおり三島由紀夫を見かけた。ははは♪受験勉強なンぞしてられないほど、高校時代の放課後は忙しかったもんだ。ウチに帰るのは、毎日夜の11時過ぎだったし。

んん。そう考えてみると。。やっぱり僕の青春にソニービルは大きな里程標の一つだったんだなぁ。あ、そういや最初にタバコを買ったのは、あそこの「世界のタバコ」を売ってるコーナーだった。高校の三年の時だ。そのころフランス映画に無茶苦茶ハマってて、小道具でよく使われていた両切りのジタンを、あスこで買ったんだ。紙臭くて酷いタバコだったな。でもイキがってムリして吸ってた。

無くてもいいような話ばかりなんですが・・知ってると少しはタメになるようなことを綴ってみました